第一話 アオイアオゾラ

 清々しい程の蒼穹だった。

 雲一つ無く、地平線がはっきり見える。山と空の交わる境界線はぼやけかかって、足元には陽炎が渦巻いている。この光景が、いっそのこと幻だったなら。ならもうこの世界すら幻だったら良かったのに。

『ピー…』

「!」

 腰に付けているレシーバーから無線が入る。

「はい。ケールです」

『こちらティバニス。緊急連絡がある。三棟の第二会議室にて集合』

「・・・・了解ラジャー

 そのまま切れて、再び静寂に包まれた。ティバニス・ダグザ隊長。ケールの所属するがダグザ隊の隊長だ。その人直々の命令。まあ、内容は想定出来る。

 きっと、代わりが見つかったのだろう。



 ***



「失礼します」

 自動スライドのドアをくぐると、先着が一人いた。

「あっ!キール先輩!」

「メロ。来てたのか」

「はいっ。三棟に用があったので」

「皆は?」

「まだみたいです」

 メロ・プーランド。茶髪の短髪、目がくりくりで少し小柄なダグザ隊の一員。以前交戦していた街の被災者で、隊長に見込まれてスカウトされたらしい。元は靴屋の息子で、戦いの流れ弾を食らい、店が潰れ、経営困難になったところまでは聞いている。

 四角く配置されたテーブル。部屋に入り、メロの隣に座る。

「一体何なんでしょうね・・・。緊急の報告、って・・」

 分かり切った質問を投げかけられた。下がった眉を更に垂らしたメロが心配そうに顔を伏せた。

「やっぱり・・・。イラの・・・・」

「まあ、そうだろうな」

「やっぱりですか・・・」

「お前のせいじゃないからな。メロ」

「・・・・はい」

 メロは一人で抱え込む。そんな性格だ。隊の皆、そんなメロを理解して協力している。信頼も戦いにおいて大切な要素だ。例外を一人、除いては。

「失礼します。コンラ・メーイ、只今・・・・って」

 高身長でつり目。青い目を持つ青年が入ってきた。コンラ・メーイ。孤独の少年。隊長はそう言っていた。

「コンラ先輩!」

「チッ」

「ひっ・・・!」

 元々悪かった人相が悪化して、メロを脅かす。そのまま機嫌悪そうに向かいのテーブルについた。

「失礼します」

 続いて来たのは金髪の少年。コンラとメロを交互に見ると、一瞬で空気を察して、呆れた表情になった。

「またかコンラ。飽きないな」

「うるせえ」

 そのままケールの隣に座った。

「何かとつっかかるよな、コンラ。いい加減大人になったらどうだ?」

「余計なお世話だ。お前だって、そろそろピアス外せよ。チャラくせえ」

「ははっ。お気遣いどうもありがとう」

「チィッ!」

 合わないなあ、そう思った。

「で、隊長は?」

「まだ来てない」

「そっか」

 マロウ・リンクス。エメラルドの瞳の色をしていて、容姿がすごく綺麗。ここの基地でも大分モテているが、彼女が出来たなどという話などは全く聞かない。ついでだが、メロの隣街で、またもや隊長にスカウトされたらしい。

「すまない。遅れた」

 隊長が遅れて入ってきた。みんなが立ち上がって敬礼をするが、「そのまま腰かけてくれ」のセリフで、察しがついてしまった。

「新しく、入隊する隊員がいる。入ってこい」

 ドアから入ってきたのは金髪で、背の低い青年。

 でも、澄み切った瞳は吸い込まれそうで、力強くて。

 どことなく、彼に似ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る