CREDIT8 妖精の飛翔機(後)

”二〇〇七年 九月二五日 〇二〇五時”

決戦標的中枢空域


 渦巻く暗黒の中、唯一の白い機影は惰性で飛び続けていた。そして無貌の竜が一体、覗き込むようにその飛行に視線を追随させている。

 焼き切れそうなまでに明滅していたセンサー類の発光も止まり、中枢空間はただなすがままとなっていた。白の等速直線運動と曲面の追随、黒の螺旋が続くという、ただそれだけ。新たに何も起こらず、しかし、も、だが、も差し挟まれない、死んだ世界だ。

 しかし、その時。

 だが、その時。

 白の軌跡が動く。前進しながら、不意に指でつまんで動かすように、覗き込む無貌の顔から離れるように軌道を膨らませる。

 一度ふらりと旋回したスプライトエクスプレスは、戻りの軌道の中で急加速した。加速光を後方へ爆発させ、全力を込めて無貌の竜の顔面へ飛び込んでいく。

 激突が起き、赤い光が炸裂した。炎の爆発ではない、血飛沫のような光が――。


”二〇〇七年 九月二五日 〇二〇六時”

決戦標的中枢空域


 飛び散る赤い光の中、一点からそれは流れ始めた。無音と高温と高圧の中から、掻き消されることの無い伸びやかな響きが走る。

 その音を包むように、鋭角的なシルエットが血飛沫の中に浮かび上がる。朧気な輪郭の中にスパークが走ってディテールを刻むと、それは弾かれたように飛び出した。赤を払って飛ぶ色は白。

 全領域戦闘機スプライトエクスプレス。

 その操縦席にて、声が上がる。

「――――っ!」 

前席、操縦レバーを握り込んで俯いたパイロットスーツの男――弾は肺の中身を吐ききると、顔を上げる勢いで吸気し、

「――お前なんかが俺の一生の結末なものかよ!?」

 超高速の激突でひしゃげ、悲鳴のような音を立てて仰け反っていく無貌の竜を睨み、弾は咆哮した。その肩に後席からオプティがしなだれかかり、フォスがセンサー系を明滅させる。

「俺が納得したのは自分自身にであってなあ! お前みたいな、何の意味も無い存在に勝ち誇らせたりなんてしないんだよ!」

「やったっ。やった!」

 腕を振り上げる弾に、オプティがしがみつく。無貌の竜へと歯を剥いていた弾は、自身の髪に頬を擦りつけるオプティに気付くと無表情に彼女を見上げた。

「ダン、ダンっ。よかったあ――」

「…………」

「う、うー……。……っ!」

 数秒遅れで注目に気付いたオプティは、素早く飛び退きあらぬ方向へ視線を飛ばした。口笛なども交えるが、唇が引きつっているのか上手く音は鳴らせない。

「な、なんでもないよ? 平気平気」

 しらばっくれるその姿を、弾は無言で見つめ続ける。そして身を翻し、起こし、コンソールを乗り越えて後席へ乗り込んでオプティに覆い被さった。

「だ、ダン……?」

 思わず視線を戻したオプティの唇に、弾は顔を寄せる。小さく肉付きも薄いが、強い熱が籠もった体を隅々まで抱きしめ、感覚し、再び見つめ合う。

「――オプティ」

「は、はい」

 二、三個ほどハートのエフェクトを飛ばし、すまし顔を保とうとするオプティへ弾は告げた。

「――ありがとう。俺を、続けさせてくれて」

「う……うん。私も――ダンにはダンのままでいてほしいから」

 それぞれが小さく笑顔を浮かべ合い、軽く額を合わせると弾は前席へ滑り込んだ。そしてコンソールに指を滑らせ、

「フォス、コンディションはどうだ!? 一度ぶつけてリセットがかかったと思うが」

『今更ではありますが、まったく無茶なことを……。全て、元通りです。当機も、二人も、汚染状況も。唯一動力の出力は起動時レベルまで低下していましたが、お二人がいい時間をお過ごしの間に回復させました』

「フォスもこーふんした?」

『しません』

 どこか遠い目をしているような声音のフォスに、弾もオプティも軽く吹き出す。そうしながら、スプライトエクスプレスは螺旋を描いて上昇し、傷つきもはや無貌とは言えなくなった竜と相対した。

「ここでの目的を果たそう。そうして、そこから先は昇っていくだけだ」

「いくらおっきくったって、ここで倒されて終わりだもん。あんなやつ」

『はい。こんな、単なるエントロイドなど――我々の敵では、ありません』

 三者が声を上げる先、顔を突っ込んできていた不躾な無貌の竜は苦しげに身をよじっている。そしてその周囲には、無防備な竜の腹。

「サイクロン・レーザー出力全開、ホーミングレーザーは全門開放。全周攻撃によって敵の存在力に打撃を与える」

 チャージ光球が獰猛な唸りを上げて収束をはじめ、牙を剥くようにVLSのハッチが展開する。全ての攻撃オプションにエネルギーを送り、スプライトエクスプレスは光に包まれていく。莫大な出力の負荷を受けて、その翼から血飛沫が飛び翼長を広げた。

「奴らを食い破れ!」

 叫びが上がり、機影は突進する。

 ホーミングのレーザーを爪立てて歪んだ無貌を撃つと、そのまま光条が振り回して空間を切り裂いた。さらに引っかき回すようにホーミングレーザーの弧が四方に八方に振り抜かれ、鱗の壁を穿っていく。

 破壊力がまき散らされ、すまし顔をしていた空間は引きつって悲鳴を上げた。爆発音が渦巻く宙を、攻撃と加速の光をまとってスプライトエクスプレスが駆け抜けていく。爆風と飛び散る破片、さらには得体の知れない波動にもみくちゃにされながら、赤を纏った白の翼はバレルロールの中から光を繰り出し続ける。

 攻撃を繰り出す弾達には、数発の攻撃が『突き抜けていった』感覚があった。着弾の爆風の向こうまでレーザーが貫き、空間ではなく何か意味のあるところへ到達したという手応えだ。

 そしてそれを証明するかのように、一つの影が視界に飛び込んでくる。

 弾達がまき散らす爆風に翻弄されながら飛来するのは、一機の無人戦闘機シーオッターだった。エントロイドを強行突破してきたのか機首装甲殻をはじめとして傷を多数負ったその機体は、通信回線を中継していた。

「こちら平良。敵超々巨大エントロイドが展開していたエントロピー波動フィールドが収束していくのを確認した。矢頭弾、オプティ――やってくれたのか? 無事か?」

 呼びかけに、弾は振り向いてオプティを見た。サムズアップするオプティに弾も笑顔を返し、

「こちら矢頭。目標を完遂、機体も健在です。中枢空域を離脱し、皆さんに合流します」

 返事を返すと、平良機が受信しているであろう海兵隊や義勇軍の歓声が環境音として聞こえてきた。平良も息を吐いた様子で、しかし努めて真面目な声音で、

「よし。では今そちらに向かわせたシーオッターが離脱の先導役となる。カマイタチ部隊、先導操作をお願いします」

「了解大尉! 矢頭君聞こえるか? シーオッターの軌道を追ってくれ!」

 東京で共に戦ったカマイタチ隊の隊長が歓喜をにじませる声を放つと、シーオッターが反転する。弾はスプライトエクスプレスをそちらへ向けると、最後にオプティにホーミングレーザーの残余出力分を後方へぶちまけさせ、機体を前方へとすっ飛ばした。

 無貌の竜達の唸り声が背後から響いてくるが、それを置き去りにして機体は飛ぶ。シーオッターに並び、追い抜きそうな勢いだった。

 渦巻きうねる黒の鱗の濁流を抜けると、随分と昔に見たような地底空間が全周に広がった。マグマの残光に照らされる空間は、突入時にあった油膜のようなエフェクトがすでに晴れ上がっている。

 空間には、ゼップスを中心に平良隊や海兵隊、義勇軍の機体達が編隊を組んで待っている。弾はその姿を認めると、スプライトエクスプレスをドリフトさせて無貌の多頭竜へと向き直った。激しく蠢く巨体が放つ激音が空間に響き、反響し、背後からしがみついてくるかのようだ。

 再び視界に捉えた敵の姿は、突入時の悠然ととぐろを巻いていた姿とは違う。今や絡み合った巨体は互いに罵り合うように首を巡らせて震えていた。哀れなその姿の中から時折振り抜かれる鎌首の先には、苦渋に歪んだ皺の中から醜悪な邪竜の表情が浮かび上がってきている。

『ゼップスより観測情報を受信。敵超々巨大エントロイドは未確定だった形態を、周囲にプールしていたエントロイド汚染を吸収することで確定しています。もはや既知の形態です。エントロイド〈グラビトン〉! 文明劣化ギャップを利用してエントロイドが発生させる重篤汚染源です』

重力の魔グラビトン、か。……もう名前もついてる、陳腐な奴だったってわけか」

 呟く弾の頭に、オプティがもたれかかる。そしてスプライトエクスプレスの左右に平良の機体と、剣持のスペルソード・ムラクモが並び、アレスのバッカニアが武装ナセルに手をかける。

「お前は、終わらせずに盛り上げ続けてくれる男だなあ弾!」

「よくやった矢頭弾。編隊に合流しろ」

「……矢頭君! 矢頭くーん!」

 苦しげに身をよじりながら収束していくグラビトンを尻目に、それぞれが弾を迎える。弾は視線を彼らに巡らせると、再び真正面にグラビトンを捉えた。

「さて……最後のステージかな」

 弾の言葉に、居合わせた全員が挑みかかるような表情を見せた。地底空間に繋がる別の亀裂から突入してきた部隊も、遙か彼方で陣形を組み直しているのが光点として見える。

 そして、輪郭で揺らめいていた最後の陽炎を吸収しきり、グラビトンが咆哮した。


二七一七年 九月二五日 〇二一一時

衛星軌道


 その瞬間、エデンⅣ衛星軌道上のシンギュラリティⅣは強烈な物理波動を検知。エントロイドの汚染波動に固有のその震動波は、エデンⅣ惑星核に発生したエントロイド、グラビトンの咆哮であることが即座に確認された。

 物質のみならず空間や概念にまで影響を与える強烈な物理波動によって、短時間惑星核へ突入した部隊との連絡や情報リンクが途絶。シンギュラリティⅣの直衛部隊やエデンⅣ周辺へ展開していた部隊も混乱しつつ、それぞれの職務を果たそうとしていた。

 そして割れた惑星が震え、黒々と刻まれた亀裂の一つが広がり始める。莫大な量である太平洋の海水を飲み干しきった、エデンⅣ太平洋クラックだ。

 グラビトンがエデンⅣを粉砕しながら脱出しようとしていること、惑星核突入部隊がそれを追撃していることが、やや遅れて宇宙空間の部隊へと伝わった。

 そしてそれに応じ、シンギュラリティⅣがその巨体の位置を制御するスラスター類に点火し始める。


”二〇〇七年 九月二五日 〇二一五時”

太平洋クラック 核上層


 攻撃隊は見た。エデンⅣの核をくり抜き蠢いていた巨大エントロイド、グラビトンは、いまや惑星を貫く亀裂の一つにその身を押し込もうとしている。

 無貌であった頃は水中にたゆたうようであった動きは、今や病的とも死に物狂いとも言えるような、手当たり次第ののたうちとなっていた。岸壁に爪を立てて昇っていくようにも、圧に押されて亀裂の中を流動していくようにも見える。

 巨体がねじ込まれることで太平洋クラックはこじ開けられ、さらに周囲へ細かい亀裂を広げていく。太平洋クラックはマリアナ海溝がさらに伸長した亀裂であり、断崖のそこかしこに残っていた海水が地熱に炙られ蒸気を吹き上げている。

 グラビトン追跡の前縁、各部隊から先行したスプライトエクスプレス隊は、グラビトンの体表に激突しながら落下してくる金属塊を回避した。

『うおっ、何だ今のは!?』

『エデンⅣ史の整合性を取るための人造遺物の一つだろう。マリアナ海溝由来なら、おそらく沈没した空母として設置されていたものだ』

『エデンⅣ復元の手間がまた一つ増えたな』

『あのデカブツを相手にするのに比べたら小さなことだろ』

 各隊のパイロット達は、言葉を交わしながら太平洋クラックへ突入する。途端に、高圧蒸気に満たされた空間が彼らを包み込んだ。

『ひでえ。まるでガス惑星の中みたいだ』

『レーザーが減衰する……!』

 燃えながら粘るような大気の中で、スプライトエクスプレス達は歯がゆそうにグラビトンの周囲を巡った。レーザー火砲による攻撃が加えられるが、分厚い蒸気の中に拡散した攻撃はグラビトンの体表を軽く抉るに留まり、さらにグラビトンは周囲に充満する水蒸気を吸収して回復していくようだった。

 しかしそこへ、突然巨大な鐘をつくような轟音が響き渡った。靄のかかった地底を洗う衝撃波の主は、スプライトエクスプレス隊に遅れて突入してきた一隻の突入艇の主砲だった。

「こちらゼップス。高圧蒸気帯は我々の実体弾兵器に任せてくれ。――ってえわけだ! 補給は済んだな? クラップバード隊、攻撃開始!」

 浮上していくゼップスの各部、給弾スポットに連結されていたクラップバード達がゲイブの号令と共に離脱。無骨な機体を蒸気の中へねじ込み、グラビトンへと接近を開始した。

『各機、レールガンを対空速射ザッパーから対地徹甲射ブラスターモードへ。奴はもう地形みたいなものだ、爆撃ミッションのつもりでかかれ!』

『ジェリコのラッパを鳴らせ!』

『どこに当てても大当たりだわよー!』

 両翼のレールガンポッドから増加砲身を展開し、さらにレールガンへの給電で火花を散らしながら、クラップバード達はそれぞれの攻撃位置へ展開した。機首を前傾させ、直接照準モードとなった攻撃機群から実体火砲としては規格外の弾速でレールガン砲弾が飛ぶ。

 プラズマ化した大気の軌跡を曳きながら、砲弾はグラビトンの全身に襲いかかった。着弾に際し体表が注射針を刺したかのようにかすかに膨らみ、直後に切り開かれてめくれ上がる。血飛沫と鱗、身体組織をまき散らし、グラビトンのそこかしこで爆発が巻き起こされた。

『有効弾! さらに周囲空間の高圧蒸気に拡散を確認! いろいろ叩き込んでやるといいんじゃないですかねこれは!』

『手数だな!? よおし!』

 一時的な出力低下で減速していくクラップバード隊に変わり、ゼップス周囲から鋭角的な機体が駆け上がってくる。軽量快速戦闘機カマイタチの部隊だ。当然、数多のシーオッター達を引き連れている。

『大気が荒れてる……。軽い僕らの機体には厳しくもあるが利用できる風だ! 各機、シーオッターに攻撃準備させながら先導突入せよ!』

 リーダー機が気流の裂け目へと機体を躍らせると、シーオッターが、さらに僚機達が加速する。時には矢のように、時にはブーメランのように、乱気流と戯れながら軽快な機体達は逆巻く黒の濁流へ迫っていく。

 グラビトンは唸り声を上げながら、全身に負った傷からエントロイドをこぼしはじめた。血の滴りや吹き散らされる鱗からレギオバイトが生じ、さらに飲み込んでいたかのように海兵機の姿を持つバンディットが這い出てくる。

『シーオッターを突入させろ! 全機援護開始!』

『オプションファイター・シュート!』

『頼むぜラッコちゃん達!』

 カマイタチ隊が光学機関砲をまき散らして迎撃のドッグファイトへ移行すると、背後に追随してきたシーオッター達がそのままグラビトンへの突入コースを取る。レーザーをチャージしながらも、さらに背面のウェポンベイから多数のミサイルを放出しながらの突撃だ。グラビトンの傷口を抉りながら突入した無人戦闘機達は、装甲衝角を突き立てながらレーザーを開放。何機かは自分が起こした爆風にはね飛ばされながらも、グラビトンの被害を拡大していく。

『よし、効いているぞ! ……おおっ!?』

 被害評価のために身を翻したカマイタチの眼前に、コンバットナイフを抜いたバンディットが飛びかかってきた。四肢を人間のようには使っていない、奇怪な格闘モーションだ。だがそれ故に咄嗟の回避手段が取れず、

「ひとんちの機体使って気色悪い動きしてんじゃね――……よっ!」

 瞬間、バンディットの背後から蒸気を突き抜けて迫ったバッカニアが、重力カトラスをその背から突き刺す。機械的中枢部を貫かれた機体を切り捨て身を回すのは、アレスの機体だ。

「敵はエントロイド個体を放出しつつあり! 損耗機を含む追撃部隊への到達を阻止せよ! つまりはここが正念場だ! 首級を上げろ! かかれえ!」

 カトラスを突き上げるアレス機を追い抜き、それぞれの得物を携えたバッカニア達が上昇していく。惑星への降下強襲を主任務とする海兵機の進軍としては上下が逆だが、相手が強大であればもはや関係は無い。戦乱への突入者、それが海兵機だ。

「ヒュン、来い! 俺のカバーに入れ! タッチダウンを狙うぞ!」

「グラビトン表面への到達狙いですね? 了解です!」

『質問:戦術的意義?』

『奴に最接近した矢頭氏の向こうを張りたいのでしょう……』

 マイペースに応答しながら、二機の海兵機が突入の中を突出していく。速度の中から繰り出されるカトラスとグレイブの切っ先が、軌道上に血飛沫のトンネルを拓いた。背中合わせに螺旋を描く二機が敵群を抜けると、グラビトンからこぼれ落ちたピラノイドが転げながらエントロイドをばらまき、前方空間を埋め尽くそうとしていた。

「こっちはテンション上がってきてんだ! 通せんぼなんかにゃ付き合わないぜ!」

 上昇軌道の中で、アレスのバッカニアは腕を腰だめに構えていた。その前腕装甲が展開し、両腕に砲口が開いている。海兵機の余剰出力をチャージして放つプラズマ榴弾だ。

 アッパーカットのように放たれた光弾は、立て続けにピラノイドへとめり込んだ。さらに続いてヒュン機からも同様の攻撃が飛び、連続する炸裂がピラノイドを潰し、伸ばし、引きちぎる。バラ肉を広げたように空間に散らばる破片を、アレスはカトラスで斬り割って突き抜けていった。

「イエーイタッチダーゥン!」

 突入速度に対してカトラスを突き立ててブレーキとし、アレス機がグラビトンの体表に達する。速度を殺すために長い距離を引き裂かれたグラビトンの竜頭が悲鳴を上げると、アレス機は突き立てたカトラスを放して落下に転じた。

 残されたカトラスは切断重力場でグラビトンからの侵食に抗いながら、鍔元の髑髏のレリーフを点灯させてケタケタと笑い始める。アレスはその様子を見据え、

「爆縮!」

 アレス機が拳を振り上げると、残されたカトラスは周囲空間を巻き込んでマイクロブラックホール化。グラビトンの体組織を抉った後、蒸発しエネルギーを解放することで炸裂した。その光を背後にしながら、さらにアレスは機体にカトラスを引き抜かせる。

「そしてこいつはタッチダウン成功のご祝儀というわけよ! ヒュン、お前もばらまきな!」

「はーい、信頼のダサさのトラニアンブランド武装ですよー。在庫一掃――!」

 カラカラと笑うヒュンと共に、アレスは機体の亜空間武装庫から引き抜いた得物を四方八方に投擲した。カトラスとグレイブが髑髏達の大爆笑と共にまき散らされ、エントロイド達を巻き添えに散っていく。

 連続するマイクロブラックホールの展開に、周囲の空間に充満していた蒸気は真っ先に巻き込まれていった。その巻き添えを食ったグラビトンが傷ついていく中、自由落下していくアレスが頭上を指差す。

「行けよ! お前達の星だろ!?」

「アレス中尉! 露払い、感謝します!」

 二機のバッカニアの周囲を駆け抜け、多数の機影がグラビトンを追って駆け上がっていく。数え切れない程のスペルソード・ムラクモ達。そしてそれを先導する、数機のスプライトエクスプレス。

 先頭を行くのは、弾達が駆る血のようなエフェクトを纏った一機。そしてその隣には、剣持が駆るムラクモが追随している。這いずるグラビトンの前方には、長い断崖の終わりである地表が迫っていた。

「義勇軍各機、グラビトンの地表露出と同時に上空へ展開、ミサイル攻撃をお願いしたい。どうだ!?」

「こっちは命がけだぜ平良大尉。やれないことがあろうかよ。なあ諸君!?」

 弾と剣持の後方に位置していた平良の呼びかけに、後続のスペルソード・ムラクモ達が一斉に加速した。その先頭に立つのは義勇軍のリーダーとなった六角の機体だ。

 ネガ・オブジェクトを前方に展開して飛行するスペルソード・ムラクモは、前方空間の物質密度が低ければ低いほどネガ・オブジェクトの損耗を抑えられ、加速効率が増す。蒸気が除かれ、宇宙空間への散乱が始まった希薄な大気の中、ムラクモの切っ先は次々と掲げられていった。

 グラビトンのいくつかの首が、手をかけるように地表に横たわる頃。追い抜いたスペルソード・ムラクモ達は薄くなっていく大気を貫通し、上昇から急降下爆撃へと身をよじった。

「投弾!」

 攻撃に転じることが出来た各スペルソード・ムラクモにつき八発ずつの反応弾頭弾が、グラビトンめがけて降り注いだ。反転軌道や緊急逆制動で離脱していく義勇軍から分かれた幾千幾万のミサイル群は、オーストラリア大陸に匹敵する面積をキルゾーンとして殺到する。

 地表に溢れ始めたグラビトンが迎撃のエントロイドを発するも、明確な照準と義勇軍の意志を乗せたミサイル達は迷うこと無くグラビトンの体表を目指し、そして食い込んでいった。

 大爆轟が生じ、太平洋クラックの露出面周囲に残っていた大気を完全に吹き散らした。亀裂により分裂した地殻の表面すら削り、反物質反応から生じたエネルギーが吹き荒れる。宇宙空間にまで吹き上がる爆炎により、エデンⅣ太平洋面の状況は瞬間的に観測不能に陥った。


二七一七年 九月二五日 〇二三〇時

エデンⅣ低軌道


 膨大なエネルギーの解放によって生じるいくつかの波動が無音の宇宙空間を渡っていく頃、吹き上がる煙の中から動きが生じた。薄黄色い砂塵の尾を曳いて、傷ついたグラビトンの頭部の一つが宇宙空間へ振り抜かれたのだ。

 甲殻や鱗の狭間から血を流すグラビトンの頭部は一つ、二つ、と姿を現し、そして宇宙空間へと振り乱される。砂嵐を吹き散らして現れるのは、エデンⅣに咲いた邪悪な華のようなグラビトンの威容だ。

 グラビトンが咲いた太平洋クラックの端々から、追跡してきた部隊が宇宙空間へ展開していく。そして彼らを待ち受けるように展開していたのが、エデンⅣ駐留軍本部である大規模宇宙ステーション、シンギュラリティⅣであった。

 逆立ちした巻き貝のようなシンギュラリティⅣの形状は、いまや変形によって失われている。先細っているように見えた底面が開放され、まるで喇叭のように漏斗状に広がっていた。

『……こちらは、エデンⅣ駐留軍総司令部シンギュラリティⅣ』

 開放回線に呼びかけるのは、シンギュラリティⅣに設けられた一庁舎ばりの規模を持つ総司令部のトップに鎮座する男だ。背後でオペレーター達が慌ただしく行き来する中で彼、ゾルバー=ファードラ大将は宣言した。

『エデンⅣの物理波動完全汚染の刻限が迫っているため、シンギュラリティⅣに備わる惑星復元機構の発動を開始する。敵の中枢エントロイドが出現しているこの状況では、これは敵の動きを抑える効果もあるはずだ。――討ち取ってくれ。そいつが最後の敵だ!』

 瞬間、シンギュラリティⅣが激震した。真空の宇宙空間めがけて、その空間そのものを揺さぶる波動を放ったのだ。

 響き渡るのは伸びやかな民族楽器調のベースの上に、インダストリアルなメロディを重ねた曲調。エントロイド襲来直前のエデンⅣからサンプリングした物理波動だ。猥雑ながら、まだ前へ進もうとする意志を残した苦悶のようなメロディ。

 星の咆哮がグラビトンを打ち据えた。

 物理波動の放射を浴び、明らかにグラビトンは狼狽えていた。鎌首をもたげる幾つもの首が仰け反り、圧を受けている様子である。そしてその巨体の陰に入らないエデンⅣの地平線付近では、物理波動を浴びたことで瞬間的に植生が蘇り緑色を地表になびかせる。

 だが、惑星の命の表現そのものである物理波動を浴びてなお、グラビトンは徐々に頭を上げ始めた。目をこらせば、シンギュラリティⅣが放射する物理波動との間に、多数のエントロイドが生じては物理波動にもみ消されていくのが見える。同胞を生み出しては防壁としているのである。

 未来へ繋がる復活ではなく、今ここでの滅びを要求する黒の多頭竜が、幾つもの醜い顔をもって咆哮した。エントロイドが空間にまき散らされ物理波動の伝播を阻害していく。世界は救われるに値しないと宣告するかのようだ。

 数多の部隊が成り行きを見守る中、突撃を敢行する部隊があった。突入艇ゼップスを中心に、海兵隊と義勇軍で構成された一隊。太平洋クラックからの離脱に成功した後、衛星軌道上に集結した部隊はグラビトンの中腹から抉り込むような加速を開始する。


”二〇〇七年 九月二五日 〇二三二時”

エデンⅣ低軌道 グラビトン戦闘宙域


 長時間に及ぶ全開機動のためか、ゼップスの推進系から噴き出す炎には白か黒の煙が混じり始めていた。追随する機体達もエントロイドの血飛沫や被弾の痕にまみれ、同型機であっても同じ姿のものは一つとして存在しない。クラップバードは砲身を赤熱化させ、カマイタチはエンジンを咳き込ませ、バッカニアは刃こぼれした得物を提げ、スペルソード・ムラクモはミサイルを撃ち尽くし、そしてスプライトエクスプレスは自身にスパークを走らせていた。

「限界の機体はゼップスが収容する! 最後の一斉射によってグラビトン直上への活路を拓いた後退避だ! 希望する者は順次着艦してくれ!」

 ゲイブの指示に、ゼップス隊に属する機体が精根尽き果てた様子でハッチへすがりついていく。だが海兵隊の機体の何機かは残り、そして義勇軍は一機たりとも着艦しなかった。

「行くのか? エデンⅣ義勇軍……!」

「ゲイブ司令、ここまでの援護感謝します。ここから先は、我々エデンⅣの人間がつけるべき決着の場です」

 義勇軍代表の六角が義勇軍残存機体の先頭に立って告げる。

「ここにいるのは、彼と同じように自らの生き方に自ら決着をつけに来た者達です。お気遣いには感謝を! ですが今は送り出していただきたい。――そうだな諸君!」

 義勇軍のパイロット達は、疲れや震えを滲ませながら声を上げた。そして沸き上がる声の先、義勇軍の陣形よりも上空に弾のスプライトエクスプレス、剣持のスペルソード・ムラクモ、平良と彼の部下達が並んでいた。

「平良大尉も――」

「エデンⅣ駐留軍の責務は一つ、この星を守ることだ。任務の履行は今も求められている。お前達がいかに士気が高くとも、放置は出来ない」

「損な役回り?」

「オプティ、お前がこの男を焚き付けねばなあ……!」

 歯ぎしりする平良に、弾も剣持も笑った。そして剣持が頭上のグラビトンの首を見上げ、

「泣いても笑っても、ここが私達の星の未来を決める場所です。今の私は、参加し続けたい……!」

「そうだな剣持。これだけの晴れ舞台、心が躍らなきゃ臆病が過ぎる」

 弾も、剣持と視線を共にする。するとそこへ、重力カトラスを肩に担いだバッカニアが肩をぶつけてきた。

「海兵隊の残存組もまとまったぜ! 弾に、そこのJK、アスカも、いっちょやってやろうぜ!」

 呼びかけるアレスに続き、損耗が少ない海兵隊の機体達が乱雑に集まってくる。さらに波動の中に浮かぶエントロイド越しに、周囲の宇宙空間にも戦力の光が瞬いていた。

『号令を、ダン』

「みんな飛び出したがってる」

「俺も同じさ。――目標、グラビトン撃破! 全機発進!」

 弾は声を上げ、スプライトエクスプレスを上昇させた。全軍が動き出す中、舵を切って離脱していくゼップスからの砲火が編隊を追い抜いてエントロイド群へと突っ込んでいく。

 実体弾、レーザー、ミサイルの残量全てをぶちまける攻撃に、宇宙空間にエントロイドが連鎖爆発する炎が連なる。それぞれの速度を持って、突撃隊は打撃された空間へ進入した。敵の残骸が吹き散らされ、即座に周囲から新たな敵影が押し寄せてくる。

「これだけの規模だ。そうでなくてはな……!」

 平良が挑戦的な目で周囲を見渡し、螺旋を描いて機体を上昇させる。部下のスプライトエクスプレス隊も散開する中、周囲へと光の矢が放たれゼップスがこじ開けた空間を死守する。

「義勇軍各機、前方を火力でこじ開けろ! ……ヘキサ組集合――!」

 指示を飛ばす六角の周囲に、スペルソード・ムラクモ数機が集う。義勇軍の拳のマークの他に、尾翼に六角形のロゴが入った機体達だ。

「押し寄せてきやがるぞ! 火力を集中させろ! 繁忙期を乗り切る感覚でGOだ!」

「うおおこんなのクリアー研ぎ出しに比べればなあああ!」

「今までソフビへの色移りとか起こしてたのもアンタ達なんでしょおおお!」

「パッケージに書いてある注意書きぐらい全部読めやあああ!」

 ホビーベース・ヘキサから参加した弾の同僚達が、それぞれ叫び声を上げながらムラクモの機銃を掃射する。最前を飛ぶのは、弾と同じレジ係、小菅だ。

「舐めないで下さいよ。鼻の下伸ばしたおじさんやら、お小遣い足りない子供や何を頼まれてきたのか忘れて店員頼みのおばさんやらを一年中捌き続けてるんです! 数だけの化け物なんかに……私が大人になるのを邪魔させてたまるものですか!」

 バレルロールしながら機銃掃射する小菅のスペルソード・ムラクモへ、弾幕を強行突破したヒュージバイトが迫った。小菅は機体が展開するネガ・オブジェクトを放り出してヒュージバイトの鼻先へ放り込むと、鋭く軌道を変えながら上昇し続けている。

 迎撃に回るヘキサのスタッフ達を弾が追い抜いていく。小菅は叫んだ。

「矢頭君! こちらの心配は無しで!」

「小菅さん……了解! フォス、オプティ、さらに加速を入れるぞ!」

『突破経路予測、計算速度をブーストします』

「撃ちまくるよー」

 光弾、レーザー、ホーミングレーザーを立て続けに放つ弾のスプライトエクスプレスは、小菅の機体に押されるように突破速度を増していく。剣持の機体がそれに追随し、増加スラスターを持つ平良機にすら追いつく速度へと到達していた。

「彼らの方がより突き抜けていこうとしているとでも――。っ!? 敵頭部接近!」

 瞬間、平良隊が散開した。その彼方から近付いてくるのは、鬣を蓄えた東洋的な竜の形状となったグラビトンの頭部の一つ。あまりの巨大さに遠目には遅く見えるが、軌道上のエントロイドを逃さず巻き込み、顎を開きつつある。

 平良隊の動きを見て、突撃隊の各員も旋回していく。後続の機体がグラビトンへ射撃するが、グラビトンの方は意に介した様子も無く陣形の中に首を突っ込む。

 そして咆哮。空間を震わす大振動の中から、大量のエントロイドが連鎖発生し、突撃隊内部に満ちあふれた。

『ちっくしょう……!』

『離れ――あああああ!』

 至近距離からエントロイドに取り付かれたスペルソード・ムラクモ数機が、コントロールを失ってグラビトンに衝突し、あるいはエントロイドの砲火に突っ込んで爆発していく。その爆炎に照らされながら、弾達は上昇を続けた。グラビトンはゆっくりと頭部を巡らせ、昇っていく部隊を振り仰ぐと鎌首をもたげていく。

『奴め、側面からもう一度咆哮を浴びせてくるつもりか!』

 義勇軍の誰かが叫び、彼に率いられたムラクモ達が鬣の竜頭の前にネガ・オブジェクトをばらまいた。

 侵食の黒球群に突っ込み、鬣の竜頭は方向を呻き声に変えて呪詛でも吐くように義勇軍を視線で追う。敵意は強い。しかし動きは止まった。

『もう一体が来るぞ!』

 さらに誰かが叫び、他の首の陰からねじれて向かってくる頭部を知らせる。西洋竜のような角を備えたその首は、口腔の中に恒星のような熱量をくわえ込んでいる。

『行けえヤガシラ! ここは大人に任せなあ!』

 東洋竜のグラビトンが咆哮し、西洋竜のグラビトンが火焔をまき散らす周囲に、スペルソード・ムラクモ達が放つ光弾がばらまかれる。そして彼らに背中を任せて弾と剣持、平良隊やアレス達は上昇し続けた。

「我々の方にもまだ来る!」

『ダン、左です!』

 平良とフォスの警告通り、左の空間にレギオバイトの頭部を拡大したような無眼のグラビトンがこちらを見下ろしていた。えずくように喉を動かしたそれは、口の中から多数の触手を生じさせ、空間に伸ばしてくる。

「キモ――い! こいつはキモいぜ!」

 急上昇したアレスがカトラスの一降りで触手の一本を断ち斬った。途端に、その切断面から血が飛沫を上げるようにレーザーが迸り、アレス機の足首を切断する。

「オウッ!? ――なーにこっちは空飛んでんだ、足首なんざ飾りよ」

「おっロボ乗りとしては古典的ですね隊長!」

「脚までいらねえとは言わないけどなあっ!」

 カトラスを振るい、アレスは続く触手も断ち斬ると吹き出すレーザーを切断重力帯で受け流す。ヒュンの機体が背中合わせに合流し、さらに部下である海兵機隊、カマイタチやクラップバードが周囲でも戦闘を開始する。

「行けよ弾! もうすぐ頂上だぜ!」

「お達者でー!」

 刀身を振り上げる二機の姿が、振り回されるレーザーの向こうに見えなくなっていく。弾、剣持、平良とその部下達は振り切るように上昇を続け、周囲の駐留軍艦艇が砲撃するグラビトン頂上部へと至っていく。

 グラビトンの頂点には、花びらのように周囲空間へもたげられた数多の首の中央に、種かめしべのように守られた、無貌のままの首があった。他の首が黒の鱗に覆われている中、唯一白い鱗と光をまとっている。しなを作って立つ女神像のようなその佇まいを、弾達は旋回しながら目撃した。

「まさかあれは……コアとか、中枢のような……?」

『地下で吸収したエントロピー波動を特に強く蓄えているのがあの個体のようですね。周囲の首に向けて波動の伝播が観測されています。ヤツが分け与えていると見ていいでしょう』

「おっぱいあげるみたいに?」

 オプティが首を傾げると、弾と剣持は視線を逸らした。その様子をやや後方から見ていた平良は、不意に気がつくと機体を横っ飛びに急旋回させる。

「! 平良大尉!?」

「周りの首がこちらに気付いた!」

 周囲でのたくる、それぞれが違う形状の首達が全てこちらへ振り向いている。部下達をそれぞれの相手へ向かわせながら、平良自身も牙を剥いて迫ってくる蛇のような頭部へと相対した。

「矢頭弾、剣持沙羅、エデンⅣ代表として行け。フォス、オプティ、二人を頼むぞ!」

 平良機が急加速し、遠ざかって見えなくなっていく。そして蛇の頭部の周囲で爆光が連続し始めると、弾はウインドウ越しの剣持と共に前方を見据えた。

「フォス、あれがグラビトンの中枢部位なら……」

『地底の時と同様です。強力な波動をたたき込むことができれば、それは敵の全身に波及します。そうしてグラビトンを撃破できれば……』

「あの『音』で、エデンⅣを元通りに出来るよ」

 オプティが頭上のシンギュラリティⅣを指差す。そして前席の弾へ身を乗り出し、剣持のウインドウものぞき込み、

「ダン、サラ……行こ?」

「ああ。いいな、剣持!」

「うん! 私の機体はもうミサイルを撃ちきっちゃったけど……全力で援護するよ!」

 頷く剣持に、弾も頷きを返す。オプティが後席に勢いよく戻ると、スプライトエクスプレスのセンサーが明滅し、スペルソード・ムラクモのノーズコーンに電光が走る。

 邪悪な華の中へ、二つの光が加速を始める。


”二〇〇七年 九月二五日 〇二四一時”

グラビトン中枢


 白の無貌は、静かに佇む姿の下方で急激に太さを増し、他のグラビトンの塊の中へと埋没している。外からの流れ弾も不思議と無く、白の無貌からの穏やかな光が空間を照らしている。

「周りに比べて静かなもんだ」

「うん……」

 連れだって飛ぶ弾と剣持の機体は、一度上空へ軌道を膨らませてから、緩やかな降下で白の無貌の上空へ進入していく。すると、俯くように首を曲げていた白の無貌が、人間的な動作で顔を上げた。

「気付かれたな!」

 瞬間、弾は機体を加速させる。降下を続けながら白の無貌の周囲を巡る軌道へ旋回を始めると、白の無貌の瞳無き視線はそれを追ってくる。剣持のスペルソード・ムラクモがスプライトエクスプレスを追随すると、白の無貌は身を乗り出すようにして吠えた。

 波動として伝わる叫び声はガラスを軋らせるような高音。だが澄み渡っては聞こえず、背景にノイズが混じっているような感覚を寄越してくる。

「美声じゃあないな。俺はこっちの方が好みだ」

 弾がオーディオコンソールに接続されたプレイヤーを指で弾くと、オプティが頷く。直後、オプティは観測データに視線を走らせ、

「……エネルギーがすごい」

『惑星核のエネルギーを蓄えるのも担当していますねこれは!』

 瞬間、白の無貌の直下で本体部分の光が強まった。そして木漏れ日が差すように、そこかしこからエネルギーの迸りが光の柱として立ち上がり始める。

「うおおっイライラ棒状態……!」

 弾達の前方にも光が走り、二機の戦闘機はスラロームするように空隙に滑り込む。

「あれはなんだ、フォス!」

『純粋に高エネルギーの光のようです。しかもこれは――単純に我々への攻撃というわけでも無さそうですね』

「シンギュラリティⅣが!」

 オプティが頭上を見上げると、並び立つ光の柱に、巨大宇宙ステーションが炙られている様が見て取れた。照射開始から間もないながらも、収束した光を浴びた部位は自らも橙色に発光し始めているように見える。

「避けないと――」

『シンギュラリティⅣの機動システムはあくまで調整用です。周囲の艦隊がフォローに入ろうとしていますね……。我々も急ぎましょう!』

「なんとか防げないかな? ……!」

 剣持が疑問した直後、ふと白の無貌を見た目が見開かれた。すぐさま周囲を見渡し、

「矢頭君、危ないかも!」

「何がだ?」

 弾が訊ねた直後、二機よりも下方で柱同士をあみだくじの様に繋ぐ横棒が突然生じた。根元から光が供給され二本の柱は間の空間を飲み込んだ一本の太い柱に変わる。

 直下からの白光に突然包まれた二機は、光の流れの中で激震した。瞬時に高熱化し、さらに極大音量のホワイトノイズを浴びせかけられる。

 弾は歯を食いしばり、オプティは耳を塞ぎ、剣持は悲鳴を上げながら機体を飛ばした。光を抜けるとスプライトエクスプレスは血飛沫エフェクトを吹き、スペルソード・ムラクモは機体下面のネガ・オブジェクト・エンジンの保護装甲が熔解している。

「――純粋に高エネルギーの光、だって?」

『実測データを元に訂正しますよ、ダン。あの光は、周囲から見える散乱光以外に強い指向性を持った光の波を内包しています。そしてその波はエントロイドの物理波動に近似……あれは光を利用したエントロイドの伝播システムです! サイクロン・レーザーの威力を生む原理と同じです!』

 傍らを見ると、光の柱の中にうっすらとレギオバイトのシルエットが幾つも、上へと流れていくのが見える。背後にある合体光柱には、ピラノイドの影。直後、頭上のシンギュラリティⅣで爆発が起き、その煙の中からレギオバイトが飛び立つのが見える。

「やばいじゃないか……!」

『戦術的にも危険ですが、長期戦略的にも危険です! この光が届く天体へと、エントロイドを送り込むことができるわけですから。その結果このグラビトンが増えようものなら……』

「エントロイドの移動ネットワークができちゃう」

「なんでこんなのが私達の星から……」

 剣持が涙目になる間に、弾は手近な光柱へ光弾掃射を撃ち込んだ。光同士なら互いに干渉すること無く交差するはずだが、光弾が光柱へ飛び込むと赤いスパークをまき散らして波紋が広がる。

「……効きそうだ。光柱を攻撃しながら中心へ向かうぞ!」

 即座に弾がレーザーをチャージし始めると、オプティはホーミングレーザーを光柱へ向ける。二、三と弧を放ったオプティは、少し考え込むと設定を操作し、ホーミングレーザーの照射時間を延長した。

 飛び行くスプライトエクスプレスから、掴みかかるようにホーミングレーザーが光柱へと接続される。その破壊力が赤いスパークと共に光柱へ注がれると、一瞬緑の光が光柱を侵食し、直後にへし折った。

「いけるね」

「いいぞ! 駐留軍の基地を守れ!」

 弾が放つレーザーも、光柱に突き刺さるとその色を侵食し、砕いた。光柱から溢れ出たエントロイドのシルエットが藻掻きながら霧散していく中、スプライトエクスプレスとスペルソード・ムラクモは大回りな螺旋を描き、光柱を砕きながら中央へと迫っていく。

「剣持、そっちはどうだ?」

「ムラクモの武装は効かないよ! でも――」

 直後、すぐ前方で弾がへし折った光柱の上側が、助けを求めるようにそばの光柱へと横棒を放つ。しかしそこへ、機首にネガ・オブジェクトを展開したスペルソード・ムラクモが割り込むと、暗黒物質は横様の光を飲み込み、相殺していった。

「ネガ・オブジェクトならなんとか……!」

「よおし……!」

 貫く光、侵食する光、そして受け止める黒球とを振りかざし、二機は光の神殿のような空間を飛んだ。荘厳な光を砕いてまき散らしていくと、光柱の中を昇っていこうとするエントロイドの影が抗議するように身をよじった。

 折れた光柱の断面から、レッサーバイトの群れが降り注ぐ。淡い光の影達は、二機の翼にかかると砂糖菓子のように砕けながら、ノイズ混じりの甲高い声を上げる。その様子に剣持は顔をしかめ、

「生まれようとするのを邪魔されて、怒ってるみたい……?」

「今更被害者ぶりやがって!」

 弾が歯を剥くと、スプライトエクスプレスから放たれる赤いスパークの量が増していく。攻撃のみならず、機体にも帯電するようにまとわりつき、そして血飛沫のように散っていく。血を流しながら飛ぶ鳥のように、スプライトエクスプレスは白い光の空間を汚していった。

「ここは地下で見たこいつらの腹の中と同じだ。エントロピーで埋め尽くされた不毛の空間! 白いか黒いかだけだ。いくら何かを装ったって、お前達に意味なんて無いんだろうが!」

 断じたその時、光の柱の中を昇っていくエントロイド達の周囲にさらに細かなシルエットが混じり始めた。水中に放り出されたかのように回転しながら吸い上げられていくそれは、

「人……」

 オプティが目をこらすと、剣持が歯を食いしばった。

「地上で犠牲になった人達……!?」

「そう言うやり口をしている方が相応しいなあ! お前達は!」

 赤く獰猛な猛禽となって、スプライトエクスプレスは人を巻き込んだ光柱も砕いていく。繋がろうとする柱は剣持が遮り、伸びようとする柱は躱す。

 世界の終わりの裁きのような光景の中、猛り狂った翼が渦を巻く。終われ、と説くような天の光を砕くのは、未来を知り、そこへ向かおうとする飛翔の兵器。

「人間なめんなあ!」

 咆哮が走った瞬間、周囲で光が砕けていく度合いが一気に増した。周囲、シンギュラリティⅣ方面からや、グラビトンの首を突破した駐留軍艦艇が弾達の前方を切り開くように砲撃を開始したのだ。さらに、グラビトンの巨体を駆け上がり、下方から各首の周囲に戦闘機や海兵機が展開し始める。

 外から見れば、光の中を突っ切っていく二機は逆光のシルエットに見えるだろう。誰よりも戦場の中心を飛ぶ機影だ。

『ダン、光柱の発生前兆の解析が完了。発生を予期できるようになりました。――そしてそれによれば、あの白いグラビトンの全周を囲むように光の壁が立ち上がります。否、もう始まっている……!』

 フォスが言うとおりに、白の無貌が真下からの光に強く照らされ、掻き消えていく。円筒状に発生する新たな柱は、もはやその途中から半ば実体化したエントロイド達をこぼしながら伸びていこうとしていた。

 今までのどの柱よりも巨大なそれに対し、弾はオプティと剣持へと目配せする。二つの頷きが返ると、赤を散らして翼は急旋回した。


”二〇〇七年 九月二五日 〇二四九時”

光が降り注ぐ中


 白の無貌は、光に閉ざされていく空間の中にそびえていた。触れ得ざる神秘の化身のように超然と。慎ましい華のように淑やかに。世界の根幹を成す法則が生んだものとしては、相応しい姿であるかもしれなかった。

 だがそこへ、成立していく光の壁をぶち抜いて不躾に飛び込んでくるものがある。

 それは光の壁と相殺し合い、消えかかったネガ・オブジェクトの球体だった。慣性速度も失い蒸発し始めたその球体の陰から、炎のような赤が空間へと吹き上がる。

「たどり着いた……!」

 浮かび上がるのは、赤いスパークを纏ったスプライトエクスプレス。その武装ナセルからホーミングレーザーが羽ばたくように広がり、全周の光の壁へと突き刺さった。

「滅びろ! エントロイド!」

 自ら放ったホーミングレーザーを引きちぎり、スプライトエクスプレスは白の無貌の周囲空間を旋回し始める。ホーミングレーザーは光の壁に突き刺さり、外へ向けて粉砕していた。

 砕けた光の欠片やエントロイドのシルエットが降りしきる中、スプライトエクスプレスは螺旋を描いて上昇し、そして切り返しと降下軌道の中で白の無貌へと光弾を掃射する。

 攻撃を降り注がせる機体の操縦席、弾は白の無貌の姿を見つめていた。後席のオプティも、そしておそらく、機体自身であるフォスも。

 機体が周囲を旋回しながらさらにホーミングレーザーを撃ち込んでいく中、白の無貌は攻撃を受けた部分から波紋を発生させ揺らぐ。

『物理的な破壊力が通じていないように見えますね』

「あれ……半分『もの』じゃなくなってるみたい」

「ものじゃない?」

 目をこらすオプティに、弾も視線に力を込める。絞り込んだ視野の中で、わずかに黒くよどんだシルエットが寸分違わず白の無貌に重なっている様子が垣間見えた。

「エントロイド……いやエントロピーそのものってわけか?」

『――対象表面形状に変形を確認』

 崩壊の光の中で、白の無貌が表面をさざめかせる。滑らかな曲線だった表面に波が立ち、凹凸が増え、一部は枝分かれしていく。数カ所でくびれたそれは、見ようによっては女性の姿にも見える形態へと変化しつつあった。

 腕と思しき部位を広げ、触手状の器官を束ねて背中から生やす姿は、翼持つ女神のようであった。元の形状の面影を残すつるりとした頭部、その口元のような部位には微笑すら浮かべている。

「何のつもりだ……?」

「あ……、ダン!」

 オプティが声を上げる。その時弾は、操縦レバーを握る自身の腕から光の粒子のようなものが沸き上がり、キャノピー越しに見える白の女神へ飛んでいく様子を見た。オプティからも、機体全体からも同様だ。機体表面を流れるスパークが、光の粒子の流れに乗ってたなびいている。

『機体の……さらにダンとオプティのエントロピー汚染の度合いが低下し始めました。原理は不明』

 オプティの報告に、弾とオプティは白の女神を見上げる。光の粒子の流れは、両腕を広げた姿の胸元へと向かっていた。

 全身に宿る疼痛が薄まっていくのを、弾は感じていた。故にオプティに振り向き、

「そうか、これは……」

「うん、ダン……」

 二人は視線を交わす。

 そして眉を吊り上げ、

「俺達の汚染を吸い上げて回復しようとしてやがるな!?」

 瞬間、弾は自身から湧き出す光の流れに手を伸ばすと、それを握り締めた。オプティも虚空に手を振り回して光を散らし、

「かっこつけ……!」

「ああ――。この野郎さも祝福してるようなツラしやがって!」

 弾が握った拳を引くと、光の流れは突っ張り、さらに鬱血したように紫に染まった。そして弾の怒りが放たれるように、掴む手にも赤いスパークが走る。

「今更返すかよ! この穢れも苦しみも……もう俺達のものだ!」

 白の女神へ向き直ったスプライトエクスプレスから、光の流れを赤いスパークが侵食する。稻妻が達する度に、白の女神は返り血を浴びたかのようにどす黒い赤に染まった。

「許すものかよ。墜ちていく者は飲み込み、昇っていく者は堕とそうっていうのか。俺達が汚染を除かれることが救いになるとでも……? そんな目先のことでお前に! お前なんかに手なずけられてたまるか!」

 血の色のスパークを伝播するスプライトエクスプレスが、その機首にレーザーのチャージ光を溜める。女神を打ち据えていたスパークは、握り込むようにその光球へと収束した。

「正体を現せ!」

 レーザーが迸る。空間を掻き毟るように広がるスパークと共に白の女神を貫いた光は、赤く斑に染まっていたその姿を完全に染め上げた。そして周囲では光の壁が崩落しきり、周囲の光の柱も砲撃で失われ、開けた空間が広がる。

「矢頭君!」

 光の壁への突入時、弾達の先導としてネガ・オブジェクトを放って退避していた剣持の機体が上方に見える。そちらを一瞥し、しかし弾は女神の姿を見据える。

 周囲の戦闘の中からも、幾つもの視線が敵の中枢の行く末を見ていた。そしてその先で、赤く染まった女神が苦悶に身をよじるように体を丸める。その背中から生える触手翼が痙攣すると、自らを抱え込んだ腕が不意に膨れあがった。

 内側から膨らまされるような変形は、全身へ波及した。そして震えだした相手は、直下の赤に染まった光を吸い上げはじめる。

『敵全体のエントロピー汚染濃度が、あのグラビトンに収束していきます! 我々からエントロピー汚染を奪うことが出来ずにダメージを受けたからでしょうか――』

「理由なんざ知ったことか」

 弾が睨み付けると、俯いていた女神は顔を上げた。醜くボコボコと膨らんだ顔や体には、もう白く輝いていた頃の面影は無い。

「それでいい。お前は神なんぞじゃない。……悪魔め」

 吐き捨てると、赤の偽神は金切り声のような咆哮を上げた。ノイズ混じりの叫びにスプライトエクスプレスが後退すると、赤の偽神は光を失った本体部分から、腐り落ちるように分離する。

「! 逃げる!」

『今あの個体にはグラビトンの蓄積していたエントロピー汚染が凝縮しています。逃してはなりません』

「当然倒すさ!」

 偽神は節くれ立った触手翼の隙間に光膜を張り、浮かび上がった。スプライトエクスプレスが噴射光を放つと同時に、トンボのような急加速で飛び立つ。

 宙を蹴るような直線的な軌道を、スプライトエクスプレスが追い始める。エネルギーの供給源が離脱したためか、周囲のグラビトンの首達が何事かと振り返る間を抜け、宇宙空間へ。濁った血の色の尾を曳く偽神に対し、スプライトエクスプレスは鮮血の色のスパークを空間に残していく。

 弾とオプティが放つ追跡の砲火に対し、それを受けながら偽神は小規模な光の柱を砲撃として、追いすがるスプライトエクスプレスへと放射した。直線的な放射はここまで戦い抜いてきた弾にとっては見切れるものだが、ヒステリックにばらまかれる量に、躱しきれない一撃が翼やスタビライザーを掠めていく。

 その度に血飛沫を散らすが、しかしスプライトエクスプレスは偽神へ近付いていった。

 グラビトンの首を一巡りし、宙域を横切っていく二つの軌道の周囲で、戦う駐留軍が時折援護射撃をよこした。掠めていく実弾やレーザーに偽神が火花を散らす度に、スプライトエクスプレスの切っ先は迫っていく。そして援護を飛ばした機体は翼を振り、それぞれの戦闘の中へと戻っていった。

 駐留軍に狙われるのを避けるためか、偽神の軌道はグラビトンを駆け下りるルートに入る。しかしその先には、中腹でエントロイドと取っ組み合う海兵隊や、首の一つを撃破した義勇軍の機体が待ち構えていた。

 進路上にも光の柱を放ち突破しようとする偽神だが、海兵隊も義勇軍も回避しつつ追い立てるような連射を放ってくる。偽神はそれを避け、さらに低高度へ。そしてスプライトエクスプレスはそのすぐ後ろを追随する。

「ただ逃げ回るだけのお前に、切り開いて行くことが出来る先などありはしない」

 もはや並んだ位置にまで至ったスプライトエクスプレスから、弾が言葉を突きつける。偽神は突き飛ばすように光柱を放ち、地底に吸い込まれだいぶ薄くなってしまった大気圏へと突入し始めた。

『敵、体表に加熱。汚染を収束させた結果、物理的干渉を受ける状態になっています』

「みんなの攻撃も当たってたしね」

「ああ……殺そう」

 弾が拳を掲げると、オプティがそれに拳を打ち合わせる。そして大気圏突入の赤熱の中から、数条のホーミングレーザーが偽神を追った。

 射撃を応酬しながら、二つの軌道は衝撃波を纏って惑星を巡る。横様に撃ち合い、後ろを取ろうとすれば後方へ火力をぶちまけ、絡み合い交錯し合い、荒れ果てた大地の上を横切っていく。

 被弾の度に、偽神は悲鳴を上げる。だが弾は放たれる光柱の最中へすれ違うように突っ込み、淡々と撃ち続け、そしてチャージスフィアを掲げると機首を偽神へと突き込んだ。焼けるような音と共に、チャージスフィアの光量の向こうで偽神が黒く染まっていく。

「たとえお前達がやろうとするように、堕落に向かうことが摂理であっても、滅びを避けられない世界であったとしても――」

 偽神を抑えこみ、弾はスプライトエクスプレスを急降下させていく。焦げ付いたように黒く染まった偽神越しに荒野が迫り、警報音が鳴り響く。それでも弾は加速を入れ、

「俺達は足掻くさ。あの高みは、辿り着ける場所なんだからな」

 直後、二者は荒野のど真ん中へ激突した。膨大な量の砂埃が上がり、さらにそれを突き破って黒い爆風が吹き上がる。雷鳴を伴ったオーラが渦巻くが、さらにその下から沸き上がる赤い光に焼き尽くされるようにして消えていった。

 荒野からは、グラビトンの宇宙にまで続く巨体が見上げられる。そして中枢を失ったそれは、幾つもの頭部を断たれ、崩れ落ち始めていた。さらにその彼方にあるシンギュラリティⅣから伝わる波動が、薄く冷たい大気の中に音楽を響かせ始める。

 降り注ぐ音の中、収まった爆風の中心地からももう一つの曲が流れ始める。砂をさらっていく風と共に、それはどこまでも響いていった。

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