あとがき

「光速度不変の原理」というのは常識で考えると非常に奇妙な原理ですが、受け入れなければそれはそれでおかしくなってしまう原理です。しかし、厄介なのは「光速度不変の原理」を受け入れてしまうと空間や時間が伸び縮みしてしまう事です。ですがそれはアインシュタインが「光速度不変」を原理として受け入れ理論を構築していって得られた結論であり、どうやらその通りらしい観測結果もあるようです。

 しかし、しかしです。私とあなたの間のこの空間が伸び縮みしているんです。この空間は私たち二人の空間ではなく、他の人の空間でもあるのに、私、あなた、そしてその他宇宙に存在する全ての人にこの空間は広さも時間の進み方も違ってくるというのはどうにも受け入れ難い現象です。私たちが受け入れても受け入れなくても時空間が伸び縮みするというのは、光…電磁波が宇宙空間を伝わる限り避けられない事です。

 そもそも光は電磁波の中のある範囲内にある波長の波ですから、特別に光だけが粒である事は考えにくいことです。もしも光が粒だとしたら電磁波全てが粒でなければならずそれはどう考えても無理があります。ですから電磁波は波だと考えるのが自然の流れですが、もしも波だとしたら、その波が伝わるための何かが宇宙空間に無ければ話になりません。

 19世紀にはその何かをエーテルだと考えていましたが、その後エーテルは「場」という便利な物に形を変えました。結局エーテルでも場でも物は伸び縮みし、場にしてしまったことで困ったことに空間そのものに加え時間までも伸び縮みしてしまう結果になっています。

 場を電磁波が伝わるという仮定を自明の理として、色々な理論が組み立てられ、色々な粒子も発見されそれなりの成果を上げているように見えます。場と言う得体のしれないモノのおかげです。それでも場が何で出来ているのか、なぜ光が全ての物質に対して一定の速さで進むのかはわからないままです。

 宇宙空間を伝わると考える限り場という縛りからは逃れられませんし、時間と空間の伸び縮みも避けられません。だったら電磁波は宇宙空間を伝わっていないと考えるのが合理的ではないかと私は考えました。

 私がお伝えしたかったのは光速度が不変である理由であって、「場」という考え方でその理由が説明できるのであれば宇宙空間内を電磁波が伝わっていても一向に構わないのです。しかし、どうやら場では光速度が不変である理由は説明できない。説明するためには時間と空間が伸び縮みしているという考え方を持ち出さなければならない。ですから私は「妄想空間」を持ち出したのです。

 その妄想空間を伝わる電磁波とは何だろう。それを知る為には電磁気…磁気と電気の事が分からなければなりません。しかし、なぜ磁力があると物がくっついたり離れたりするのかが現代科学でもよく分かっていません。電気の事も実はあまりよく分かっていない。

 電磁波に関する理論はたくさんありますが、残念な事に磁気の事も電気の事もよく分かってはいません。実におかしな話です。ですから、磁気と電気についても妄想する必要がありました。

 妄想の中では、全ての物質から少なからず「斥波振動」出ていてそれが妄想空間の中を伝わっています。ということは、全ての物は宇宙にある他の全ての物質と斥力の波でつながっている筈です。であればその斥力の波を電磁波である「斥波振動」が伝わっていくと考えられます。

 私たちはその斥波振動が30万km進む時間を1秒であると認識します。逆に斥波振動が1秒進んだらその距離は30万kmであると認識します。決して斥波振動が30万km進んだ時間を測ったら1秒経っていた、或いは1秒計ったら30万km進んでいたという事ではないのです。斥波振動、つまり光の進んだ距離により時間が決まり、或いは進んだ時間で距離が決まってしまうのです。

 さて、光は妄想空間を伝わりますが、光が進んだ時間で宇宙空間の距離が決まってしまうのであれば宇宙空間は必要なのでしょうか。例えば、月までは光が届くのに1.3秒かかるから38万4,403kmだと言われていますが、本当はすぐ近くにあるんじゃないのかなんて事も考えられます。であるのなら、宇宙空間が本当にあるのかどうかすら怪しいものです。

 つまり、地球を含めて私たちが見ている星々は妄想空間の上に浮いているだけなのかもしれません。宇宙空間が妄想空間という事ではなく、そこにあると思っている宇宙空間が存在する代わりに、私たちには認識できない空間があるという事です。

 例えば、紙の上に星の絵を描いたとしましょう。この時に星は紙の中にあります。もし紙が無かったら星の絵だけが3次元空間に浮かんでいることになります。同じように、星は宇宙に浮いているのではなく、宇宙の無い妄想空間に浮かんでいるのではないでしょうか。

 ブレーン宇宙論というのがあります。膜宇宙論とも呼ばれていますが、私たちの宇宙は高次元の空間に埋め込まれた膜の様なものではないかと考える宇宙モデルのひとつです。私の考える宇宙はこの膜すら無いものです。とは言え確かめる術はありませんけどね。

 最終的に宇宙の姿まで考えてしまいましたが、目的は宇宙論を語ることではなく、あくまでも光速度が一定で進む理由を考えることです。でたらめな妄想でしたが最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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光速度不変の原理  ~妄想力を駆使して考えた~ サ卜ウマコ卜 @makoto-satou

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