カタリ&バーグ、異世界へ

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カタリ&バーグ、異世界へ

(この小説はカクヨム3周年記念10日目のお題に合わせて、カクヨムのキャラクター、カタリ&バーグ&トリの設定を使って創作したものです)


 ◇


 僕の名前はカタリィ・ノヴェル。通称カタリと呼ばれるカクヨム世界の妖精だ。いやいや、違う違う。正しくは謎の生物、トリに「至高の一篇」を探すことを命じられた、トリの下僕、下働きである。……間違っていないような気はするが、僕はそんな存在だったのか?トリとはいったい……。


 僕は「至高の一篇」を探してウロウロいたはずだった。途中、コンビニでコンポタ味のスナックを買って、信号待ちをしていたところまでは覚えている。

 だが……ここはどこ?


 気がつくと見知らぬ場所に僕はいた。中世風の村だ。現代とは思えない。木と土、漆喰で出来た家が土の道の左右に立っている、鎧の兵士、魔法使いらしき人が歩いている。それに角の生えた、大きなダチョウのような動物が客車や荷車を引いている。


 ……ここはもしや、異世界?


「カタリ……さん!」

 そう後ろから呼び止められた。振り向くとそこには見慣れた顔があった。バーグさんだった。


 バーグさんもまたカクヨムの電子の妖精……もとい、AIの女の子だ。そうAI……AIのはずなんだが……。

「……もしかして実体化してない?」

「あら?そう言えば……実体化してますね!」


 まあ、いいか。異世界にいるし、そんな細かいことは多分どうでもいいのだ。


「ピー!」

 鞄の中から声がする。開けてみると案の定、トリがいた。

「トリさんもいますね。三人……いえ、二人と一羽でこの世界にやって来たみたいですね」

「そうみたいだね」


 これは異世界召喚と言うやつか?しかしまた何故?いったい誰が?

 途方に暮れていると、トリが騒ぎ出した。ついて来いと言う。


 村の外れの大きな池までくると、10歳ぐらいの可愛らしい少女が本を読んでいた。

 トリはその少女の頭に止まった。少女はトリを手に乗せて微笑んだ。何とも知的で荘厳な雰囲気を持った少女だった。


「ピピー!」

 トリが騒いでいる。……もしかして?


『詠目!』

 心に封印された物語を現出させるスキル、「詠目」を使うと、掌に一冊の光り輝く黄金色の本が出現した。


「カタリさん、それ、もしかして!」

「ピーッ!」

 もしかしてこれは「至高の一篇」?ついに?


「やったぁ!ゲット!」

「ピーッ!」

 トリが喜んでいる。間違いない。

「やりましたね!」


 ついに……ついに使命を果たしたのだ!これでトリの下僕から……。

「あっ!」

 一瞬で手の先から本が消えた。見回すと一匹の緑色の人型のモンスターが「至高の一篇」を抱えて走り去っていた。


「……待てー!」

 僕らは後を追いかけた。


 モンスターは森を駆け抜け、奥の洞窟へと消えた。


「はぁはぁ……」

「ピピーッ」

「疲れましたよー、カタリさん」

 バーグさんが肩で息をしている。


 洞窟はモンスターの巣らしかった。入り口に動物の骨と皮で作ったトーテムが置いてある。

 

「ここは……何かまずそうな場所ですね。私のデータベースによると、こういう状態の場所は『危険かつ不吉』らしいですよー」

「そうだね……まずいね。僕ら丸腰だしね。仲間が居そうだし」

「どうしましょうかねー……うーん」

「……あ、そうだ、村に戻って武器を……」


 そう話していると、周囲の森に怪しい気配を感じた。そしてさっきのと同じ種類の緑のやつらが数匹ゾロゾロと出てきて、周りを取り囲んだ。中には杖を持った魔法使いらしき奴までいる。


「まずそうですよー、カタリさん」

「そうだね……」


 とりあえず手近にあった木切れを掴んで構えた。こんなもので対抗できるようには思えないけれど。何より体力的に勝てるような気がしない。


「ピーッ!」

「あっ!」

 思う間もなく、トリが一匹にキックした。ひるむ敵。そして次々とキックして行く。トリ、いつの間にそんな技を!あなどっていた。今度から先生と呼ばせて貰おう。

 そして魔法使いの首飾りの宝石をキックした。砕け散る宝石。すると、魔法使いは煙のように消えてしまった。


「ピピーッ!」

 トリがこちらに向かって鳴く。鞄の中を見ろって?

 鞄の中を探る。マンガにイラスト本に、ちょっとだけある小説、あと食べかけのチョコ。あとは……あっ!

 見慣れない赤い表紙の本が出てきた。炎の文様が書いてある。もしかしてこの展開は?


 本をパラパラと開くと空中に炎の玉が出現した。これがファンタジー小説で定番のファイアボールと言うやつか。ここは一発叫んでおくか。


炎弾ファイアボール!」


 浮き上がった炎の弾が次々と宙を弧を描いて飛び、敵に命中して破裂する。当たった敵はまるで砂のように消えていった。これぞファンタジー世界。


「えーと、えーと、えーと……」

 バーグさんが何か考えている。


「こうかな?漏電エレクトリック サージ!」


 彼女がそう叫ぶと、手の先から電撃が放たれた。連なる敵を一網打尽にして行った。おお、凄いスキルだ。しかし、名前はどうにかならなかったのか?


 そしてトリのキックと僕の炎弾と彼女の漏電で、囲んでいた敵を全部倒してしまった。


「いけますよ!カタリさん!」

「そうだね!」

「ピーッ!」


 そして、武器を手に入れた僕らは洞窟へ乗り込んだ。


 洞窟は鍾乳洞だった。空気が冷たく、雫がポタポタと落ちている。壁には灯りの松明がかけてあり、足元を照らし出していた。

 時々、さっきのモンスターの仲間が数匹出てきたが、武器を手に入れた僕らの敵では無かった。

 

 しばらく進むと、数分歩いた所で洞窟が二手に分かれていた。右が狭い洞窟、左が広い洞窟になっている。


「どっちかな?」

「そうですねー、こういう時は何か手がかりを探せばいいらしいですよ」

「手がかりね……」


 地面を探る。足跡はどちらにも続いている。これは分からない。


「これは難しいな……そうだ!トリなら分かるかもしれない」

「え?分かるんですかー?」

「多分、さっきの『至高の一篇』の存在を感知したぐらいだから、本の気配みたいなものを感じるんじゃないかな?トリ、教えて!」


 そう言ってトリを放すと、トリは躊躇せずに右の洞窟の中へ飛んだ。

「こっちか!」


 ゴン。


 洞窟の入り口を塞ぐ一枚岩が上から落ちてきた。入り口は塞がれてしまった。


「あ」

「あー!行けなくなっちゃいましたよー!トリさーん!大丈夫ー?」


 中からピーピーと声がする。大丈夫そうだ。周りを調べてみたが、岩をどかすような仕組みは見当たらなかった。


「どうしようか?」

「そうですねー、こういう時は奥にスイッチがあるかもしれませんねー」


 どうしようもないので、トリにそこに居るように告げて、奥へと進んだ。

 奥へ進んでみたが、スイッチらしきものは見当たらなかった。しょうがない、トリにはしばらくあそこに居て貰おう。


 さらに奥へ進むと、大広間があった。松明があちこちに置かれ、中の空間を照らし出している。

 奥に台座と椅子があり、ジャラジャラとした衣装をまとった太った魔法使いが座っている。その手にはさっきの『至高の一篇』。多分、魔導書の一種だと思っているのだろう。周りには数十匹の手下がいる。


「どうしましょうかー?」

「どうするったって、策は……何かある?」

「無いです!(ニッコリ)」

「僕も無いよ……」

「さっきのスキルあるし、いけるんじゃないですかねー。計算上は行けそうな気がしますよ」

「うーん、とりあえず行ってみるか」


 ズカズカと中へ乗り込む。こちらを見る敵。立ち止まり叫ぶ。


「本を返して貰おうか!」


 当然のごとくワラワラと手下が群がってきた。


超漏電スーパー エレクトリック サージ!」


 バーグさんがそう叫ぶと、さっきの数倍はありそうな電撃が敵の集団を襲った。次々と倒れていく敵。

 それを見ていた太った魔法使いは手をスッとかざした。どこかから轟いてくる重低音。

 上を見上げると、赤熱した隕石が出現し始めていた。まずそうな予感……。


「バーグさん!こっち!」

 バーグさんの手を引いて一旦大広間から退く。後ろでは上から落ちてきた隕石がドンドンと落ちて破裂して行った。

 

「何か凄いのきちゃいましたねー」

「強いね」


 作戦を練る。あの魔法は広い空間でないと出来なさそうな気がする。なので、奴をおびき出して倒すのはどうだろうか?幸いさっきの超漏電スーパー エレクトリック サージで、手下はあらかた倒れたようだから、出来ると思う。問題はどうやっておびき出すか……。僕はバーグさんにある作戦を耳打ちした。


「イヤですよー!AIだって恥ずかしいんですからねー!」

「そこを何とか……」


 バーグさんに頼んで、広間の入り口で腰をふりふり踊ってもらった。スカートがひらひらしている。とりあえず待機っと。


 案の定、中から太った魔法使いが出てきた。知能はあまり無いらしい。


炎弾ファイアボール!」

 

 すかさず炎の弾を次々と浴びせかける。バーグさんも続く。


「えーい!漏電エレクトリック サージ!」


 しかし、どちらも全然効かなかった。これはピンチなのかもしれない。


「どうしましょう?」

「えーと、えーと……」


 その時、上の通風孔からガサガサと音がした。そして何かが飛び出し、太った魔法使いの首飾りの宝石に突撃した。宝石はパリンと割れて弾け、そのまま魔法使いは消えた。後には「至高の一篇」がポトリと落ちた。


「ピーッ」


 トリだった。師匠、ありがとうございます。

 そして僕らは再び「至高の一篇」を手に入れたのだった。


「これが『至高の一篇』なんですねー!何が書いてあるんですかねー?」

「み、見てみましょう!」

 声が上ずる。


 パラパラとめくる。……何も書いて無かった。

「何で?え?どうして?なんでーっ!」

 思わず叫んだ。


 チュンチュン。賢明なる読者諸氏には既にお分かりでしょうが、僕はそこで目覚めたのです。

「なんでー!……って、あれ?」

 いつもの部屋、いつもの朝。側に置いた鞄の中ではトリがスピスピ寝ていた。

 朝の空気が冷たかったー。

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