スタート!

温媹マユ

スタート!

「あ~書けない、書けない! 何も思い浮かばない!」

 頭を抱えてのたうち回る。

「最後は少女の病気が治って、二人はむずばれる。最後は決まってるんだけどな……私ってどうしてこんなに文才がないのかなぁ」

 パソコンを前に頭を抱えるうさぴょん。もちろん本名ではなくここでの作者名。


 そんなうさぴょんを、どこからか眺める男女と一羽。カタリ、バーグさん、トリ。


彼女がいま眺めているのは『ここは、誰でも自由なスタイルで物語を書くことができ、いつでも、たくさんの物語を読むことができ、お気に入りの物語を他の人に伝えることができる。そんな「場所」』と書かれた小説投稿サイト、カクヨム。


 彼女は創作活動に想いを綴っている。

 でも、思うように書けない様子。結末だけが決まっていて、あらすじや展開が全く決まっていないようだ。

「このままじゃ締め切りに間に合わないよ」


 彼らの使命は物語を導き、伝えていくこと。


『聞かせてよ、君の物語を』

 男は左目の能力でうさぴょんの心の中から物語を導き出す。

「う~ん、あ、いいこと思いついた! 少女は生まれつき病気で、少年も怪我で入院していた、そこが出会い。そして……」

 ハッと表情が明るくなる。

「書ける、書ける! どんどん書ける!」

 キーボードを打つ手が、軽快なリズムを奏でる。


 もう安心。今日も一人、心の奥にある物語の芽を咲かせた。



「これって、昨日見たアニメそのまんま……」

 スマホを手に、固まる少年、アニメ大好き大魔王。

 この少年もカクヨムに登録する一人。

「ひねりもなければ、新しさもないよな」

 ベッドの上に大の字になって天井を仰ぐ。


 ここにも居た、悩める少年。

 そしてここにも居た、眺める男女と一羽。


『良く書けてますね! 下手なりに!』

 アニメ大好き大魔王の心の奥に直接語りかける。


「あっ!」


 少年は急にベッドから飛び起き、もう一度スマホを見つめる。

「読み返してみると、この辺りが新しくて意外に面白いかも。それじゃここをこうすれば……」

 スマホをタップする指が画面を舞う。


 もう安心。また一人、心の奥にある物語の芽を咲かせた。



 物語を綴ろうとする作者の近くにいつも彼らはいる。

 書きたい気持ちがあれば、いつでも彼らは助けてくれる。

 だから心配することはない。

 思うがままに手を動かせばいい。

 そうすれば、想いは花開く。

『大丈夫!』


 男女と一羽は一人の作者を眺めていた。

 その作者はパソコンに向かってコメントを書いている。

 いつしか一緒に物語を紡いだ作者。

 そしてたくさんの応援もここに運んできた。

 次はここからこの作者の想いを伝えよう。

 

「とりとめのないこんな私のお話にも関わらず、最後まで読んでくださってありがとうございました。

いつもたくさんの応援、そして温かいコメントありがとうございます。

心から皆さんに感謝しています。


気持ちよく書けるときもあれば、思うように行かないときもありました。

そんなとき、今までいただいた温かいコメントを思い出し、それを励みにがんばってきました。


読んでもらえるかな伝わるかな、といざ投稿するときになっても不安いっぱいでした。

そんな不安も自信に変わる、激励のコメントに助けられました。


この感謝の気持ち、少しずつお返しをしていきたい。

この先も皆さんとともに楽しいカクヨム人生を歩んでいけますように」

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