三度目

 飽きもせず貴方は忍の元へ訪れる。

 前足の指では呪われたかのように、文字を目で追った。

 忍の姿を想像することでしか、貴方は忍を見ることは出来ない。


「まだ、知りたい?」

 忍は上機嫌である。

 貴方が知らない間に、忍は血濡れた姿になっていた。

 以前と違って、忍にはもう人の形を捨てて何処かで目にしたことのある形をしていた。


「とっておき。蠱毒ってのはどう?」

 炎を消して闇夜に残った赤は一つ。

「今夜は時間が無い。こちとらも、暇じゃないんでね。」


 共喰いさせて残った毒を拾い上げろ。

 忍はもう口を開く必要は無かった。

 けれどもわざとそこにいる。

 残った毒を呪詛を与える者に飲ませ、己の幸を受け取れ。

 忍が器を貴方の前に差し出す。

 これが蠱毒という者だと、暗黙で言う。


 貴方はそれを忍の前で飲み干した。

 それでも貴方は変わらない。

 忍の目が見開いて、喜んだ。

「読み干してくれてありがとさん。お代は次の時でいい。次にあんたが来ないなら、それでいい。」

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