あの日、私は私を呪った

隅田 天美

私は私を呪った

 今だって、あの日の夕焼けの色を覚えている。


 中学生時代の話だ。

 毎日虐められていた私に告白した男子がいた。

 嬉しかった。

 毎日、少しずつお洒落をしていろいろ気を付けた。

 だが、この幸福感はすぐに終焉を迎える。

 放送で私が保健室に呼ばれた。


 今だって、あの日の夕焼けを覚えている。

 オレンジ色の保健室に入ると告白した男子が泣いていた。

「ごめんなさい!!」

 私には理解できなかった。

「隅田さん、心をしっかり持って聞いて」

 保険医の先生が説明した。

 細かいところは忘れたが、どうも、『男子同士の悪ふざけ』で告白したらしい。

 その説明を聞いて、私は不思議と悲しくなかった。

 むしろ、『お前は誰からも愛されない』という諦念になった。

 全てが馬鹿々々しい様に思えた。

 おしゃれも止めた。

 

 愛という言葉を私は嫌悪するようになった。

 フェクション(空想)による愛ならば話を面白くする道具になるだろう。


 だが、現実の「愛」という奴は大抵「他人の弱点をあげつらって自己満足するための方便」「ないものねだり」「肉欲」ぐらいの低レベルのものだ。

 それが全くの不必要なものとは言わない。

 ただ、そこからあぶれた人間は誰にも助けを求められない。

 幸い、私は文章を書くことと良縁により何とか助けを求められるが、そうでないものは最悪暴走をする。

 自殺、殺人、万引き……


 恵まれている人は言う。

「何で助けを求めないの?」

 私の答え。

「それは自分を呪うことでしか自分を固持できないから」


 私の例。

 私に何もないことを知ったとき。

 私は自分を呪った。

 自分という汚物を他人に投げて嫌われるのが嫌だった。

 そうすれば殺される。

 私の精神は、常に綱の上にあった。


 だから、私は人が怖い。

 毎回、毎回、パニックになる。

 

 今でも思う。


 あの時。

 あのオレンジの保健室で「自分には価値がある」と思っていたら、私の運命はだいぶ変わったのかもしれない。



 そして、思う。

『今は、愛を語るものが多すぎる』

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あの日、私は私を呪った 隅田 天美 @sumida-amami

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