僕とリンドバーグさん
藤ノ宮コウジ
第1話
今日の教室はなんだかざわついている。
その理由は転校生がこのクラスにやって来るらしい。
だが、僕には関係のない話だ。
僕は人と会話するのが苦手でストレスがたまる。どうせ、その転校生とも一言も交わさずに今年度が終わり、高校2年生になるのだ。
教室の扉が開く音がした。
担任の先生に続いて入ってきたのは転校生だ。
「か、かわいい」
思わず口からもれた独り言。
しかし、僕だけではなくクラスメイト全員がそう言っていた。
外国人とのハーフで、綺麗な銀髪に、澄み渡った瞳。それに脚が長くモデルの様な体型だ。
名前は『リンドバーグ』。
日本語が苦手だと思ったが、日本には子どもの頃から住んでいるみたいで、
「リンドバーグさんはそこの窓際の席に」
先生が指さした席は僕の隣の席だった。
マジかよ! いきなり変なプレッシャーがかかるな。
リンドバーグさんはスタスタと歩いて来て椅子に座った。
こういう時、話しかけた方がいいのか?
そう思っていた矢先、彼女は鞄から本を取り出し読書を始めた。その本は僕の一番オススメだ。まあ、友達が少ない僕にとっては本を勧めたことは無いが。
「その本、面白いよな」
しまった! 思わず話し掛けてしまった。
「えっ!? ま、まだあまり読んでないから・・・」
彼女は僕が思った以上に動揺している。
まさか、僕と一緒で人と話すのが苦手なのか?
彼女の性格を勝手に詮索していると、周囲から視線を集めていることに気付く。
嫉妬の視線だ。
もっと話したかったが、彼女にも迷惑がかかる。
そう思い会話を一時中断させる。
その後も彼女とは会話の機会が無く、結局放課後のなり彼女は帰ってしまった。
僕の放課後の日課は図書室に寄って読書をする。
今日もその日課をこなすべく図書室に足を運んだ。
図書室の扉の前に挙動不審な動きをしている人がいた。
しかし、その人は
「リンドバーグさん?」
「は、はい!」
「どうしたの?」
「図書室に入りたいのですが、少し緊張してしまって」
リンドバーグさん、その気持ちすごい分かる。僕だって高校生になって初めて図書室を利用する時は緊張した。
僕は心の中で何度もうなずいた。
「じゃあ、一緒に入る?」
「えっ!? 良いんですか?」
「もちろん」
そう言って図書室の扉を開ける。。
図書室にいつもいるおばちゃんに挨拶して、僕は『来場者数アンケート』の用紙に自分のクラスのマスに2つ印を付けた。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
そして僕は彼女に図書室の案内をすることにした。
「あ、この本長谷部くんは読んだことありますか?」
リンドバーグさんは目を輝かせながら聞いてきた。
「うん、あるよ。ラストがけっこう衝撃的だったよね」
「ですよね。風景描写もキレイでした」
彼女との会話を弾ましているとあっという間に閉館時間になった。
「今日はありがとうございました」
「うん、僕も今日楽しかったよ。じゃあまた明日」
そう言って僕は帰路についた。
翌日。
今日もリンドバーグさんは周りからの質問攻めで、会話出来なかったが放課後は昨日のように一緒に会話をする。
こんな放課後が毎日のように続いた。
僕にある感情が生れる。
それは恋愛感情だろう。
今まで一度もなかった感情だ。
結局、想いを隠したまま3ヶ月が経ち、遂に1年生で最後の図書室を利用する日がやってきた。この日はリンドバーグさんに告白すると決めた日でもある。それに明日は修了式で図書室は開館されない。
いつも通り一緒に入り、一緒に面白そうな本を探す。
「今日はこの本を読みます」
「じゃあ、僕はこの本を」
お互い向かい合って椅子に座る。
全く読書に集中できない。告白のことが頭の中を占領していく。
しかし、迷っていてはいけない。
そう決心して口を開く。
「あの!」
「あの!」
えっ!? リンドバーグさんは僕と同時に言葉を放った。
僕は気を取り直して、
「な、何?」
「あの、長谷部くんのことが好きでした。わ、わたしと付き合ってください!」
彼女の言葉に、僕は思考が追いつかない。
まさかリンドバーグさんも僕と同じことを想っていたということなのか!?。
僕が自問自答をしていると彼女は言葉を続けた。
「長谷部くんと話していてあることに気付いたの。それは人との会話が楽しいと思ったこと・・・」
「それは僕も一緒だよ」
この言葉は嘘偽りのない言葉。
僕もリンドバーグさんと話していてとても楽しかった。
「それを長谷部くんが気付かせてくれたの。だからわたしの、か、彼氏になってくれませんか?」
「うん! もちろん」
2年生になりリンドバーグさんとは違うクラスになった。
たまに彼女を廊下で見かけるときはいつも楽しそうに友人と話している。
僕とリンドバーグさん 藤ノ宮コウジ @EtouTakeaki
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