航海の道

歩く、歩く。

僕は一本の道を歩いている。

やがて、小さな水溜まりの公園に辿り着く。


僕は水面に踏み込む。

揺らぐことの無い水面は、キラキラとした世界を写す鏡のよう。

足元を覗くと、小さい頃の友達が、僕と遊んでいる。

僕はその公園を後にする。


そして、また一本の道を歩き始める。

すると、溜池の広場に辿り着く。


僕は水面に踏み込む。

幾つもの波紋が衝突する水面は、始まりの宇宙を見ているよう。

足元を覗くと、昔の友人と僕が、楽しそうに話している。

僕はその広場を後にする。


僕は、長い長い一本道を歩き続ける。

そして、大荒の大海に辿り着く。

踏み込もうとすると、白波に足をすくわれた。

深い深い水の中に落ちていく。


すると、喫茶店が見えてくる。

中では、彼女が待っていた。

僕はコーヒーを飲んで、彼女と話す。

彼女は笑顔だ、彼女の声は聴こえない。

時間だよ、と彼女が時計を指差す。


気が付くと、僕は水面に立っている。

足元を覗いても、もう何も見えない。

さざ波に足を取られないよう、歩いていく。

この先の道は無い。

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青春ショートカット 戸間都 仁 @tomato_hitoshi

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