AIのキモチ

@harutuki_1108

AIのキモチ

20xx年、世界では大きなAIブームとなっていた。

コンビニの店員、ファストフード店の店員、交番のお巡りさん、駄菓子屋のおばちゃん、色々なものが機械化して行き、いずれ人類は衰退するのではないかともいわれている。

最近では一部のクリエイターも完全機械化し、クリエイターの9割以上がAIを使ってる。

そのせいで、その作者の個性や面白みが無くなったりしているのだが……

僕自身も小説家なので馬鹿にはできない。

僕の基本的なジャンルはローファンタジー、近代未来などだ。

この趣味もかれこれ3年も続けているが、全く売れないばかりだ。

そして、今年の正月に、小説が上手くなる!という理由で呼んだのが「リンドバーグ」と呼ばれるお手伝いAIだ。

最初は可愛くて、仕事も手伝ってくれるので溺愛していたのだが、一緒に居ること2ヶ月でそのAIは本性を表してきた。

僕が出来たばかりの小説をバーグさん(本人がそう呼んでくれと言った)に見せると、

「作者様!良く書けてますね!下手なりに!」とか、少し更新日が遅れたら 「え? 今日は更新しないのですか? 毎日更新するって言ったのに?  いや、まぁ... ...。別に私はいいと思いますよ。はい」など、滅茶苦茶イラつく口調で褒めているのか貶しているのか分からないことを言ってくる。

今日なんて──

「なあなあ、バーグさん、ここどう思う?」

「どれどれ?バーグさんが見てあげましょう!これですか?」

──するとその女の子の服が弾け、女の子は全裸になった──

「どうしてここで女の子が全裸になるんですか? え? 書き直す?別に書き直せなんて言ってません。どうしてなのか教えてください」なんて言い始めた。

僕は戸惑いながら考える。

(いくら何でも読者ウケがいいからとかは言えんだろ……)

「ねえ?どうしてなんですか?早く答えてください」

僕はしつこく迫られて、とうとうキレてしまった。

「うるっさいなあ、黙ってろよ、AIの癖に」

僕がそう言うと、バーグさんはやがて悲しい目をしてこう言った。

「……分かりました」

バーグさんはそのまま隣の部屋に閉じこもった。

僕は、興奮状態が覚めてから、後悔した。

(バーグさんはあれでもぼくを精一杯支えてくれようとしてくれたのに…)

僕は、頭を冷やそうと、外へ出た。

特に目的地がある訳では無いが、用を思い出したので、店に寄ってから、友達ん家に向かった

「勝手に部屋に上がらせてもらうと、そこには少し太った男がパソコンに向かって小説を書いていた。

「よお、ひさしぶりだな」

「おお、ってか、勝手に入ってンじゃねえ!不法侵入者!」

「ごめんごめん、ずっと仕事してるなんて偉いなぁ」

「ってか、AIちゃんは気づかなかったのかよ!」

あいつ曰くAIちゃんは、TVに向かって格闘ゲームをアケコンでしていたが、それを置いて問いに答える。

「気づきましたが、ちょうど裏キャラ出してる所でしたので、無視しました」

「無視すんな!ってか裏キャラぐらい初期のうちに出しておけよ!」

「いえ、これは4なので、5はもう、裏キャラ出しました」

「ああ、そうですか!」

この小説を書いているデブは麦田 太志、名は体を表すという言葉が1番似合う男だ。

この、太志曰くAIちゃんはバーグさんと同じお手伝いAIだ。

本人はムーさんと呼んでくれと言っているらしいが、太志はAIちゃんと呼んでいる。

「あ、そうだ」

僕は右手に持っていた紙袋をわたした。

「これ、佐々木亭の羊羹と、AIちゃんが欲しがっていた昨日発売のカンドリーマームの抹茶アイス」

「お、いつもすまんねえ」

そう言い紙袋を受けとった。

AIちゃ──ムーさんは太志からアイスを受け取ると同時に、冷蔵庫へ向かいアイスを冷蔵庫に入れた。

ロボットってアイス食えるのか?そう思い、今日の本当の目的を思い出した。

「なあ太志、ちょっと良いか?」

「ここじゃダメか?」

「ああ、スマン」

太志はものすごいスピードでキーボードで打ち込み、キリがいいのか、パソコンを閉じた。

「ちょっと来てくれ」

僕は手招きしながら廊下に出た。

「ちょっと相談があるんだけど…」

そう言って、今日あった事を話した。

「なるほど、で、仲直りの方法をしえてくれと」

「いや、お前がどういう風にムーさんに接しているかなあと思って」

「そういうことか、どういう風にって言われても…お前のAI特別だからなあ」

「特別?」

「ああ、表情もよく変わるし、普通のAIじゃ、表情なんてほとんど変わらんぜ、お前のAI、喜怒哀楽もあるみたいだしな」

「喜怒哀楽?」

「ああ、お前から聞いた話じゃ、悲しい目をしたとか言うじゃないか、普通、そんなのねえぜ」

「ああ、確かに」

「だから、お前はもっとバーグさんを大切にしろって話だよ」

「分かった、ありがとう」

僕は、慌てて太志の家を出て、俺の家、いや、俺たちの家へ走った。

家に着き次第バーグさんの部屋に向かって話しかけた。

「ごめん、俺が悪かった──」

バーグさんからは反応は無かった、でも、続ける。

「俺は、お前がいっつもしてくれる事をお前が俺の事を邪魔しようとしてるんだと思った、でも違った、お前が居たからこそ出来た作品もあるし、心の支えにもなった、俺は気づいた、お前は、わざとああいう態度をとっているんじゃない、支えてくれようとして、

ただ、そういう表現が下手なだけなんだって──」

「だから、これからも手伝ってくれ──」

俺は本当に思っていることを言った。

すると、部屋の扉が開いてバーグさんは言った。

「仕方ありません、手伝ってあげます」

その声は、どこか嬉しそうだった。

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