成井露丸と沢本新のKACエピローグ 〜異世界転移でカタリとバーグさんにカクヨムおっさん二人が絡むだけの話〜
成井露丸と沢本新のKACエピローグ 〜異世界転移でカタリとバーグさんにカクヨムおっさん二人が絡むだけの話〜
成井露丸と沢本新のKACエピローグ 〜異世界転移でカタリとバーグさんにカクヨムおっさん二人が絡むだけの話〜
成井露丸
成井露丸と沢本新のKACエピローグ 〜異世界転移でカタリとバーグさんにカクヨムおっさん二人が絡むだけの話〜
気付いたら僕は異世界にいた!
僕は
突然、視界一杯に広がった草原。左遠方には中世ヨーロッパを思わせる城塞。そうか、異世界転移したんだ。そんな確信が胸に広がる。
僕はカクヨム作家だから、自分が異世界転移したとき、それに気付くことが出来る。カクヨム作家とは選ばれし民。リーディング・シュタイナーみたいなもんやで。
しかし、転移前、僕は何をしていた? ふと考える。
そう、KACという一週間に三本も短編を書かせる頭のおかしいイベントに参加していた。丁度、今日、KAC9『(続)一番、大好きな人。 』を投稿し終えたところだった。そして、昼に新しいお題の発表が――
――うっ! 思い出せない! 発表されたKAC10のお題が思い出せないッ!
懸命に思い出そうとしても思い出せなかった。思い出そうとすればするほど股間が刺激される感じがするのだ。これは危険。
やがて、僕は思い出すことを諦めて、視線を上げた。
すると、斜め前に、一組の若い男女が立っていることに気付いた。
ライトグリーンのスカートを穿いた可愛らしい女の子。そして、ブラウンの薄手のジャケットを腰で結び、肩から斜めにバッグを掛けた男の子。
――ん? この二人、カクヨムのトップページで見たことがあるぞ?
二人に気付いた僕に、男の子はニッコリと微笑んだ。
「はじめまして。成井露丸さん。この世界にようこそ! 僕の名前は――」
そうやって、男の子が右手を差し出し、愚にもつかない自己紹介を始めようとした、その瞬間――
――ズババババァァーーーーンッ!
突如、前方に光の柱が現れた!
天から地面へと突き刺さった閃光は、やがて収束する。
そして、その場所には一人の男の姿が残っていた。
二十メートルほど前方、紺のスーツに赤いネクタイをつけた男性――
「沢本さんッ!
それは、カクヨム作家の
KAC1のお題「切り札はフクロウ」で『空から降る一億の梟』を執筆し、編集部賞を得て真顔になっていた沢本さんだった。そのあとの某レビュー記事で、「こんなん、中学生でかけるだろ」とこき下ろされて、ショボーンとなっていた沢本さんだった。
「あれ? 成井さん、何やってんすか? てか……ここどこっすか?」
沢本さんは、キョトンとした顔で左右を見渡す。
「あれ? これ、異世界転移じゃないっすか?」
困ったなぁ、と後頭部をポリポリと掻く沢本さん。
「さすがっすね。異世界転移って一発で分かるんすね〜。さすが、沢本さん!」
そう言うと、「いやいや、いやいや」と、サラリーマンらしい腰の低さで、沢本さんは両手を振る。
「人生的には成井さんの方が先輩っすから。ほんっと」
そして、立ち話を始めた僕ら二人。オフ会楽しい。
そんな中、白いブラウスの女の子が「あのぉ〜」と申し訳なさそうに声を出す。
――そうだ! 大切なことを忘れていた!
僕は沢本さんの方に向き直る。
「沢本さん、仕事大丈夫なんすか? 最近、残業続きでしたし……」
「う〜ん。まぁ、そうなんですけど。今日は抜けても大丈夫だったと思います」
それなら良かった。本当に沢本さん、残業多くて、KAC6とKAC8なんて、ネタが日本企業の闇すぎて、この人、マジで心病み出してんじゃね? って思ったし。
「「あのぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜!」」
折角のオフ会を楽しんでいる僕らの横で、若者二人がなんだか構ってほしそうに叫んでいる。仕方ないので、僕らが二人に「な〜に?」と発言を促すと、彼らは自主的に自己紹介を始めた。
「僕の名前はカタリィ・ノヴェル。カタリって呼んでください。世界中の物語を救うという使命を帯びた『詠み人』なんです!」
「私はリンドバーグ。カクヨム作家の応援や支援を行うために生み出されたお手伝い
カタリは顔の前で両手の人差し指と親指を立てて、左右のカギ括弧の形を作ってみせた。
――あ、カクヨムのマークね。
バーグさんはタブレットを右手で掲げて、左手の指先で画面を指してみせる。
――あ、カクヨムのサイトを開いてるのね。
自己紹介を終えたカタリが、また僕らに語りかける。
「実は、KACの
どう? ワクワクするでしょう? とでも言いたげな、少年の瞳。
ん? 良いと思うよ?
「あ、そうだ、沢本さん、KACお疲れさまです。キツかったですね〜」
「成井さんも、お疲れ様です。社会人にはキツいスケジュールでしたよねぇ」
「ホントですね〜。お題のタイプも安定しなかったし」
「でも、まぁ、それなりに楽しかったですけどね」
そうやって、カクヨム作家同士、盛り上がる僕ら。
「すみません! 私たちを会話のループから外さないで下さい! 全然話が前に進まないので〜!」
そう言って、頬をぷくぅと膨らませる、バーグさん。
おお、いい顔だ。僕の
分かった。話を聞こうじゃないか。
僕らが聞く耳を持ったことを確認すると、カタリが続きを語り始めた、
「お二人には、必ず、KAC10にも参加していただいて、良い作品を書いていただきたいんです! それが今回、お二人を僕らの世界にお招きした理由なんです!」
そう語るカタリの瞳は、真剣そのものだった。
「じゃ……じゃあ。KAC10のお題っていうのは?」
ゴクリと唾を飲み込む沢本さん。
カタリとバーグさんは大きく頷いた。
「「KAC10のお題は、僕たち――『カタリ』or『バーグさん』なんです!」」
二人が見事なユニゾンで放った言葉が、僕の
――ァァァッッッ! 僕、君らのキャラなんて全然知らないッッ!
さっき自己紹介してもらったけれど、全然、ネタ元として足りない。
困惑する僕らを見て、カタリは一つ真剣な表情で頷いた。
「だから、せめて、もう一つ、お二人に僕の特徴をお教えしましょう。――実は僕、『詠み人』なのに活字はあまり得意じゃないんです。アニメが好きなんですよね!」
そう少し照れくさそうに告白をするカタリの顔を、バーグさんは「うふふ、仕方ない人ね」と覗き込んだ。カタリが「やめろよ」なんて言ってじゃれ合っている。
リア充爆発しろ。
「そうか。カタリはアニメ好きで、パートナーがリンドバーグ。そうなると、これはもう間違いなく『Magical Dreamer』だな」
「え?」
僕の言葉にカタリは「何のことか分からない」という表情を浮かべた。
「え? リンドバーグの曲で、アニメシリーズ『ヤダ◯ン』(92年〜93年に放送)の主題歌じゃないか! まさか、アニメ好きなのに『ヤダ◯ン』知らないの?」
「成井さん! だめです! 圧を押さえて! それはジェネレーションギャップですよ! 彼らは、きっと、遡れてもエヴァまでなんですっ!」
僕が全身から放つ
僕が放ち始めた
「すまない。つい、KAC10を書かねばならないプレッシャーが、僕の
バーグさんとカタリは正常化した大気中の
「成井さん。やっぱり、KAC10まで本気で行くんですね!」
「もちろんですよ、沢本さん。あなたには負けられない。僕らは
気付けば、空は雲ひとつ無く、春の陽光が、握手を交わす二人のカクヨム作家を照らしていた。まさに、カクヨム日和である。
そんな僕らのことを、カタリとバーグさんも目を細めて見つめていた。
しかし! その瞬間だった!
遠くから物凄い勢いで何かが飛来してくるのに、僕らは気付いた。
速度は明らかにマッハを超えている。
僕はその姿に見覚えがあった。
あいつはカクヨムのページのあらゆる場所に居る奴だ!
KACで、僕らに無茶なお題を振り続けてきた、奴だ!
「あれは……トリ! 切り札のフクロウ!」
弾かれるように僕は左腰の長剣を抜き放つ。
「逃げろ! カタリッ! バーグさんッ! ここは僕たちがッ!」
緊張が走る。
沢本さんは冷静に『
「――神よ空から降る雷を、今、我が手に与え給え……『
沢本さんの両手から、雷の束が放たれる。
しかし、それを浴びたトリは、その全てを
そんな僕たちにカタリが叫ぶ!
「違います! あのトリは敵じゃぁありません!」
僕らにはそんな彼の助言を気にする余裕は無かった。
僕はバーグさんに告げる。
「バーグさん、こうなったら隠れ設定発動だ! 君の本当の力を見せてくれ!」
僕は異世界転移の際に得たチートスキルを発動させる。
この世界に存在する全ての
「イエス! マイマスター!」
僕から放たれる
圧倒的な
「
まっすぐ放たれた閃光は、超音速で飛行したトリに衝突し、
爆発の衝撃が世界を揺るがし、それがファーストインパクトとなったのだ。
KACが終わるこの日、世界は新たに調律された。
――ピヨピヨ、ピヨピヨ
目覚まし時計の音がする。
どうやら僕は机の上で寝落ちしてしまっていたようだ。
「あ……あぁ、夢か」
目の前には僕の愛機のクロームブック。
開かれたカクヨムエディタには、知らない間に書き上がっていたKAC10の原稿があった。
あぁ、最高の目覚めだ!
超えてイクぜ、カクヨム三周年!
さらばだKAC! アディオスアミーゴ!
成井露丸と沢本新のKACエピローグ 〜異世界転移でカタリとバーグさんにカクヨムおっさん二人が絡むだけの話〜 成井露丸 @tsuyumaru_n
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