第4話 未来へ

病室に戻る。

先程の看護婦さんが、料理を運んでくれる。


病院の料理は不味いが、それは昔からだ。


「何かあったら、呼んでくださいね」

ナースコールを渡される。


声が独創的だ。

さすがに、大御所の声優になるだけはあるが、この時は知らないだろう。


単発でそろそろ、始める頃だが・・・


「看護婦さん」

「何ですか?」

「声が奇麗ですね」

「ありがとうございます」

心なしか、喜んでいるように見えた。


目を閉じる。

これからどうしよう・・・


まあ、明日考えよう・・・


疲れていたのか・・・

すぐに眠りについた・・・


目を開ける。


どのくらい眠っていたのかわからないが・・・

随分と長い間、眠っていたような・・・


「あっ、気付かれました」

「看護婦さん?」

「看護師です。今は男女雇用です」

怒られた。


昨日の看護師さんに似ている。

でも、ズボンをはいて、ナースキャップは被ってない。


「看護師さん」

「はい」

「今日は、いつですか?」

「随分、眠っておられましたよ。平成31年3月30日です。」

ということは、一週間ほど俺は眠っていたのか・・・


「看護師さん」

「何ですか?」

「失礼ですが、今日はあなたのお母さんのお誕生日では?」

看護師さんは驚いていた。


「どうしてそれを?」

「そして、あなたのお母さんは声優の・・・」

看護師さんはため息をついた。


「さすがに、昔からの母のファンですね。その通りです」

「どうして、俺を?」

「それは・・・」


すると、ドアの陰からひとりのおばさんが顔を出した。

「やあ、りゅうちゃん、具合はどう?」

「あっ、お久しぶりです。覚えていて・・・」

「もちろん。あなたには、応援してもらっているからね」


この声優さんが結婚したのは、知っているがプライベートな事は話していない。

まあ、当然だろう・・・


「それじゃ、私は席を外すね。お母さん、よろしく」

「ええ」


「夢、叶ったんだね」

「ええ、まあ」

「長かったね」

「はい。自分でも驚いています」


「でも、またここからだよ」


激励の言葉だった。

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過去への旅路 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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