第3話 子供の未来

「俺と同じ?」

どういうことだ?


「俺も、車にひかれたんだ。そして気がついたらここにいた」

「ここにと言う事は、この時代か?」

「ああ。正確には少し前だがな・・・」

栗田は笑う。


「しかし、よく医者になれたな」

「ああ、苦労したけどな・・・」

詳しくは訊かない方がいいだろう。


「でも、あの看護婦さんは・・・」

「お前も気がついたか・・・」

「ああ、そりゃな」

看護婦さん。


この時は、声優との2足のわらじをはいていた。

すぐに、声優に絞って、俺の時代では大声優になっている。


「顔が丸かったんだな」

「それを、言うな・・・」

久しぶりに談笑する。


「なあ、栗田」

「なんだ?」

「お前は、元の時代に戻りたいとは思わないのか?」

「ああ、全く」

「なぜだ?」

「この時代が、俺には合ってる」

そっか・・・


栗田に案内されて、屋上に出る。


「この時代は、まだ緑があったんだな」

でも、わずかの間に、ビルが立ち並ぶ。


栗田が戻りたくないと言う気持ちが、理解出来る。


「あっ、いたいた」

後から、子供に声をかけられる。

「どうした?」

「お兄ちゃん、未来から来たんでしょ?」

「誰に訊いた?」

「先生」

栗田の野郎・・・


「なあ、俺プロ野球選手になりたいんだけどなってる?」

「未来は知らない方がいい」

「構わないから、教えてくれよ」

「君の名前は?」

「俺?俺は・・・」

この名前はたしか・・・


「君は、文集に西武か中日に行きたいと書いてよね」

「何で知ってるの?」

「俺の時代に、取り上げられていたからな」

「じゃあ、俺・・・」

俺は頷いた。


「君は、プリ野球選手になれる。15年にわたり活躍する」

「ほんと?」

「ただ、今の君が希望している球団ではない」

「じゃあ、どこ?」

「この時代にはまだない球団だ」

これ以上は言えなかった。

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