13.水浴びしたい
「地図を開いたまま進めば道も間違えないわよね~」
特に誰かに聞かせてるわけじゃないけど声をだしながら歩く。べっ別に1人で不安だからとかじゃないからね?
『あるじ…よそみして魔物はどうするの?』
「魔物…んーでもあれはただのうさぎよね?」
ちょうど進もうとした先に1匹のうさぎがこちらをじっと見ている。普通にうさぎとかがいることにちょっとだけテンションが上がる。
「かわいい生き物はいいよね~」
『見た目に騙されてるっすよ?』
「…うさぎじゃないの?え…魔物??」
どう見てもただのかわいいうさぎにしか見えないんだけど…えーあのダンジョンにいた虫とかと同じなの??銀太よりも柔らかそうな毛をモフモフしたいのにーっ
『襲ってくるなら狩るしかないっすね』
かわいいのに…むーせめてこっちにこないでくれるといいなーってもしかしなくてもこう考えるのってフラグってやつ??だって…うさぎがこっちに向かってきてるんだもの!
「わわ…だめだよー」
両手をぶんぶん振り回しこないでーとやってみるんだけどそれは意味がなかったみたい。うさぎの跳躍はすごくて、あっという間に私の目の前へ。
ふわぁ~やっぱりかわいい…撫でたいよー!手をそっと前にだし触りたくてうずうずしてしまう~~
そんな私の手にうさぎが噛み付いてきた。痛い!直ぐにうさぎを銀太が体当たりをしたので私の手から離れた。あーあーあー血が…血がっ
うさぎは私の血の味を覚えたのか執拗に銀太を無視して私ににじりよろうとしている。さっきまでかわいく見えたのにこうなるともうかわいく見えない。うさぎ…なんて凶暴な!
『もー狩るからね?』
銀太がそう言うとうさぎに体当たりして前足で地面へと押し付けた。後は首に噛み付くとうさぎは動かなくなる…その様子をただ私はじっと眺める。だって…目の前に血まみれのうさぎが転がってるんだよ?どうすればいいの??ダンジョンでは倒した魔物とかは勝手に消えていたんだけど、うさぎは消えずにそこに転がってるんだもん…
「し…死んだの?」
『うん、これは食べるとおいしいんだよー』
食べるのー!?いやでもうさぎ…っていうか魔物だよね??銀太が目を輝かせこっち見てる…もしかしなくても食べやすいように私が処理しないといけないってこと?
「あのー銀太?私はお腹すいてないよ?」
『僕も今はいらないけど、後で食べるからしまっておいて?』
……まじで!食肉の解体…えーわからないよーっえーと魚とかだと…頭と内臓と骨を…でもこれは魚じゃないから血抜きとかもするんだよね…うう。
「銀太とりあえずしまっておく…ね?」
恐る恐る手を伸ばしうさぎをマジックバックにしまった。まだ温かいうさぎの体はさっきまで生きていたことを現していて私は少しだけ怖くなった。
さて、ちょっとうさぎに絡まれたけど目的地に向けて足を前へと進めよう。日も少し傾き始めたし少し急がなくては。それに気のせいかさっきうさぎに噛まれた場所がずきずきと痛い。血が出るほどの怪我だから痛いのはもちろんなんだけど、その痛みがどんどん酷くなってきてるんだよね…
でももう少し進むと川が見えてくる。そこで水浴びを済ませついでに傷口も洗えばきっと大丈夫。
少しふらつきながらも私は川辺についた。
「ううう~なんか疲れたよぉ~」
はぁ~でもこれでやっと水浴びが出来る。周りをキョロキョロと確認しながら木と茂みから近い場所で服を脱ぎ桶ですくった川の水を使い体を拭いていく少しだけ水が冷たいけど少しぼんやりとしている頭には丁度いい。でも結局拭くのが面倒になり直接川に入り込んだ。水の流れは緩やかで深さも膝上辺りなので水の流れに足を取られることもない。
「…とそうだ傷口を洗わないと…げ。」
傷口を見ると色が変わっていて気持ち悪い。噛まれた傷ってこんな紫色になるものなの??流石にもう血は止まってるけど見た目が不気味だ。その傷口を丁寧に洗うと体を拭いて服を着込んだ。
後は帰るだけなんだけど…なんか少し目が回ってきたみたい。もしかしてうさぎに噛まれたのやばかったの??
でもだめだぁー考えがまとまんない…足元はふらつくし目は回る。体はだるくて今歩いてるんだか座ってるんだかもわかんない。
「銀太ぁ~も、だめ…」
☆
☆
☆
気がついたら薄暗いところに私はいた。ここはどこなのかな…?体もだるいしちょっと痛い。今動かせる範囲で目を動かし状況を確認してみるけど、いまいちわからない。だるい体をゆっくりと起こし、どうにか座り込んだ。
あー…私あのまま寝込んだのか。目に入る景色は大分暗くてわかりにくいけどすぐ傍に川が流れている音が聞こえ、少し離れたところに街のえーとなんていうんだっけ、まあ街の壁が見える。
今どのくらいの時間なのかわからないけど流石にこんなくらくちゃ門も開いていないよね…ずっと開いてるなんてことはないだろうし。朝までは後どのくらいなのかな…ん?私の手首になんかまきついている。触ってみると植物みたいな感触。
『あ、それはずしちゃだめだよー』
銀太が傍にいた。嬉しくてつい銀太を引き寄せギューっと抱きしめた。もふもふ~あったかーい、そしてなごむー!
『く、くるしいよ!!』
「ねえ銀太この草はなに?」
『んーよくわかんないけど、怪我したときとかよくおかあさんが巻きつけてくれたんだ~』
そーいえば…目が回るのが収まっているね。マジマジと手首に巻かれた草を眺める。そうだ、鑑定すればいいじゃないっ
リフレ草:毒を消す効果がある薬草で少しだけ体力も回復出来る。
薬にして塗るか、飲用する。
あ…これってギルドで貼ってあった依頼の薬草。毒状態を治す薬の材料だったんだ…葉っぱのままでも効果あるんだ…というか私もしかして毒状態になってたってこと!?そっちのが驚きだよっ
キョロキョロと周りを見ると同じものがまだいくつか生えていた。その1つを毟り取りそのままかじってみる。
「うわ~…にがい…」
飲用ってあるから食べてみたんだけど流石にこのままって意味じゃなさそう…まあ折角だから集めておこう、ギルドに出せば少しお金になるし。
さて…それよりも門があくまでどうしようかな。まだ体は少しだるいしきっと毒が抜けきっていないんだよね…寝ておこうかな、でもこんなとこで寝てたら不審者だよね?せめてテントとか持ってたらまだましなんだろうけど、これからも使うかわからないものは買う余裕はないな~
あーだめ…眠くなってきちゃったよ。
「銀太…私寝るから何かあったら…起こし、て?」
『あるじは困った人だな…ねえ?』
『んー?ごめん寝てたよ~』
銀太を抱き枕に私はうつらうつらと眠りに落ちていった。2匹の会話が遠くで聞こえているけど、疲れた体は眠気には勝てなかった。それに銀太のぬくもりがプラスされたらもうだめでしょう…だけどこの気持ちよさはそんなに続かなかった。どのくらいの時間がたったのかはわからないんだけど、地面に伝わってくる耳障りな音が響いてうるさくて眠れない。その音がどんどんと大きくなってきてとうとう私は飛び起きてしまった。
「うるさぁ~~いっこんなにうるさくちゃ眠れないよ!!」
体を起こすとさっきよりも体が軽くなっていた。リフレ草をかじったのも効果があったのかもしれないね、ラッキーじゃなくて、うるさい原因は何?
キョロキョロと周りを見ると見上げた位置に馬の顔が…馬って下から見ると怖いね!!
「行き倒れか…」
「大方門が閉まって入れなくなっていた冒険者でしょう。」
「なるほど。」
…誰?人の頭の上ですき放題言わないで欲しいんだけど、でも今門がどうとか言ってたよね。気がついたら大分外も明るくなってきてるしもう街の中に入れるのかなっ
そうとなったらこんなところで転がっている必要もない。さっさと帰ろう。私は立ち上がって服の汚れを払い落としノビをした。
「銀太、ライム帰るよ。」
『帰るのはいいけど…この人たちはいいの?』
いいもなにも知らない人だもん。勝手に会話してただけみたいだし私話しかけられてないから気にしないでいいと思うんだよね。
「ほら早くっ」
2匹をせかしつつもチラリをその人たちを見る。立派な?装飾をつけた馬にまたがっていていかにもお金持ってそうな感じ。出来たらあまりかかわりたくないタイプだね。気のせいかこっちをじっと見てるし早く立ち去ったほうがよさそう。
☆
☆
☆
さて、つい逃げるように街の中へ帰ってきたけれども今ってどのくらいの時間なんだろう。今日昨日いった『銀郎』が利用している宿に行くことにはなっているけれど、時間の指定はなかった。そもそも時間とかがどうなっているのかよくわからない。今はまだ明るいからそれほど朝になってから時間はたっていないと思いたいところ。
「あ…っ」
私のお腹が鳴った。どうやらお腹がすぐ位の時間だということだけは理解できたよ!これは1度教会に戻ってからまずはご飯だね。ご飯…あーあのウサギはどうしたらいいんだろうか…はっきり言って私には無理すぎるよっ
教会の扉を開けて中へと入り自分の部屋へと進む。ベッドに座りスマホを取り出す。さて、何を食べようかな…?昨日貰ったお金があるからお金は問題ないし、これからのことを考えると貯める分のお金も必要なんだよね。
「んー…」
そういえばライムって何を食べるんだろうか…ダンジョンの中ではとりあえずあるものを食べさせたけれど、本人に聞いたほうがいいのかしら?
「ねえライムって何食べるの」
『なんでもー!!』
なんでもときましたかっこれはまいったね。食べれるけど好きなものと嫌いなものはあると思うんだよね。現に銀太とか肉は喜ぶけど他はいやいや食べてる感じがするもん。色々食べさせてみて探してみるしかないかな。
銀太にはちょっと安めのお肉と野菜を少し。私はおにぎりが3個で銅貨2枚だったからこれにしておいた。まあ3個はいらないので1つはライムに。それとカットされたフルーツを銅貨1枚で購入した。これももちろんライムと分けて食べた。
「食べ終わったしそろそろ行こうか。えーと…なんとか亭へ」
『月明かりの雫亭、だよあるじ…』
「あーうん、そんな名前だったきがする。銀太は賢いねっ」
といいつつ銀太を撫でまわす。このふわふわ具合がたまらない。子供のうちだけかもしれないからね毛が柔らかいの。今のうちにしっかりと堪能しておかなければっ
『あーおねーちゃんライムも~』
ぽよんと跳ねたライムが私の胸へと飛び込んできた。この少しだけひんやりとしていて柔らかいのもなかなかいいものでもちろん私はライムもしっかり撫でまわしておいた。ひとしきり2匹と戯れた後私は『月明かりの雫亭』へと向かうのだった。
異世界とか魔法とか魔物とかいわれてもこまる れのひと @renohito
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