12.ちょっと帰るの早すぎじゃないですか?

「ナナミ起きてっ」

「うぅ~ん…後もう少しだけ待ってぇ…」

『おね~ちゃんよばれてるよ~』

「う~…おはようライム…」

「あるじはねぼすけだな。」


 うるさい銀太、ゆうべ途中でおきちゃったせいなんだからね!

 眠い目を擦りながら寝袋から這い出すとすでにみんな起きていた。どうやら私が起きないと食事が出来ないから起こされたみたい。


「食事をしながらでいいから聞いてくれ。」


 食事を始めたところでリックがみんなのほうに視線を向ける。


「昨夜連絡があって今日の予定は変更だ。奥へ進まず地上へ帰還することになる。」


 誰もがその言葉に頷いている。あ、私を除いてだけどね。連絡って誰からなんだろう…まあよくわからないけど帰らないといけなくなったみたい。


 食事を終えたら帰るみたいだけど、どうやって帰るのだろう。あの来たときに利用した転送部屋ってところからまた帰れるのかな??


 身支度を整えると私は声を掛けられるまで銀太をもふもふともふる。少しだけ嫌がっている気もしないでもないけど、尻尾が動いているから実は嫌がっていないと見た!むしろ喜んでるんじゃない?銀太をかまいつつ待っているとどうやら話とかきりがついたみたいでこちらをみんなが見ている。


「ナナミン帰るからこっちきてね~」


 手を振りながらパメラさんが呼んでいる。ライムを抱え上げとことこと歩いてパメラさんのところへ近づくと、足元に1枚の布がひかれていた。


「なんですかこれ?」


 その布にはなにやら不思議な模様や文字が並んでいて、その上にパメラさん以外が立っている。


「ダンジョンから出るのに使う魔法陣だよ~」

「ふぅん…」


 魔法陣…ねぇ…なんか変な落書きみたい。仕組みはわからないけどこれを使うとここから出れるってことらしい。不思議。


「さあナナミンもちゃっちゃと乗っちゃって!」

「パメラさんは乗らないんですか?」

「私はみんなを送ってから最後だよっ魔法陣の端を掴んでちゃんとお持ち帰りしないといけないの。使い捨てとかもったいなくて出来ないよ!」


 ………再利用出来るんだこれ!


「私も乗るの後でいいですか?」

「…なんで?」

「えっだって初めて見るしちょっと外から見てみたいじゃないですか?」

「いいけど…出来るだけ早く乗ってよね?」


 許可をもらえたのでパメラさんの横に並んで魔法陣に乗っている3人を眺める。大人が3人変な模様の布の上でただ立っているだけ、うん…こっち側から見ると「お前ら何してるんだ?」みたいに見えてくるから不思議だね?


「じゃあ起動するよー!」


 パメラさんが杖を前に構えなにやら声が聞こえてくると、魔法陣と言っていた模様に少しづつ光りが灯る。見てても仕組みは全然理解できていないのだけど、たぶんそれが魔法と言われているものなんだろうと思っておいた。とりあえずその光りが増えていく様子が綺麗でただ私はじっと見つめるだけ。


「イルミネーションみたいね…」

「え…なにー?」

「光りが綺麗だねーっ」

「あーうん。見慣れちゃったらどうも思わないけどね~それよりそろそろナナミンも乗ってよ。維持するだけ消費が激しいんだからっ」


 魔法陣の光りばかり見ていて気がつかなかったけどもう3人はその場にいなかった。


「あ、そっか…これで帰るって事は帰った人はもうここにいないのね。」


 うん…なんとなくこの魔法陣というやつがなんなのか見えてきた。あれだよ…なんか不思議な道具。実際おもちゃとかでも仕組みを知らないものは不思議だもんねっ


「じゃあパメラさん先行ってまーす。」


 パメラさんに手を振り光りの中へと入っていくと、眩しくて何も見えなくなった後軽い浮遊感を感じた。



「ん…ここどこ?」


 目を開けると見知らぬ室内に立っていた。視線を動かし周りを見ると、ルシアさんアーシャさんリックがそれぞれ椅子やベッドに腰掛けている。足元にはさっき見たのと同じような魔法陣があり、じっと見てみるが光っていない。


「ナナミまずはそこから降りたほうがいいわよ?」

「へ?」


 アーシャさんが掛けた声は遅く、再び魔法陣が光ると私は次の瞬間何故か転げまわっていた。


「ウニャ~~ッッ!」

「へぶっ?!」


 目が回る~~~~っ気のせいかなんか声がした気がするんだけど一体なにーー??ゴロゴロ、ゴロゴロ…何か纏まりつく物と一緒にごろがる私…少ししたら止まった。何かにぶつかったみたい。


「いたたたた…もう毎回これだけは何とかして…はれ?やだナナミン巻き込んじゃったみたい。」

「……?」


 どうやら魔法陣を回収しながら戻ってきたパメラさんと一緒に私は転がっていたみたい。その布が私やパメラさんに纏わりついている。そしてパメラさんがどいてくれないと動けない状況。


「とりあえずおりてくださーい。」

「うう…ナナミンちょっとまって、アーシャ布はいで~」

「あいかわらず今回も豪快な回転だったな…」


 そのリックの発言でわかった。どうやらパメラさんは毎回魔法陣を回収するとこのように戻ってくるみたい。だからみんな離れたとこにいたんだね?

 アーシャさんが布をはいでくれるとやっとパメラさんがどいてくれて自由になれた。さりげなく銀太とライムは逃げていたみたいで被害にあっていなかった。私の行動が遅いのがいけないのかもだけどね!


「んじゃナナミは俺とギルドにアイテム売りに行くぞ。他は待機な。後で話しあるから。」

「ああそうか、このまま持っててもお金にはならないもんね。」


 しかも使い道のわからないものばかりだからなおさら持っていても仕方がない。リックと2人で冒険者ギルドにアイテムを売りに向かう。買い取り専用のカウンターとかがあるみたいで、そこに並んでしばらくを待つと私達の順番が回ってきた。


「ではこちらにお願いします。」

「ねえリック、どれを売るの?」

「あーそうだな…とりあえず魔石を15個残してそれ以外を全部出してくれ。」

「…全部?」


 スマホを取り出し今日回収したアイテムの一覧を表示するとそれをリックに見せる。


「これ全部ここに出せるかな?」

「む…あーじゃあまずこの一番多いマンティスのものからいくか。その後は残り全部だしてもいいかな。」


 うん…蟷螂のアイテム多いよね…卵のせいだねきっと。言われたとおり蟷螂の足とかをどんどん出していく。途中で出すのが面倒になったころ全部出し終えた。カウンターの上は半分くらい足とかで埋まっていてはっきり行って怖い。気のせいかここの職員さんの顔も引きつっているよ!


「で…ではこれが交換札です。」


 職員さんが交換札ってものをくれるとカウンターの上のものがすっと消えた。それに驚きじっと見ていると次を出せとリックに小突かれる。数が多いから出すのも大変なのに急がせなくてもいいじゃないっ…だしますけどね!


 面倒だったので次はそのまま鞄をひっくり返してみたら次々と出てきて…始めからこうすればよかったと思ったよほんと。問題なく思ったものだけ出てきて助かった!そしたらまた交換札渡されてアイテムが消えた。どうなってるのかが不思議。


「で、この交換札どうするの?」

「それはすぐ隣のカウンターに札の番号出るからそれが出たら、金額が決まったってことになるんだ。後はそこで交換するだけ。」


 ふぬん…まるで病院の薬の受け取り待ちみたい。そして1つわかったことがある。つまりこの待ち時間でここでお酒飲んでる人とかがいるってことなんだね~


「んじゃ俺達は今度はこっちな。」

「あれ?お金待つんじゃないの?」


 肩をつかまれ背後から押されるまま前へ進んでいく。ちょっと強引じゃない?せめて理由ぐらい教えてくれてもいいのにっ


「すんませ~ん。パーティの追加登録お願いします。」


 ん?パーティ?あー…なんか言ってたかも。登録とかいるのか…


「はい、では2人とも腕輪を出してください。『銀狼』ですね……登録完了しました。」


 腕輪の表面を眺めていても全然変化はない…ということはなにか内面で変化が起きたのかな、登録でなんか光ったし。早速情報を見てみよう。


《ステータスヲヒョウジシマス》



      名前:ナナミ

      年齢:17

      種族:人間族

      職業:テイマー

  冒険者ランク:10級

  所属パーティ:銀狼


      体力:E

      魔力:F


      筋力:F

     防御力:F

     生命力:B

     俊敏性:F

     器用さ:F

      知力:F

       運:C


    【スキル】『鑑定』


【ユニークスキル】『神通信』



 おおっパーティ名が登録されてる~


「じゃあ交換は俺がやっておくからナナミは帰っていいぞ~…とそういえばナナミはどこ住んでるんだ?もしなんだったら同じ宿にくるか?」

「あーとりあえずこの街を異動しない限り直ぐ近くだから大丈夫かな?」

「まあ何かあったら言ってくれ。後、一応明日宿のほうに顔を出してくれよな?」


 言うことを言い終えたのかリックはテーブルが並ぶほうへと異動していった。私はどうしようかなーと思ったんだけど、そういえば依頼って報告しないと報酬がでないんじゃないかな?依頼を受けた同じカウンターに行ってみればわかるよね。


「あのー依頼の報告?はここでいいですか??」


 空いていたカウンターで聞いてみるとあっていたよ。早速腕輪を差し出して報告完了。銀貨2枚が報酬だった。そういえば報酬金額をみてなかったね。リナに借りた銀貨10枚には全然足りないや…まあ直ぐにたまるわけないからしかたないね。


 ………明日こいって言われたけどそれまで何してようかな。んー…あーそうだっお風呂だよお風呂!教会に戻って自称神に頼んでみよーっと。冒険者ギルドを飛び出して急ぎ足で教会へ向かうと、周りの人に少し変な目で見られたけどきにしなーい。


「却下だ。」

「……へ?」


 教会へ飛び込んだ私はすぐに祈りを捧げたんだけど…目を開けたらいきなりだめだしされた。相変わらず何も言ってないのに反応するのはやめてほしいね。


「自分で購入し配置でもすればいいだろう。」

「お風呂なんて高くて買えないと思うんだけど…あと排水の関係とか?私じゃなんとも出来ないよー!」

「……む、明日南門を出よ。」


 この人は…全然話聞いてないねっまあいいけどね、スマホでなんとかするかー


「さて、吉と出るか凶と出るか…」


 最後よくわからないことを自称神が言ったところで教会に戻ってきてしまった。うーんお風呂欲しかったな~まあスマホ眺めてみますかね。


 ぽちぽちっと画面を切り替えながら欲しいものを探す。お風呂って…家電だっけ?家電家電…と。ん、多いなお風呂…値段は…高くて金貨数枚…でもずいぶん大きいみたい。一人でゆったり入れるサイズだと…この辺かな~



   名前:簡易浴室(小)

   効果:なし

付属スキル:自動洗浄、排水不要



 えーと排水しなくてよくて勝手に綺麗にしてくれるって事かな。しかも浴室ってことは部屋だよね…それが金貨1枚。しばらくがんばって依頼受けたら買える様になるかな…うん、なんとかなるかもっ


「でも…こんなの見たこともないよね…まあ便利だから気にしなくてもいっか。」


 最終的に家に帰れればもう後はどうでもいいし、まずは資金稼ぎと生活の確保が大事。そうと決まればとりあえず体拭くだけでもしたいし、どっか水場ないかな~んー周辺地図とかに載ってるかな?


《シュウヘンチズヲヒョウジシマス。》


 えーと…街の中とその周りが表示されている中で水場は…街の中にいくつか井戸とかあるみたいだけど、流石に人の通りが多いところでとか出来ないな~だとすると町の外?たしかに町の南、昨日行ったダンジョンのあった森より少し東のほうにあるみたいだけど…1人で行けるかな?


 チラリと足元を見ると銀太とライムがうろうろしているにが目に入る。あー一応1人ではないか。この子達ダンジョンでも活躍してたしね。うん、もふもふして気持ちいいね銀太…じゃなくて一緒に行くから大丈夫かな?そうと決まったら出かける支度ね。まあ何もないんだけど!


 銀太とライムを連れて教会を出ると南門へと向かうその途中にある冒険者ギルドに目が留まると、私は一度立ち寄ることにした。


「うーん…この辺かな?」


 やっぱり外に出るなら小銭稼ぎよね?壁に貼られている依頼書を眺めながら丁度よさそうなものを探す。薬草採取とかなら川周辺に生えてるものだってきっとあるものね?依頼内容の確認だけしてギルドを出ると、今度こそ南門から外へ出ることにした。

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