第12話 いつかの灯し火

灯台の灯りで煙草に火をつける

まるで灯台がチリチリと燃えるよう


灯台を吸い尽くしたら

波濤を彷徨う船たちも

みな底に攫われた悲しみも

どうやって帰ってくるのか

煙草の火をグルグルとまわして

沖に向かって叫び続ける


おぉぉぃ、

はやく、はやく、帰ってこぉい


あぁ、もう火が消える


やがて沖へ沖へと

朝が夜をひいてゆく

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目蓋の裏のみな底 帆場蔵人 @rocaroca

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