コンビニで募金する側とされる側との間で繰り広げられる、醜い偽善者という名の攻防

日本や外国で大規模災害が発生する。

そのたびに、コンビニのレジ前に、募金箱が設置される。

募金箱は透明になっていて、どれくらいのおカネが入っているかが、一目でわかる。

元コンビニ直営店店長である私の意見としては、そんなところで募金するのは止めた方がいい。

なぜなら、あのおカネの大半は、店長またはオーナーのポケットマネーとして消えていくからだ。

まぁ、私が働いていた頃とは違うのかもしれないけど、募金に関しては今も変わっていないように思える。

あの募金箱は、一定期間、設置される。

本部からの回収指示がきたときに撤去される。

あのおカネがどういう流れをたどるか……を説明すると、まず、いくら集まったかを数える。

小銭が多いので、軽くするために、札束に両替する。

そのおカネを本部の指示に従い回収する。

回収方法は、スーパーバイザーや本部社員に直接渡すケースや、銀行入金をするケースなどがある。


問題は、その過程の中で、おカネをいくら引っこ抜いても(盗んでも)、誰にも気づかれないという点だ。


例えば、15448円集まったとすると、両替・入金作業時に10000円を引っこ抜く。

そのほとんどが小銭のため、3分の2を引っこ抜いてもバレない。

5448円を募金の合計として回収または入金する。

回収指示が出たと同時に、『みなさまのあたたかいご支援で、当店では〇〇〇〇円が集まり、全額寄付させていただきました。ご協力ありがとうございました』という張り紙が本部から送られてくるので、その紙に、5448円と記入して、店内に貼っておけばいいだけである。

両替・入金作業はバックヤードでやるわけだし、ワンオペの時間帯が多いこの業界では、誰かにその作業を見られることはない。

絶対にバレることはないし、たとえバレたとしても立証は不可能である。


なぜ、こんな事案が発生するかというと……、一番の問題は、レジを通していないからである。

普通に仕事をしていても、レジ点検や清算時に過不足は発生する。

この仕事の経験者なら誰でもわかると思うけど、千円単位、万円単位でズレることも珍しくない。

原因を、あとから調査しても、不明のまま終わってしまうことが多い。

あれこれ対策を練ったところで、必ず、そういう事案は発生する。

レジを通しても、そうなってしまうのだ。

私の経験から、レジを通していないおカネなんて「盗んでください」と言っているようなものである。

募金もレジを通すことにして、募金した人に10円なり、100円なりのレシートを渡せば良いのである。

それならば過不足の指標ができるし、ズレていたら不正がバレる。

加えて、今は、私の時代と違って、オーナー店(FC)しかない。

私が大手コンビニの社員として直営店を任されていたのに対し、FC店は個人事業主である。

よほど良心的な人でない限り、そんなものを、全額、本部に渡すなんてあり得ない。

募金される側にはされる側の実情があって、それを知っておくべきである。


募金する側に関しては、もはや、言うまでもない。

日本人は自分さえ良ければ他人がどうなろうが知ったこっちゃない民族である。

恵まれた環境でヌクヌクと生きてきた被害妄想者と、不幸の背比べをして意地でも勝とうとしたがるクソガキしかいない。

自分が一番不幸だと思って生きている一人一人の日本人たちが、誰に向かって何をしたいのだろうか?

募金という言葉とは最も縁の無い民族が、何を考えているのか?と思えてしまう。

『良いことをした』という自分に酔いたいだけではないだろうか……。


そんな、募金する側と、される側の態様が、偽善者同士の醜い攻防として映ってしまう。

それは、日本人を象徴していると思う。

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