不意に夜景が目に飛び込むとき(羽田空港国内線ターミナルからの離陸)
あのとき……。
光で彩られた夜景を、上空から眺めながら……。
あれは展示会の帰りだった。
羽田空港の国内線ターミナルから飛行機に搭乗して、離陸を待っていた。
私は、左端の窓側の席に座った。
ベルトを締めて、すぐにでも寝る態勢に入っていた。
一日中、歩き回って、もう疲れていたからね。
小売業で、店長やエリアマネージャーなんていう役職に就いていた人なら、必ず行ったことがあると思うけど……。
展示会という名の見本市である。
私のいた業界は、毎年、東京で開催されていた。
本社や店に招待状が届くので、それを持って出席していた。
小売業なら、どの職種でも似たようなイベントはあると思う。
要するに、店で売っている商品のメーカーが、一堂に会して、それぞれブースを作り、新商品の案内や展示、陳列の提案などをしている。
メーカー担当者とは、その場で意見交換をする……といった感じ。
タバコのブースだけ、スタイル抜群のネエちゃんがバニーガールの格好をして、「一箱どうですか?」という感じで配っているだけだったけど……。
全部回ったら、ワンカートンくらい集まりそうだった。
いろんな人と名刺交換したり、面倒くさい会話をしていたら、さすがに疲れ果ててしまった。
不眠の私が睡魔に襲われた。
気が付いたら、もう離陸していて……。
ふと、窓の外に目がいった。
すると、どうだろう。
そこには光に彩られた東京の夜景が一面に広がっていた。
東京の夜を上空から眺めたのは、このときが初めてだったので、ちょっと新鮮だった。
今、この中にはたくさんの恋する人たちがいて、2人で笑っているんだなって、瞬時に思った。
生涯の孤独と東京の夜景が交錯すると、本当に切ないね……。
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