渇かないと乾かない

洗濯物が乾かなくなった。

夏は半日もたたないうちに乾くのに……。

秋は1日、天候によっては2日だ。

今(冬)は3~4日、雪が降ったら1週間乾かない。


まぁ、私自身には関係のない話だ。

なぜなら、私の心は季節に関係なく、30年以上前からずっと枯渇しているからね。

たったの一度も潤ったことが無い。

むしろ、ズブ濡れになりたいくらい……。


私とは真逆の潤った連中も、同じように洗濯物が乾かないのだろうか?

いや……、違うな。

奴らは乾燥機を使って、すぐに乾かしているはずだ。

そのあと、アイロンをかけて、綺麗にたたんで、衣類棚に収納しているのだろう。

送ってきた人生が違えば、当然、生活習慣も違う。


私は、家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで1回きりの人生を終えてしまった。

自暴自棄の果てに、見るも無残な生活習慣がここにある。

それなのに、なぜか洗濯だけは、ずっと続けているのだから不思議なもんだよ。

人と繋がっている人生だったら、こんなゴミが散乱するような部屋にはいないだろう。

心も潤っていただろう。


ここはアパートの一室だ。

部屋の中でしか、洗濯物を干すスペースがない。

ゴミやゴミ袋が散乱する床に座り、ボロボロに破れた乾かない洗濯物を見上げながら、失った人生と、残り死ぬまでの孤独な人生を想う。

濡れた衣類たちは、部屋にヒンヤリとした空気をもたらす。

私は、その空気を……、暖めることも温めることもできない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る