水たまりに映る醜い人間を殺したい

雨が止んだ。

依然、どんよりとした雨雲が覆っている。

平日の午前中、この公園に来る人はほとんどいない。

巨大な駐車場には数台しか止まっていない。

ある意味、見慣れた光景だ。

駐車場の一部には、直径3メートルほどの水たまりができている。

私は車から降りて、その前で立ち止まる。

水たまりには、人の姿が映っている。

ジッと数分間、そいつを眺めていた。


お前は誰だ?

なんて醜い人間なんだ……。

醜い……。

醜すぎる。

疲れ果てた顔……。

魅力のない顔……。

老けた童貞顔……。

なぜ、こんな奴がこの世に存在しているのか?

お前が俗にいう人間のクズか?

何というゴミなんだ。

どうして完璧な人間に生まれて、完璧な人生を送れなかった?

これほどまでの孤独に、どんな意味があった?


突然、こいつの顔が波紋でぐちゃぐちゃになる。

雨が一滴、二滴……。

空から降ってきた。


そうだ、もっと降れよ。

もっとだ、もっと降れよ。

どしゃぶりになって、この醜い存在を木端微塵に壊してくれよ。

恋がしたいだぁ?

バカじゃねーの、醜いゴミクズのくせに……。

死ねよ、消えて無くなれ。

お前の居場所なんかねえんだよ!

もっと降れよ、もっと降れよ、どしゃぶり来いや。

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