メトロノーム
振り子式のメトロノームがある。
リズムを刻んでいる。
音だけを聞いていると、まるで、心臓の鼓動のよう。
このメトロノームを強引に止めたら、私の心臓も止まるだろうか?
私はピアノを習っていたわけではないので、初めてメトロノームを見たのは、小学校の音楽室だったと思う。
当時は、何とも思わなかったが……。
今は、いろいろなものが、メトロノームと連動する。
一番に連動するのは、振り子の動きだ。
リズムという音楽的なものとは関係なく、私の精神状態を具現化しているように思える。
振り子が、2つの世界を行ったり来たりしているように映る。
いろいろあった私の人生では、善と悪が交互に脳を支配する。
何かが起きたとき、その瞬間、振り子がどちらに傾いているかによって、未来が変わっていく。
与えられた運命に沿って、その時々の判断をされている気がする。
『人生、山あり谷あり』という言葉は、極めて一般的だ。
生きている人間なら、誰でも当てはまる。
メトロノームの動きを見て、そう思える人は、おそらく幸せな人生を送った人なのだろう。
私は、ずっと谷底を歩いてきた感覚しかない。
シャバで、会話の相手とメールの相手が1人もいない『本当の孤独が支配する世界』と、牢屋の中で24時間他人と共同生活するという『孤独から逃れられる唯一の世界』が、私が知っている2つの世界だ。
振り子がこの2つの世界だけを行ったり来たりするのは、私の運命だから仕方ないけど……。
最近は、メトロノームの動きが遅くなっている気がする。
それと同時に、身体や精神に、いろいろな異常が起きている。
だんだん遅くなって、いずれは止まってしまうのだろうね。
人間、死から逃れることはできない。
だからこそ、今という時間を、精一杯、充実させておきたいのだけど、私に与えられた2つの世界では、それができないんだよ。
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