交通事故

ここは大通りと交わるT字路だ。

一旦停止後、左折のタイミングを計っていた。

引っ切り無しに車が通り過ぎていくため、なかなか入れない。

ようやく入れるタイミングが見つけ、アクセルを踏んだが、死角に入っていた自転車と接触してしまった。

自転車に乗っていたオッサンは転倒した。

結果的には、膝を擦りむいた程度だったが……。


「テメー、コノヤロー、ふざけんじゃねえぞボケェ、喧嘩売ってんのか?オイコラ……、名前、住所、電話番号全部教えろこのクズヤロー」

と、まぁ威勢のいいこと。

「大丈夫ですか?」

「ぶっ殺すぞコラ……、お前、何様じゃアホ……」

私が綺麗なネエちゃんだったら、お前そんなん言ってへんやろ、と思いながら……。

当たり屋か、不注意の事故か、ちょっと微妙な感じだったので、とりあえず武装して車を降りた。

もちろん、見えないように背中に隠したけど……。


このときの季節は夏……、私は半袖半ズボンだった。

いろいろあった私は、身体が傷だらけだ。

私は喧嘩するタイプじゃないけど、このときは威嚇が止まらないので、やるならどこまででもやったるわ状態だった。

刃渡り30センチ超えのランボーナイフを背中から前に出した。

ナイフを持つ腕は、タバコの火傷とナイフでの切り傷で原型が残っていない。

私はその状態で、オッサンの目の前まで行って優しく話しかけた。

「大丈夫?保険おりるからさぁ、一回、病院に行ってきなよ」

これで食ってかかってきたら、マジで刺そうと思っていたけど……。

なぜか、急に、笑顔になってフレンドリーに話しかけてきた。

だから、私も、武器を車の中に戻した。

しばらくして警察官が到着したら、この人は、さらに、良い人になった。

結局、連絡先を交換して、通常の事故処理で終わった。

戦闘にはならなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る