好きな女性を奪い去った後輩の今を調べたら……

「あいつ、今、何してる?」

突然、脳裏をよぎった。


人間関係ゼロの天涯孤独の私が、部屋の中で、パソコンと向かい合っている。

学生時代に、私が好きだった女性を奪い去った後輩のフルネームをフェイスブックで検索してみた。

同姓同名が数人ヒットした。

だが、彼の実家がある県では1人だけだった。


若い人はフェイスブックではなく、別のアプリで繋がっているみたいだから、これをやっているのは私と同年代か、それより上の世代だろう。

私は、偽名で全く違う地域に登録した。

まぁ、どんなアプリかを理解したところで、すぐにアカウントを削除したけど……。

登録していたのは、ほんの数か月だったかな?


そいつの名前をクリックして開いてみる。

すると、堂々と現在の写真が掲載されていた。

あれから何十年が経過したけど、外見はあまり変わっていないように思えた。

職場の同僚と楽しそうに写っている集合写真もあった。

これらの写真から推察すると、年相応の社会的地位を得ているのがわかった。

彼は、当時、私を慕って同じ接客業のアルバイトを始めて、仕事が性に合ったのかどうかはわからないが、夢中になって楽しそうに働いていた。

私が知っている彼の姿はそこまでだ。

あの一件以来、一切の交流はないし、死ぬまで接触することもないだろう。

しばらくページを覗いていると、あまり見たくなかった衝撃の写真と遭遇してしまった。

すでに結婚している模様で、子供と見られる10歳から15歳くらいの男女3人の写真が掲載されていた。

奥さんの写真はどこにも掲載されていなかったが、その中の一人の子供の顔を見たとき、私は全てを悟った。

瓜二つとは、まさに、このことだ。

母親は間違いなく、あの女性だろう。

全く同じ顔をしているのだから……。

しかも、私と出会ったときと同じ、あの若さと肌艶まで備わっているのだから、衝撃としか言いようがない。

彼はあのあと、その女性と結婚して、それなりに幸せな人生を送ってきたのだろう。

写真を見て、その背景がわかった……。

同じ1回きりの人生の勝者と敗者のコントラストが、やけに虚しい……。

こういうものは勝手に覗くべきではないなと……、改めて思ったね。

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