深夜の水流に思う

深夜2時を過ぎている。

世の中の人は、大半が寝ている時間だ。

私は若いときから、私生活のみならず、仕事も含め、この深夜帯(22~6)は起きていることが多かった。

だからと言って、それ以外の時間に寝ていたわけでもない。


ここは、住宅地を流れる用水路だ。

溢れんばかりの水位で、かなりのスピードで水が流れている。

川幅は7~8メートルはあるだろうか。

農業用か工業用かは知らないけど、結構、深そうだ。


私は、橋の上から水面を眺めている。

もちろん、周りには誰もいないし、音もしていない。

深夜の水路は真っ黒で、不気味な流音だけが聞こえる。

しばらく眺めていると……、吸い込まれるような感覚に誘われて、飛び込んでしまいたくなる。

私はすでに一度、実行している身なので、虚しさを感じる。


日本人は自分さえ良ければ他人がどうなろうが知ったこっちゃない。

恵まれた環境でヌクヌクと生きてきた被害妄想者と、不幸の背比べをして意地でも勝とうとしたがるクソガキしかいない。

「自死行為を実行した」なんて言おうものなら、日本人は、ほぼ全員が、必ず、「私だって……」「俺だって……」と、不幸の背比べを仕掛けてきて勝とうとしてくる。

それに留まらず、そんな私(俺)は、『努力・我慢・行動・ポジティブ・ネガティブ・前向き・後向き・プラス思考・マイナス思考・諦める・諦めない・強い・弱い……』という薄っぺらい言葉を使って、「私だって、辛いのだから、一緒だ」と、勝手に同列扱いにされた挙げ句、『弱音を吐く不届き者』という扱いにされてしまう。

私は、元受刑者・元路上生活者以外にも、たくさんの肩書を持っている。

その2つだけでも、日本の人口を考えたら、どれほどいないかを知っている。

だけど、ほぼ全員がそんな感じだからね……。

そんな人間たちが、今は寝ている。

虚しさしかないね。


ここは用水路という人工物だから、地球の脈ではないのかもしれないけど、地球の血の流れを感じる。

地球の血管に接しているような感覚だよ。

この不気味な黒色は、日本人の真の姿を投影しているように思える。

あまりにも不気味なので、まるで、違う世界への扉にも見える。

かなりの誘惑を感じるが、飛び込んだ経験がある私だから、今、こうして自重しているのかもしれない。

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