すれ違う 【詩】

ドライブ?

一般的に使用される意味とは少し違うけど……。

レンタルを返しに行くだけだから。


でも、一応、ドライブだ。

たとえ、生涯、助手席に誰かが座ることが一度も無くても……。

辞書には運転するって書いてあるから……。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

若い男女の笑顔が見えた。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

スキー場に向かう学生カップルだ。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

熟年夫婦の落ち着いた安心感が見えた。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

彼の髪のゴミを取っていた。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

作業服の男性と茶髪の女性がバカ笑いしていた。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

ホームセンターでの買い物を終えたと思われる、恋する2人の姿が見えた。


対向車とすれ違った。

その一瞬が目に焼きついた。

スマホ片手に、笑顔の、恋する2人が見えた。


道はどこまでも続いていく。

走れば走るほど虚しいだけ……。

生命力が削られていく。


どこまでもどこまでも幸せとすれ違う。

センターラインの向こう側とは、行き先が180度違う。

あれは、私が目指した世界だ。


たどり着けない……、たどり着けるはずがない。

道は一本しかない。

永遠にすれ違う。

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