タイタニック(1999年12月31日、名古屋テレビ塔3階)
タイタニック号の遺品展示会場にいる。
船自体は、光の届かない海底に沈んで、もう、100年近く眠っている。
私は引き上げ品をガラス越しに見つめる。
この船に乗った人、乗らなかった人、どちらが幸せだったのだろう……、いろいろ考える。
沈没したとき、そこには、いろんな死の形があったはず……。
ガラス越しの遺品は、そのとき、そこに居た誰かが使っていたもの……。
今日はこういう日なので、若い恋する2人の姿が圧倒的に多い。
遺品に聞きたい。
私のような孤独な人間に見つめられた方が良い?それとも、手と手を取り合う恋する2人に見つめられた方が良い?
遺品は何も答えない。
私は勝手に、遺品の向こう側にいる魂に触れようとしていた。
周りにいる恋する2人に見つめられる遺品は、なぜか、とても儚く見える。
あんなに眩しい2人に見つめられるのを横で見ていると、いろいろと思うことがある。
私は、生涯、恋愛ができない天涯孤独だから、この遺品たちと同じ立ち位置にいるような気がした。
間もなく、21世紀が来る。
あなたたちの生きた世紀は終わる。
よくわからないけど、なぜか、「お別れだね」っていう気持ちになった。
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