文集 ホントウノコドク

世紀末（１９９９年１２月３１日、金沢駅）

私は、今、金沢駅にいる。

名古屋に向かう『特急しらさぎ号』の発車時刻までは、まだ、相当、時間がある。

何気なく駅周辺を歩いてみた。

香林坊や東金沢は詳しいけど、この辺りはあまり詳しくない。

地下通路にも入ってみた。

さすがに地上と違って、雰囲気は薄暗いし、人通りもまばら……。

しばらく歩いていると、なんと、この地下通路の中に、突然、映画館の入口が現れた。

なんで、こんな所に映画館？

好奇心で入ってみた。

どうやら、ここは金沢都ホテルの映画館らしい。

『エンド・オブ・デイズ』大人１枚。

狭い地下通路を通ってきたわりには、館内はそれなりに広くてビックリ。

最新の映画情報には詳しくない。

たまたま通りかかって、たまたま見た映画だった。

内容に驚いた。

今日は、１９９９年１２月３１日、映画は、１９９９年１２月３１日の夜に悪魔退治の内容……。

なんかジーンときた。

そもそも名古屋に行く目的は、映画『タイタニック』の関連企画で、実際のタイタニック号の遺品展示会を見に行くこと……。

いろいろ考えてみると、今から少し気が重い。

なぜなら会場が、テレビ塔の３階だからだ。

今日の夜、そこには恋する２人がたくさん集まるのだろう……と、容易に想像がつく。

２０世紀から２１世紀になる。

ミレニアムカウントダウンはテレビ塔の１００階で行われる。

私は、おそらく、独りでそこにいるのだろう。

きっと、究極の虚しさが待ち受ける。

今から数時間後だ。