誰を待っているの? 【詩】
季節の色。
そう、色が変わった。
袖が30センチ伸びるとオレンジ色に変わる。
それを重ね着すると、今度は白に変わる。
今はまだ、オレンジ色。
たくさんの木々。
ベンチ。
風にさらわれる落ち葉。
隣に座る若い女性。
携帯のタッチスクリーンを見つめる。
1人で佇みに来たのだろうか。
寂しそうな目。
鳴らない受信音と着信音。
でも、必ず鳴るときがくる。
そう、鳴れば戻れるんだ。
あの暑い太陽が輝いていたライトブルーの季節に。
あっ……。
着信音が聞こえる。
鳴った。
心からの笑顔。
戻ることができたんだ。
良かったね。
オレンジ色。
季節の色。
私は、袖を30センチ捲った。
精一杯、捲り上げた。
思わず携帯を取り出す。
鳴らない電話。
そう、鳴らない。
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