三日月物語

第0話

「おはよう、お姫様。さぁ、眠りの時間は終わりよ」

　カチカチカチ

「私が誰かって？...そうねぇ、黒い魔女と言われているかしら。髪の毛とか服装とか黒いから。あだ名なんてそんなものよ。簡素で簡易で完結的なもの」

　カチカチカチ

「今回も、誰も助けられずに終わったわね。錬は刺殺され和泉は毒矢で射られて、貴方も死んだ」

　カチカチカチ

「どうしてこんな事になっているのか。それは今の貴方がよく知っているんじゃないかしら」

　カチカチカチ

「...そう。貴女は一番最初の世界で願った。『三人で笑っていられる未来を手に入れたい』と。だからこの、繰り返す世界は生み出された。私は、対価の代わりに誰かの強い願いを叶える事が仕事だから」

　カチカチカチ

「この世界はメビウスの輪。貴女がどこかで変化を出さない限り、この世界に切れ目が生み出される事は無い」

　カチカチカチ

「........そろそろ巻き終えたかしら。ほら、もう時間よ」

　カチ

「行ってらっしゃい。何回とも何十回とも、何百回とも分からない、終わらない世界へ」