第7話
結局、その日の夜家に帰ってから、私はお父さんと……あの人にすっごく怒られた。
女の子が遅くまで出歩いて何かあったらどうするんだと。
あの人は……私の身体を抱きしめて、泣いていた。
そして……。
「瑞穂ちゃんがこの家から出て行く必要なんてないの。私に不満があるなら、私が出て行くから」
「え……?」
「だってそうでしょう。あとから入り込んできたのは、私の方なんだから」
あの人は、きっぱりとそう言うと「でも……」と続けた。
「もしも、瑞穂ちゃんが許してくれるなら、おかあさんなんて思わなくてもいいから、口うるさいおばさんが住み着いてるなあと思って一、緒に生活してくれると嬉しい」
「……別に」
「え……?」
「あな……百合さんは、おばさんなんて年じゃあないでしょ」
「っ……! そう、かな?」
「そうだよ」
私の言葉に、あの人は――百合さんは泣きそうな顔で嬉しそうに微笑んだ。
知らなかった。この人は、こんなにも優しい顔をしていたなんて。一緒に暮らし始めて、もう数か月が経つというのに、私はそんなことにすらこの時初めて気付いた。
きっと和臣君と出会っていなければ、今も私は百合さんに反発してお父さんに反抗して、ギスギスしたままの日々を送っていただろう。
あの日から、ほんの少しだけれども、私の中で百合さんへのわだかまりが解けた気がする。それは本当にほんのちょっとのことで、もしかしたらお父さんたちからしてみたら、もっと歩み寄ればいいのにと思われていたかもしれないけれど。一緒に暮らしていく上で、衝突することもなかったし、空気が悪くなることもなかったから私的には一番いい距離間で暮らしていけてたと思う。
――そういえば、いつかお父さんに尋ねたことがあったっけ。
百合さんと再婚して幸せ? って。そうしたら……。
「幸せだ。あの人と一緒にいるとな、
なんて、柄にもないことを言っていたっけ……。
でも、和臣君がいなかったら、お父さんのあんな顔も、知らずに生きていたかもしれない。
全部、全部和臣君のおかげなんだ。
だから――。
ああ、悔しいなあ。もっとたくさん、和臣君からもらったもの、過ごした日々を思い出していたいのに、現実とは残酷なもので、もうほんのすぐそばまで車が近付いているのを感じる。
私は、訪れる衝撃を受け入れるかのように、閉じた目をさらに強く
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