魔法に関する学生達の会話

flathead

登校中の会話

「なぁ、魔法ってさ」

「ん?」

「不便だよなぁ」

「そうか?」

「そうだろ。だって魔法って言ったらなんでも叶えられる力だと思っていたけど現実は違う。簡単に覚えられるものでもないし、できないことだって山ほどある。学校でも実践だけ教えてくれれば良いのに学科の授業の方が多いじゃないか。おかげで僕は魔法を断念しそうだよ」

「そうか?別に俺はそうは思わんけどな。先に学科で魔法の効力や発動の方法を知っておくことで事故を防ぐ。昔は魔力が暴走して人が死ぬ事件だってあったらしいじゃないか。先生方、というより世間の考えには概ね賛同するね。俺は」

「うーん。でも今みたいな牛歩戦術で学んでいても稀代の魔法使いなんて生まれないと僕は考えるわけだよ」

「なるほど?」

「歴史に名を残した魔法使い達は偉大な魔法の発明をした。それは勉強をずっとやってきたからでもあるけど、それ以上に実験を積み重ねてきたからだと思うんだ。仮説を実証する力ってのが現代には足りないと思うわけだよ」

「言いたいことはわかった。で、その偉大な魔法使い達がどんな最後を迎えたかは知ってるな?」

「……実験中の事故で死亡」

「ごほん。それを踏まえて何か意見はあるかな?」

「……ありません」

「よろしい」

「でもさ!俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよ!魔法といえばおとぎ話みたいなロマンあるものだろ?」

「まぁ俺も夢は見てきたな。もう壊されたが」

「そうだろ?例えば好きなあの娘の心の中を覗くとかもっとロマンある魔法があってもいいじゃないか!」

「あ、結局その話なのか」

「それ以外に魔法の使い道なんてないよ!」

「いや、あるだろ。恋のせいで盲目になってるぞ」

「いや間違いないね。僕が魔法学校に入ったのは恋の魔法を開発するためだ。僕は世界中の恋する人間にこの魔法を届ける使命を負ってここに立っている」

「昨日も実験をしたのか?」

「もちろんさ!妹に実験に付き合ってもらったんだけど、あいつは俺にべったりくっつくようになったぜ」

「それは昔からだろ。俺の姉にもその魔法かけてみてくれ。多少はあいつの傍若無人が解消されるかもしれん」

「しまった。……その前提を忘れていた。じゃあ放課後にお姉さん呼び出してくれ。僕の秘術をご覧に入れよう」

「やっぱり結構だ。呼び出すことすら俺には難しい」

「なんだよ……。つれないな。多少の犠牲は魔法の発展に不可欠だ」

「なんで俺がお前のくだらない犠牲になってやらにゃいかんのだ。」

「あ、やばい!予鈴がなったぞ!」

「もう箒に乗って行こう。こいつならひとっ飛びだ」

「ああ、そっか。これがあったな。なあ魔法ってさ」

「ん?」

「やっぱり便利だな」

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