判明
今日も今日で登校だ。
電車の車窓から見える景色は春爛漫。
風に散る桜は美しく、まさに春の代名詞。
今までのように佐保の桜で涙を流すことはなくなったが、不思議と咲き誇る桜を見るだけでどこか胸が痛む。
先生の言っていたソメイヨシノの悲しみの根源以上に。
(狭穂姫に感化されてるんだろう。)
現代に生きる、赤の他人の私だけれど、寝ている間あれだけ彼女の人生を見ていれば、嫌でも感情移入してしまう。
昨夜、自室で手鏡を開いた。
橘先生の事が気になったからだ。
最近、普通ではあり得ない事の理由はヘタに考えるのより彼女に答えを求める方が効率がいいのではと思っている。
鏡の中の私は、どこか明るい表情をしている。
何度見ても自分の顔をした他人だなんて慣れないが、その表情に、やはり何か関係があるなと確信した。
「はい、その通りです。」
狭穂姫は頷く。
「お話ししなければならないのは、橘先生だけではありません。
杉本君もです。」
その言葉に目を瞬かせる。
どういう事だろうか。
昨日確かに彼に触れたとき、橘先生に似た不思議な感情に襲われた。
それと関係があると言うのだろうか。
「私は力が弱い
昨日2人に触れて確信しました。」
彼女の表情が生き生きとしていて、嫌な予感がした。
また一歩、おかしな方向に話が進んでしまう予感だ。
「杉本君は、
橘先生は、
いきなりのイコール文に頭が付いていかない。
「ごめんなさい、説明をもう少し詳しくお願いします。」
「ごめんなさい、私たら。」
くすくすと笑う表情は明るい。
彼女の過去が悲惨だけに、そうして明るい気持ちになってくれるのは、少し嬉しい。
「人の魂は輪廻の定めにあります。
死すればまたいつか、この世に生まれる。」
「魂の存在は実在だと言うんですか?」
狭穂姫は穏やかな微笑みで私を見つめる。
「人が信じるものは様々で、何が事実であるかはその人の信条で変わるものですよ。
古来は
誰もがそれは永遠と信じていたものです。
ですがいつしか科学が第1の世となりました。
それは本当に永遠かもしれない。
でもいつの日かそれが変わるかもしれない。」
長きに渡りこの世を静かに見つめてきた彼女が思う信条に魂の存在があり、輪廻という概念があるのだとしたら、今の私は彼女を信じざるを得ない。
それが現在抱える問題全ての解決への糸口となり得るからだ。
「わかりました。
つまり、杉本君と橘先生は生まれ変わりという事ですね。」
「はい。」
姫ははっきりと頷いた。
そして、ふと、とある人のことを思い出す。
3年前の入学式に、同じように胸が締め付けられる思いがした。
「兄貴先生・・・」
私の呟きに、鏡の中の狭穂姫の表情は苦笑に変わった。
俯いた彼女の言葉に、私は目を見開く事となる。
「兄貴先生は・・・狭穂彦。
私の兄です。」
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