15.目的 もくてき
月夜さんに案内された『場所』は、さっきの素晴らしい『滝』ももちろんだが、私の腰くらい高さの草や木々が生い茂っている。
ただ、その草はギザギザしておらず、どちらかというと真っ直ぐで、鋭い。
まぁ、それはつまり……その高い草が私の手に当たったり、知らないうちに切れてしまったりしてしまう。
だから、進むのにおっかなびっくりになっている。
「……」
私がそんな状況にあるにも関わらず、月夜さんはそんな事なんて全く気にせずサッサと進んで行ってしまう。
「……」
すると、どんどん私と月夜さんの距離は広がり、置いて行かれそうになる。
本当はもっとゆっくりと慎重に行きたいところなのに、月夜さんが先に先に行ってしまうから、そんな事を気にしていられない。
「っ……」
月夜さんがまたもピタッと止まり、私も止まった……が、いつの間に切ったのか、知らないうちに手には切り傷が出来ている。
「……」
そんな私の姿を見かねたのか、月夜さんはおもむろに私の手を取った。
「え……」
突然の行動に驚き、思わず手を引っ込めようとしてしまったが……。
「……動くな、すぐに治す」
その言葉と月夜さんの真剣そうな表情から、私はすぐに引っ込めようとしたグッと引っ張り手を止めさせた。
「……」
いつもの月夜さんの様子とは違うことに気がつき、私はそのまま月夜さんに委ねる事にした。
「……」
「……え」
なんて思っていると……怪我をした手の甲から突然『柔らかい光』が現れた。
「おい、暴れるな」
そうは言われても、いきなり『光』が現れれば誰だって驚く。
ただこの『光』は稲妻……とかそんな『鋭い』モノではなく、むしろ『粉雪』の様にフワフワしている様に見える。
「……」
それに、どことなく『暖かさ』も感じられる。
「……よし、これでいいだろう」
月夜さんが私の手を離すと……さっきまであった手の甲の傷は綺麗サッパリなくなっていた。
「あっ、ありがとう……ございます」
たった今、私の目の前で何が起きていたのだろうか。それこそ『夢』でも見ていた気分になった。
「どうした、
「えっ、あ……」
今の『現象』も目の前で起きていたにも関わらず、その『現実』が受け入れられそうにない。
「フン。大方今、目の前で起きた事に驚き、受け入れられそうにない……と言ったところか?」
「…………」
どうして分かるのだろうか。
「昨日も言ったであろう。貴様の考えている事など容易に想像できるわ」
「うっ……」
昨日も言われて、分かりきってはいても、こう改まって言われると……やはり少し恥ずかしい。
「そっ、それで今度こそここが『目的地』なんですよね?」
多分、今の『現象』について聞いたところで、私に分かる話ではなさそうだし、そもそも教えてくれるとも限らない。
だから、ここは話題そもそもを変えてしまうのが得策だろう。
「……ああ」
そんな私の魂胆すらも分かりきっているのか、はたまた「話題を変えてくれるのならちょうどいい」と思ったのか、月夜さんも私の話題変更に乗っかってくれた。
「でっ、でも……」
チラッと月夜さんの後ろに広がる『光景』を見たが……どうしてわざわざ『ここ』に来たのか分からない。
「……貴様は私が何も考えずにこんな『場所』に来ると思っているのか?」
「いっ、いやそんな」
そんな事を思っていないからこそ、なおさら分からない。
月夜さんの事だから、さっきの『神社』の様に『あやかし』にまつわるところに行くモノだと勝手に思い込んでいた事もあり、月夜さんが連れてきたのは……だだっ広い『池』の様なだった。
「……」
ただ普通の『池』とは違い、滝から流れが繋がっており、そのだだっ広いところから少し幅が狭まった状態で『川』として流れている。
しかし、水が溜まっている……というワケではないため、正確には『池』とは言えない。
「……」
「ふむ、ただ『水』と言われてもそう簡単に連想出来んという事か」
「え?」
「む? 私がここに来た……という事は当然『あやかし関係』であろう?」
――やっぱり、そうですよねぇ……。
なんて心の中でそう呟いていたが……水に深く関係している『あやかし』とは……何かあっただろうか。
「……あっ」
「ようやく見当がついたか、たわけめ」
「……」
「まぁよい、ともかくここに来たのは『
そう言って、月夜さんは私の方を勢いよく振り返った――。
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