カグヤ2

あっという間に夜を後にしたカグヤはとなりに横たわる王子の銅像を抱え込みました。

「ねぇ、どう? 可愛い婚約者に会えた気分は? 早く抱きしめに行きたいのなら誓いの言葉を言ってくださいな」

手にした蓬莱の玉の枝でさらりと石像の頬を撫でると、その口元が動き出しました。

「サン、べ……」

か細い声でそれだけはなすと、石像はまたすぐに動かなくなってしまいました。

妹の名前を聞いたカグヤは不服そうに頬を膨らませました。

「私の方を愛しているって言いさえすれば、すぐに呪いは解いてあげるのに。なんて強情な人」

かつて幸せの王子と呼ばれた黄金の銅像は、長い月日の中でその身の幸せをカグヤに剥がされてしまいました。それでも彼はカグヤには屈していなかったのです。

カグヤはますます王子を手にしたくなりました。

「次はどうやって愛の言葉を言わせようかしら」

骨の車に揺られながら、カグヤは物言わぬ王子の唇を優しく撫でましたとさ。

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アルトコロ 鬼嫁キドリ @yau5531

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