彼女が笑っている明日

終わりでエンディング

　僕は悪魔くんちゃん、いいやダンスナイトを手で鷲掴みながら、病院から家に徒歩で帰った。

　ずっとダンスナイトは何かを喚いていたが、恐らく許してくれ、などの言葉だろう。

　僕に祈っていたのだと思う。

　だが僕はそれを全て無視していた。

　そんな感じで僕は家にダンスナイトを連れて帰った。

　玄関を開けて、そのまま二階の自室に向かう。

　部屋に入った瞬間、僕はダンスナイトを床にへと叩き付けた。

「この馬鹿が！！　お腹に穴空いたわーーー！」

　と叫びながら。

「いっだっ！」

　ダンスナイトは痛みに呻（うめ）きながら、僕の部屋を転がる。

　丸い球体がゴロゴロと転がっていく光景には多少の違和感と不気味さを感じる。

　ダンスナイトは転がりながら、そして泣きながら僕に言ってくる。

　懇願（こんがん）してくる。

「許してくれ……許じてくれ……俺は……」

　僕はしゃがんで、転がっている野球ボールと同じぐらいの大きさのダンスナイトを右手で掴み、左手で撫でた。

「泣くな、ダンスナイト。……正直言ってお前の気持ちは分かるからさ……」

「…………は？」

　僕は笑う。

　いや苦笑いかもしれない。

　だってだいぶ恥ずかしいことを言うつもりだから。

　しかしその恥ずかしい言葉のまんま僕は言った。

　何故かと言うと、これを言わないと今回の事件が解決はしても、完全解決はしないからだ。

「好きな人を守りたい、好きな人のために力になりたい、好きな人を傷付ける奴らが許せない──そんなの当たり前だよ。ダンスナイト。当たり前で、当然の考えだ。好きな人の為なんだぞ？　命を賭けることなんて当たり前だ。例え自分自身が殺されてるとしてもな……」

　僕は立ち上がる。

　ゆっくりと立ち上がり手放した。

　そうするとダンスナイトは落ちることなく浮いた。

　僕はダンスナイトに手を伸ばす。

　握手をするためにだ。

　ダンスナイトは今もまだ理解出来ていないのか、ポカンとした顔付きだ。

「だから僕は許すよ。今回の出来事の全てをな」

　だけどな──と僕。

「望々の家に居続けることは禁止にさせてもらう。その代わり僕の家……って言ってもこの部屋から勝手に出るのは駄目だけどな……でも時々は望々と会わせるようにするよ……まあ本音は僕も会いたいってのがあるけどな」

　ダンスナイトの形状が変わる。

　縮小していた物を解放したのか……完全に人型になる。

　二メートルはあるではないか、それぐらいの高身長。

　顔は仮面で隠れているが、恐らく西洋の顔付きだろう。

　鼻が高いし……どんだけ高いのってぐらい。

　日本人じゃ有り得ない感じの高さ。

　人型になったダンスナイトは僕の手を取ってくる。

　それから片膝を着いてくる。

「ありがとう、椴松　竜二……ありがとう……これでまた望々に会えて……望々に希望を貰える……ありがとう……感謝してもしきれないぐらいだ……」

　ダンスナイトの仮面の目から涙が零れ落ちる。

　僕は「はははと」笑い、彼も「アハ……アハハ…………アハハハハハハハハハハ！！！」と大笑いをした。

　これから男三人の生活かあ……華が無いってのはまさにこのことだな。