第7話 祓いを終えて

最後に凛は、

「あの御方は罪から御仏や神さまに許されたのでしょうか……」

そう静かに儚いものを見るように聞いてきた。

「それはわかりませんが、あの人が自分を捨てて地獄に自ら赴こうとした時に罪のほとんどは消えていったのでしょう。しかし、骨を残さなかったのはあの男の意地だったのかもしれません」

「それでは許されたのでしょうか……」

「それはあの人が自分で自分を許せる時が本当に許された時になると思います。それに仏教では生まれ変わりというのがある。だからあの人は来世でも自分の罪を引きずって生きるのかもしれない。だけど来世ではあんな風にはならない。そう確信できる」

「私は少し救われた気がしました」

 凛さんはそういって微笑んだ。

 それは極上の微笑みだった。

「では。僕はもう行きます」

「また、おいでください。今度は仕事ではなくて。お待ちしています」

「また、いらしてください」

 父親も大きな声で見送ってくれた。

 一弥かずやはひとりあぜ道を進みながら思った。

 あの人が消えてしまった時、何も残さなかったら地獄行きだろう。しかし、名は残った。あの妖刀には何も残らなかったのに。その時、決まっていたんだ。あの男は天界に登っていった。しかし、直ぐにこの世に戻っているだろう。多分、人ではなくてもっと小さな、ささやかな命に宿ることだろう。

一弥はいつまでも続く田園の中を歩いて帰った。

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