第5話 娘、目覚める。

 すると娘が目を覚ました。

 父親は気絶していた。

一弥かずやさま。ありがとうございます」

 娘は一弥に泣きながら飛びついてきた。僕はいつまでもこの状態を維持したかったが流石に彼女の父親が気絶したままではいけないと思って言った。

「あ、あの、お父さまが気絶していますから。起こさないと」

 そう言って僕は父親をゆっくりとゆり起こすと頭を地面に擦り付けてお礼を言った。

 娘も父同様にお礼を言った。

「本当にありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか」

「僕はそんなに頭を下げないでください。僕は僕の役目を果たしただけですから」

 僕は初めての仕事の達成感に気分を高揚させていた。

「それに。男の方の屍を供養しなくてはいけませんから」

僕が男の屍に近づくと男がゆらりと立ち上がった。そして一弥たちに近づいてくる。

 父親は怖がったがりんは言った。

「この人は私たちの御先祖様です。今日、夢の最後で知りました」

「どういう事なんだ」

 父親は娘に必死に聞いている。

「それは夢のイメージだから。詳しくは解らない、でも」

 凛は感覚で解ったらしい。男の顔を直接見るのも初めてだろう。

「あなたは何者だ」

 一弥がゆっくりと静かに語りかけた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る