博士の奇妙な発明
余記
第1話
うちの博士は、変な人だ。
ううん。変というか、奇妙というか・・・やっぱり、変なのかなぁ?
何年か前、初めて博士を見た時には、なんか可愛らしい人だと思った。
お話している途中で、突然固まったかと思うと、首をこてり、と倒して何かつぶやいているの。
普通の人だったら、思わず引いてしまうようだけど、その時の私には、何か小動物みたいな仕草に見えて、思わず、かわいーって撫でたくなっちゃった。
・・・しなかったけど。
そして、研究室に篭っては、変な発明品ばかり作ってる。
例えば、この間見せてもらったのは、
「博士、これ、掃除機ですか?」
「いや、全自動虫取り機だよ。
あっ!そこのボタン、危ないから押さないでね。」
「え?」
遅かった。
ほとんど無意識のうちに、ボタンを押してしまった私の手の下で、丸い形のソレがパカッと開くと中から黒いのがわさわさと・・・
「きゃーーーー!」
慌てて殺虫剤を持って駆けつけてくれる博士。
その後の騒動はもう、思い出したくも無い・・・
でも、ここ最近、その奇行ぶりに拍車がかかったみたいで、前よりも頻繁に、ぶつぶつ言う事が多くなっちゃった。
研究室に篭って、もくもくと何かしているかと思えば、
休憩室でぼーっと空を眺めてぶつぶつぶつ。
ていうか、三年とか三周年とか言ってるんだけど、一体、なに?
***
「
今日、研究室に行くと、いきなり呼び出された。
そして、テーブルの上には・・・バケツ?
「美里くん。これが、今回の発明品のタイムバケツだ!」
「タイム・・・バケツですか?」
胸を張って彼の言う事には、三年後にふたが開く、タイムカプセルのようなものらしい。
うん。正直、微妙。
私が、納得の行かない顔をしているのが分かったのか、目に見えて彼がしょんぼりしだしたのが分かった。
「じゃぁ、これはどうかな?」
と、机の下から取り出したのは、これまたバケツっぽい形状のもの。
バケツより小さいけど。
「これは?」
「三年間ヌードルだ!」
「名前からして微妙なんですけど!」
彼の言うには、お湯を入れて三年間で食べられるカップヌードルみたいなものらしいんだけど・・・何に使うの?
「あ。さっきのタイムバケツと組み合わせておくと、調理終わった頃にふたが開くんですね?」
「その組み合わせは考えてなかった!」
うーん。やっぱりどちらにしても微妙。
「となると、次のものは・・・」
「というか博士、三年間というのに何か意味があるのですか?」
「え・・・っとだね。確か、君がうちに来てくれたのが、三年前の今日だったじゃないか?」
そう言って、机の下から何か箱を取り出した。
「正直、ウチのような所に、長い間勤めてくれて感謝しているんだ。
それで、その感謝の気持ちをだね。」
もじもじしながら差し出してきた箱を開けると、中には指輪が入っていた。
***
ちょっと奇妙なプロポーズ(?)となってしまったけど、彼には最初、そんなつもりは無かったみたい。
「実験の最中に、綺麗な結晶が出来てね。
あ。これ、美里くんに似合うんじゃないか、と思って指輪に加工してみたんだけど。」
と、顔を赤くして言う彼。
その様子が可愛かったので、え?プロポーズ?とか聞いてみたら、驚いた顔しちゃって。
「えっ?えっ?えっ?お・・・お付き合いからお願いできませんか?」
だって。
その後は、彼に付き合って研究所に通ってるけど・・・
今日もやっぱり、変な発明品を作ってるんだ。
博士の奇妙な発明 余記 @yookee
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