新たな屋敷の建設と徐々に発展する街道

 秋になり、領内では米などの作物収穫を終えていた。東美濃を支配下に治め、農地を増やしたため、諸々の作物の収穫量は増えている。

 新たに支配下に治めた東美濃では、農業指導などをしたため、領民たちも収穫量が増え、驚き喜んでいた。



 夏の頃は、国人領主たちを掌握するため、彼等を招いたりしていたが、木曽氏たちも別に招待している。

 木曽氏は幕府から信濃国守護府中小笠原家と同格と認められているので、臣従した国人領主たちとは別格として扱っているのだ。

 木曽氏は、わしが信濃国へ野心を抱いていることを知ってしまっているので、しっかりと掌握しておかなければならなかったため、何度か当家へまねいていた。

 何度も招いたためか、木曽氏も慣れてきた様で、当主の木曽左京大夫か嫡男の木曽中務大輔のどちらかが来るようになっている。

 一応、木曽氏も掌握下においたと言っても良いだろう。



 東天竺屋が木曽氏から買い付けている木曽檜だが、実淳派が木曽三川河口域の水運を封鎖する前までは、木曽檜を志摩国に運べていたのだが、封鎖以降は兼山に留め置かれることになってしまっていた。

 伊勢の宮大工たちを使って、鳥峰城に天守を建設しようと思ったものの、家臣たちから天守が目立ち過ぎると反対されたため、仕方なく天守の建設は保留になっている。

 伊勢の宮大工たちを遊ばせておくのは勿体無いので、鳥峰城の麓に、木曽檜を使った新たな屋敷を建設してもらうことにしたのだ。

 今の屋敷も、このまま子が増え続ければ手狭になってしまうので、作事奉行の松永弾正に大規模な屋敷を作る様に命じている。

 設計図を見せてもらったが、御殿の様な大きな屋敷であった。

 今の屋敷がある兼山の中心地から外れてしまうが、有事の際には鳥峰城に逃れられるし、集落の中心から離れている方が本来は良いだろう。

 わしの屋敷が出来たら、重臣たちの屋敷も逐次建設し、移すつもりだ。妾たちを囲う「鹿の苑」も屋敷の近くに移すつもりである。

 「鹿の苑」の跡地には、大きな芝居小屋でも作るかな。祖父が能や猿楽が観たいと言うことがあるので、新たな屋敷の近くには、能舞台を作るのも良いだろう。

 都から客人たちが訪れることも想定して、客人用の屋敷も何棟か建てておかないといけないな。



 領内の街道にある宿場も整備しており、各宿場には東天竺屋が経営する宿を建設した。安宿は地元の宿屋に任せ、領主や富裕な商人を対象とした宿を建てさせている。

 利用する者はまだ少なく、採算は採れていないが、何れ街道の往来が盛んになれば、利用される様になるだろう。この高級宿を建てた理由は、東天竺屋が宿場をしっかり支配するためである。

 やはり、宿場を支配するには、富裕層と関わりのある商いをした方が良いだろう。高級宿を建てれば、陣屋を建てさせる必要も無いだろうしな。

 また、領内の宿場では女郎屋や賭場も経営させている。


 木曽氏が支配する木曽路においても、宿場に東天竺屋の宿を徐々に建設させていた。こちらは、まだ普通よりやや上の宿である。将来的には高級宿に改装する予定だ。

 また、女郎屋も建設して経営しているが、賭場については木曽氏とまだ話が付いていない。賭場の利権は大きいので、木曽氏も中々頷いてくれないのだ。

 木曽路での女郎屋の利用客は、木曽氏の一族や家臣も利用しているとの報告を受けている。

 木曽氏が木曽路と宿場を整備したことで、東天竺屋の宿や女郎屋の利用者も徐々に増えているそうだ。

 木曽路の往来も増えており、それは街道を支配する当家にとっても利になることであった。


 収穫も終えたため、領民たちを雇い、街道の整備や開墾に力を入れる必要があるだろう。

 

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