馬路玄蕃の帰国と報告

 馬路玄蕃たちがオスマン帝国の外交成果を報告するため、兼山にやって来た。

 馬路玄蕃たちは、蟹江から陸路で犬山へ行き、そこから船で兼山まで来ている。


「玄蕃たちよ、オスマン帝国への使者、大儀であった」


 わしは、大仕事を成し遂げた馬路玄蕃たちを労う。馬路玄蕃たちも相当な苦労があったのか、目に涙を浮かべている。


 馬路玄蕃たちを労った後、オスマン帝国での外交成果などの報告を受けた。大体のことは書状にて報告を受けている。

 しかし、馬路玄蕃たちから直接話を聞くことで、彼等が見聞きしたことなど、より深く感じとることが出来た。


オスマン帝国皇帝スレイマン1世は、贈り物を大層喜んでくれた様である。日本の工芸品にも大いに興味を持ってくれた様で、継続的に交易をしたいとのことであった。

 また、当家がポルトガル船を襲い、ポルトガル勢力が明国や日本へ進出するのを邪魔していることを評価してくれているらしい。

 当家がオスマン帝国と宗教が違うことや日本を代表している訳で無いこと、外交関係を結んだばかりであることなどから、軍事支援は出来ないとのことであった。

 軍事支援や非公式の同盟を結ぶなら、オスマン帝国の派遣した官僚から評価を得ることや対ポルトガルで実績を出していることを見せ付けなければならない。

 しかし、スレイマン1世はわざわざ東の果ての国から、小領主の身であるにも関わらず使者を派遣したことは評価してくれている様で、外交上はアミールとして扱ってくれる様である。日本で言えば守護格として扱ってくれている様なものだ。


 また、オスマン帝国は軍事支援は出来ないものの、民生支援などの技術支援はしてくれるそうで、医師、科学者、工業技術者などを派遣してくれている。

 しかし、まだ日本での受け入れ準備が出来ていないことなどから、当面は高砂国で活動してもらうつもりだ。

 その件は、馬路玄蕃を通じて、オスマン帝国の派遣した官僚であるリュステム氏に伝えてある。

 馬路玄蕃の話では、鶏籠にオスマン帝国の屋敷とモスクを用意したそうで、活動を始めている様だ。

 土木関係の技術者は、台北の埋め立てや治水工事、石加工の技術を伝授してくれているらしい。

 建築技術者などは、煉瓦の製造を始め、煉瓦建築や石の建築物を作るつもりの様だ。高砂国は地震が多いのだが、オスマン帝国も地震はある様で、ヨーロッパより地震に強い建築物を作れるらしい。

 医師は当家が派遣している医師と技術交流をし、東洋医学にイスラム医学を取り入れ様としている。

 農業技術者は、西洋の作物の生産指導をしてくれているそうで、オスマン帝国が取り揃えてくれた苗や種などの育て方を指導してくれている様で、土木技術者とともに灌漑設備の建設を手伝ってくれている様だ。

 その他にも、様々な技術者が高砂国で技術指導をしてくれているそうで、高砂国の発展が楽しみである。

 馬路玄蕃からは、高砂国でのオスマン人の活動などや山田式部少輔の様子などを聞くとともに、山田式部少輔からの書状などを受け取った。


 報告を終えた馬路玄蕃たちは、数年の間、異国にいたということで、交代で休暇を与えるつもりだ。

 日本の人間は、殆どがオスマン帝国の存在を知らないので、無闇にオスマン帝国のことを話さないように伝えてある。

 それでも、人の口には戸を立てられないので、今回の帰国では、報告のための最小限の人間しか日本に戻していない。

 馬路玄蕃は家族たちと日本で過ごすつもりの様だ。


 馬路玄蕃と一緒に帰って来た川俣十郎は、一度実家の楠城に帰りたいと言うので、許可をした。

 今は、北伊勢が大変なことになっており、楠城が孤立しているので心配なのだろう。

 伊勢国司の北畠晴具は、今年の1月に山田三方が自身の命令に従わないことを理由に出兵した。

 そして、宇治・山田の両門前町の軍勢を宮川の戦いで討ち、両門前町を支配下に治めている。

 こうして、北畠晴具は後顧の憂いを断ち、北伊勢に進出することが出来る様になったのだ。



 馬路玄蕃からオスマン帝国の報告を受け、日本でも受け入れの準備をしなければならない。

 当面は、高砂国の発展に尽力してもらい、高砂国の国力を高めるとともに、当家の技術力を上げる必要がある様だ。

 オスマン帝国から同盟勢力に相応しいと認めてもらうため、頑張らなければならないな。

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