信長を懐妊、わしの考えた最強の名古屋城

 津島での織田弾正忠との話は、思っていたより話すこと多い。

 わしは、織田弾正忠の妹である栄子との間に、松寿丸が産まれており、叔父である織田弾正忠からも祝いの言葉と贈り物を貰っていた。その礼を述べ、返礼をしなければならなかった。


 そんな織田弾正忠も、側室との間に何人かの子を成していた。しかし、正室の子で無いため庶子にあたる。

 織田弾正忠の正室は、織田大和守信達の娘であったが、その正室との間には子は成さなかった。

 その正室にとも、織田大和守と争った際に離縁している。

 その後、織田弾正忠は土田御前を正室に迎えていた。

 土田御前の出自は様々な説があるので割愛する。それなりの身分の女性であることは間違いないだろう。

 織田弾正忠の話では、土田御前が懐妊しているらしい。そのため、女科医師を派遣してくれと頼まれた。

 当家で医師を育てていることは、織田弾正忠も知っており、彼に頼まれて、何人かを谷野一栢の弟子にしているが、女科医の弟子は頼まれていなかった。

 今回生まれてくるのが、織田信長だと思われるので、わしは女科医師の派遣を了承する。

 織田信長には無事に産まれてきて欲しいからな。



 織田弾正忠は、那古野城を手に入れたのだが、熱田の湊を押さえている熱田衆を支配下に置きたいらしい。

 津島に続き、尾張の重要な商業地である熱田を支配することで、経済的基盤を強めたいのだろう。

 そのため、鬼頭氏の領地である古渡を召し上げ、来年に古渡の地に城を築き、そこに居城を移すつもりだそうだ。


 那古野城が要らないなら、わしにくれと言ったら、「たわけたこと申すな」と怒られた。

 折角、わしの考える最強の名古屋城(徳川家康が建てさせた名古屋城)を建てようと思ったのに。

 そうぼやいたら、「どんな城か教えろ」と言うので、実際にあった名古屋城の縄張りを紙に簡単な縄張りを描かせられる。

 更に、説明させられた挙げ句、「そんな巨城建てられるか!」と怒られた。

 おい、弾正忠!こっそりと縄張りを描いた紙を懐に入れるんじゃない。

 結局、織田弾正忠に縄張りに紙を持っていかれてしまった。



 織田弾正忠と共通の問題として、本願寺勢力の願証寺の問題が上がっている。

 織田弾正忠と情報の相互共有を行ったところ、実淳と願証寺実恵の兄弟の対立は深まっている様であり、伊勢国・尾張国・美濃国の本願寺の門徒は、実淳派と願証寺派に二分され始めている様だ。

 織田弾正忠の領内にも、願証寺の末寺がある様で、本願寺門徒の動向には注意を払っている様である。

 蟹江の近郊にある輪中の市江島を支配する国人の服部氏の様子が不穏だそうだ。

 服部氏は、実淳寄りの立場を採っているらしく、長島周辺の国人領主たちの中では、自身の勢力を伸ばそうとする野心的な者たちが、実淳に味方し始めているらしい。

 今のところ、目立った問題は起こっていないが、事が起こったときは、津島や蟹江に影響が出て、伊勢湾の交易に支障が出るかもしれない。

 願証寺関連で問題が起きた時は、協働で対処しようと言う結論に至る。



 織田弾正忠とは、山科卿から持ち掛けられた後奈良天皇の即位式の費用を献金する話や、神宮から式年遷宮を行いたいので費用や木材を出してくれと言う要請があったことなどを話し合った。

 当家だけだと負担が大きいし、目を付けられると厄介だ。

 こう言うときは、尾張一の実力者である義兄の陰に隠れて行動するに限るからな。

 津島とともに南蛮との交易品を取り扱っている織田弾正忠は、史実より儲けており、気前良く出すつもりのようだ。

 その辺りも、織田弾正忠家と歩調を合わせて行動するしかないな。


 その後も織田弾正忠とは色々な話をした後、会談を終えることとなった。

 織田信長が産まれそうだと言うことで、わしとしては出来る限りの支援をしたいな。

 名古屋城の縄張り図については、織田弾正忠の奴が持っていってしまった。金も余っているから、もしかして建てるつもりなのだろうか?しかし、尾張だけでは労働力が足りないから無理だろう。

 願証寺が内輪揉めを始めているのは厄介である。注意深く見守るとともに、志摩の軍事力を拡張させるとしよう。

 まぁ、織田弾正忠家は最大の同盟相手なので、共に協力し合う必要があるだろうな。

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