木曽氏の和睦と臣従
木曽氏の使者を木曽福島へ送り返してから数日後、再び使者がやってきた。
木曽義在からの回答として、和睦の条件の木曽氏の臣従、馬籠城と妻籠城を当家が領有することについては、認めざるを得ないとのことであった。
当家から木曽氏へ木曽路奉行を派遣については、木曽氏の統治権を脅かすつもりは無いと言うのが信じ難いと言うのと、管理・運営を助言・監督と言われてもよく分からないと言うことであった。
当家としては、木曽路を交易路及び軍事道路として活用したいので、街道の拡張と整備をして欲しいのだ。
なので、江戸時代の木曽路の宿場を記した簡易地図を見せ、この通り宿場を作り、街道を拡張して整備する様に伝えた。
宿場を記した地点には、既に集落があり、宿もあるので宿場を築くことは可能である様だが、その為の銭が無いらしく、使者からは難しいと言われる。
どうせ、人も金も無いことは分かっていたので、木曽路奉行の派遣を認め、管理・運営の助言や監督を受け入れるなら、街道を拡張するための金銭的支援や人的支援をすると伝えた。
木曽義在の嫡男である木曽義康の当家への出仕については、嫡男を送るのは難しいので、木曽氏の一族のものと家臣ではどうかと提案されたので、仕方ないので受け入れる。
当家と行政機構を連携させるのに、必ずしも嫡男である木曽義康が出仕する必要は無いからな。別に人質でも無いし。
ただ、当家では祖父の近衛尚通が教養の指導をしてくれているので、高度な教養を身に付ける貴重な機会なんだけどな。
当家の近隣の国人たちの中でも、教養に関心のある者たちは、参加させてくれと頼んで来ており、国人領主やその一族が訪れていた。
明智家がその筆頭であり、明智家当主や弟たちが頻繁に通っている。
最恵待遇については、受け入れるものの、何を優遇するかについては、今後話し合いを重ねていくことで落ち着く。
木曽氏の使者は、再び木曽福島へと戻っていったのだった。
数日後、木曽氏の使者は再び現れるが、使者と共に木曽氏の一族の者が帯同していた。
木曽氏は木曽路奉行を受け入れると言うことで、このまま和睦をしたい様だ。木曽路奉行を認めたのも、木曽路の拡張と整備を支援すると言ったのが譲歩の大きな理由なのだろう。
当家も東天竺屋に木曽路を使わせたいので、早期の和睦を望んでいたのだ。越後の長尾家や甲斐の武田家と交易するのに利用しているからな。
当初の馬籠遠山攻めの予定やその後の木曽谷攻めを考えると、木曽路を約一年以上は使えなくなっていたであろうから、予定より早く木曽氏を臣従させられたのは大きな成果と言えるだろう。
木曽氏方の代表者である一族の者と和睦を交わし、三留野の包囲を解いて、撤退することとなった。
俘虜の引き渡しと出仕者については、日取りを決めて妻籠城と三留野の境にて、俘虜にしている木曽氏の一族や家臣と当家に出仕する一族と家臣を交換すると取り決める。
交換の際に、当家から木曽路奉行と帯同する文武官を派遣することになった。
三留野から撤退した我々は、妻籠城と馬籠城を得たことで、両城と東美濃の軍備を再配置する。
平井宮内卿が再配置を取り決め、わしは俘虜たちと面会することとなった。
まずは、馬籠遠山氏の当主に会い、馬籠城は当家の物になったことを伝える。
すると、馬籠遠山氏当主は当家に仕えたいと申し出てきた。
理由としては、当家で出された食事が美味く、家臣たちも豊かそうにしているので、岩村に赴くよりは生活が良さそうだからだそうだ。
先に降伏していた明照遠山氏の元当主とも話したそうで、当家に仕えた方が領主時代より良い生活が出来ると教えられたのも理由の一つらしい。
こうして、馬籠遠山氏を家臣として召し抱えることとなった。
次に、妻籠城を治めていた木曽一族の者に、木曽氏が当家に臣従し、妻籠城が当家の物になったことを伝える。
元妻籠城主も仕方ないといった態度であり、一族や家臣と共に、木曽氏へ返されることを伝えると、俘虜の間に世話になった礼を言われた。元妻籠城主も当家の食事が美味かったらしく、丁寧に扱われたと感謝している様だ。
馬籠遠山氏と言い、木曽氏と言い、身分相応の対応をしただけだが、やはり当家と生活水準が違うのだろう。
当家で重臣格なら、もっと良い生活を送っているからな。
当家と木曽氏で取り決めた日取りに、俘虜と出仕者の交換をし、木曽路奉行たちを派遣した。
木曽路奉行たちが、木曽氏の状況などを聞き取り、どの様な支援が必要か取り纏め、報告してくることになっている。
なるべく早く木曽路奉行からの報告が届いて欲しいものだ。
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