東美濃での示威行為と苅田狼藉
東美濃に支配地を得てから、我々は軍の訓練は頻繁に行っている。
要は示威行為として、当家の軍事力を東美濃に見せ付けて、舐められない様にしているのだ。
広い土地を得たので、訓練するための地積には事欠かない。
東美濃に勢力を持つ遠山氏の惣領家である岩村遠山家が何だかんだで大井城や苗木を窺っているからな。
敵対している馬籠遠山氏や木曽氏へも見せ付けねばならない。
馬籠遠山氏との暫定的な境になっている落合の湯舟沢川の近郊で訓練をさせている。
常備軍は基本的に訓練が仕事なので、数日おきに模擬戦などの訓練をさせているのだが、馬籠遠山氏や木曽氏も我々が攻めてきたと思い、訓練の度に牽制や監視の兵を出していた。
あまりに頻繁に模擬戦をやるので、彼等も慣れてしまったのか、監視に出す兵を減らしたり、出さないこともある様だ。
元流民の雑兵たちも、東美濃で訓練をすることで、心身共に常備軍に入れて問題ないと判断された者たちは、常備軍に編入されている。
兵は常備軍に入れて一人前的な扱いをされているので、常備軍に編入された元流民たちは喜んでいた。
まだ雑兵に留まっている元流民たちも、次は自分だと訓練に精を出している様だ。
当家の雑兵も二段階有り、奴隷や流民の雑兵は使い捨てにする死に兵的な扱いである。
領民になった雑兵は、常備軍の予備兵的な準正規兵的な扱いであった。
東美濃に広い地積を得て、訓練の機会が増えたことは、元流民たちに取っても良い方向に作用している様だ。
そろそろ、東美濃でも収穫の時期が近づいている。
湯舟沢川の対岸にある馬籠遠山氏側の田畑も、稲穂が実っていた。
このまま、馬籠遠山氏に収穫させてしまうのも癪なので、雑兵や新兵の訓練を兼ねて、馬籠遠山氏側の田畑を苅田狼藉して、作物を奪ってしまおうと思い付く。
平井宮内卿に相談したところ、苅田狼藉すれば戦になるので、いっそのこと、馬籠遠山氏を誘き出して、馬籠城を落としてしまおうと言うことになった。
当家が頻繁に訓練をしているのに慣れてしまい、油断しているので、丁度良いそうだ。
東美濃には、まだ大規模な兵力を集中させているので、兵力も足りている。
木曽谷一帯にも忍衆を忍ばせているので、地理などの情報は得ていた。
油断して警戒も疎かになっている様なので、忍衆の案内で主力を迂回させて、馬籠城の近くへ潜入させる様だ。
囮の部隊が苅田狼藉しているのを攻撃する兵が出て、守備が手薄になったところを攻め落とすと言う作戦である。
馬籠城を落とす主力は、大島甚六が率い、松永甚助や客将の長野信濃守などが従軍する。
苅田狼藉を行う囮の部隊を含めた迎撃の部隊は、わしと平井宮内卿が指揮をすることとなった。
わしと平井宮内卿は、常備軍に迎撃の態勢を取らせ、囮の雑兵たちに収穫をさせる。
迎撃の常備軍の人数だけでも、馬籠遠山氏の兵力より多いのだが、本当に攻めてくるのだろうか?
雑兵たちが順調に収穫していると、馬籠城方向から馬籠遠山氏の兵と思われる者たちが向かってきた。
我々が想定したより、敵方の兵の数が多い。しかし、常備軍に迎撃の準備をさせており、雑兵たちにも敵方が攻めてきたら、収穫を止めて迎撃の態勢をとる様に予め伝えている。
雑兵たちは、常備軍に比べれば動きは緩慢だが、連日の訓練の成果か、通常の雑兵よりは遥かに動きは良かった。
馬籠遠山氏の兵を迎撃するが、我々は敵を引き付けておかなければならない。
敵方は、自分たちが互角に戦えていると勘違いして、積極的に攻めてくるが、雑兵たちの態勢が整うと、敵方を包囲する形になってしまった。
当方は数が多いので、なるべく怪我をさせない様に入れ替わりで戦わせていたのだが、次第に敵方も疲れてきたのか、動きが緩慢になっている。
最終的には、長槍で負傷させるなどして、降伏勧告したところ、敵方は降伏すると言う、何とも締まらない形になってしまった。
常備兵たちが降伏した敵兵を拘束し終え、わしと平井宮内卿が馬籠城の方向に目を向けると、馬籠城の落城を報せる狼煙が上がっている。
しかし、何故か狼煙が二本上がっているのだが、何かあったのだろうか?
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