第一夫人の三子誕生と兼山への一時帰還

 阿寺城で馬籠遠山氏と木曽氏の援軍と対峙している最中に、兼山から第一夫人の栄子が出産したとの報せが届いた。

 産まれたのは男の子だそうだ。男子の実子は多幸丸だけだったので、男子が産まれたのは良かったと言えるな。

 産まれた子には「松寿丸」と名付け、兼山へと送る。

 馬籠遠山氏や木曽氏の援軍との対峙を終え、木曽川を使って兼山に戻った際に、栄子を労い、産まれてきた我が子の顔を観ることが出来た。

 栄子も松寿丸も健康状態は問題ない様だ。当家には医師が多いので本当に助かっているな。

 松寿丸の乳母は、いつも通り実家を通じて公家出身の者を派遣してもらっている。

 栄子との娘の千代も元気に育っており、嫡男の多幸丸は傅役の唐橋昭孝から順調に教えを受けていた。


 越後守護代の長尾家から養子にやってきた虎千代も、大分慣れてきた様で、養母となっている御南に懐いている様だ。

 やはり、薩摩隼人たちに囲まれていたから、やんちゃ小僧の扱いにも慣れているのだろうか?

 虎千代の傅役を大森菅助に任せたいと、平井宮内卿と大森菅助と話し合ったところ、大森菅助から一度実家に帰って、実家の様子を確認してから決めたいと言われてしまった。

 東美濃には、わしと平井宮内卿がいるので、大森菅助には一時的に実家へ帰ってもらっている。

 御南も懐妊しているため、体調に気を遣っている様で、虎千代の前では言わなかったが、次の子は男子が欲しいそうだ。

 御南との娘の御鶴も元気に育っている様で、安心している。



 尾張の蹴鞠会に参加していた祖父の近衛尚通も帰ってきており、尾張での蹴鞠会の様子を聞くこととなった。

 連日、蹴鞠会を開いていたところ、大層評判が良かったらしく、清洲城にいる尾張守護の斯波義統殿から所望されたそうで、蹴鞠会の場所を清洲に移して、引き続き催したそうだ。

 祖父も清洲まで赴いたそうで、守護の斯波義統殿と面識を得たが、前守護の斯波義敦殿は織田大和守を嫌ってか、清洲には赴かなかったらしい。

 有能な前守護と守護代大和守家との確執も、尾張が抱える問題の一つの様な気がする。前守護は織田弾正忠を評価している様だしな。

 この蹴鞠会で、飛鳥井雅綱卿は多くの門弟を得た様だ。

 織田弾正忠も、その勢威を尾張中に見せつけることとなり、尾張一の実力者であることを誇示していた。

 現在の状況では、尾張は織田弾正忠一強の状態だが、どうなることやら。



 短い時間だが、家族たちと過ごし、わしは苗木へと戻った。

 苗木に戻り、わしは平井宮内卿と今後のことについて話し合う。

 兼山で黒田下野守とも話し合ったのだが、来年に馬籠遠山氏から馬籠を奪いたいと考えていた。

 今回の軍勢は、常備軍、養父から預かった兵、客将たちを除けば、流民や奴隷の寄せ集めである。

 更なる訓練を施して、より戦えるようにする様に指示をした。

 東美濃に広い土地を得たので、訓練の場所には困らなそうなので、美濃での訓練は東美濃を中心に行うことになるだろう。

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