御南の出産と九條稙通の帰洛
夏を迎えると、今度は妊娠していた第二夫人の御南が産気付き、屋敷の中が慌ただしくなった。
屋敷の者たちは慌てて、谷野一栢や女科医たちを呼びに行く。
谷野一栢と女科医の女弟子たちが、屋敷を訪れると、すぐさま出産の準備を始めた。
産婆は女科医の助手を務めるとともに、若い女子も側に付いていた。産婆の弟子の様な者で、女科医の助手として修行しているそうだ。
今年に入って二回目とは言え、妻の出産となると落ち着かない。
ましてや、御南は初産であるから、大事があってはいけないと、仕事も手に付かなかった。
仕方ないので、愛猫を抱きながら、ウロウロして心を落ち着かせようと努力する。
年の始めに出産を終えた第一夫人の栄子からは、落ち着くように諭されるが、そう簡単に落ち着ける訳も無い。
栄子は二度の出産を無事に終えたことで、女科医たちを信頼している様だ。
確かに、当家の女科医たちは優れており、他家や他領より出産の成功率は高い。
栄子も産後の肥立ちに問題は無く、千代もすくすくと成長していた。
妻も子も無事で、子が成長する様子を観ていると、大いに癒される。
そのまま、千代の様子を眺めていると、赤子の泣き声が聞こえた。
わしは慌てて、御南の元へ向かうと、御産の部屋の隣室で待機していた谷野一栢が、祝いの言葉を述べてくれた。
しばらくその部屋で待っていると、御産の部屋から女科医が出て来て、御南の産んだ子は娘だと教えてくれる。母子共に異状は無いそうだ。
栄子に続き、御南も娘を産んだのだが、嫡男の多幸丸がいるので、皆が落胆することが無いと良いなと思ってしまう。
その後、女科医の案内で御南の元へ行き、労いの言葉を掛ける。
御南は娘を産んだことで気落ちしており、謝られたが、次に男子を産めば良いのだから気にするなと言ったら、ホッとしていた。
御南の出産が終わり、女科医たちに妻の産後の肥立ちに気を付ける様に伝え、執務室へと戻る。
栄子の時もそうだが、子供が産まれてしまえば、案外落ち着くものである。
この後、家臣たちが祝いにやってくるのだから、それに備えなければならない。
わしが、執務室で政務を執っていると、案の定、家宰の黒田下野守以下、重臣や側近たちが訪れ、祝いの言葉を述べてくれた。
客人の九條稙通卿も駆け付けてくれた様で、祝いの言葉を頂く。
わしは、御南が産んだ娘の名前を「鶴」と名付けた。
今回も実家の近衛家に公家出身の乳母を頼んでおり、鶴の面倒を看てもらっていた。
御南の産後の肥立ちも問題無く、鶴も健やかに育っている。
そろそろ、栄子と夫婦の営みを再開しても良いかもしれない。
一応、薩摩や各地から見目麗しい奴隷を集めさせ、その中で好みの娘は妾として手を付けているが、子作りと言うよりは、性欲処理であった。
わしは、見目麗しい奴隷を男女ともに集め、劇を練習させている。
わしは、猿楽や能はよく分からないので、自分好みの劇をさせることにしたのだ。
女優の愛人とか憧れるだろ?
九條稙通卿が、来年に関白が譲られると都から知らせがあったそうで、関白就任の準備のため、帰洛することとなった。
まぁ、九條卿の関白就任のための費用は、当家が出すんですけどね。
九條卿は織田弾正忠とも面識があるので、弾正忠からも金を出させるけど。
織田弾正忠家はとんでもない金持ちだから、ポンと気前良く出してくれるだろう。
九條卿が飼っていたオコジョたちも、都では飼えないだろうと言うことで、当家で飼うことになった。
猟師に子供を捕まえさせたり、繁殖したりして、結構な数になっている。
オコジョで白貂の毛皮のコートを作りたいものだ。
九條卿のオコジョを毛皮にしたら、物凄く怒りそうだけど。
九條卿は、当家での豊かな食生活に、すっかり慣れてしまったので、料理人を連れていきたいとか言い始めているので、九條家の料理人の面子を潰す訳にはいかないと言って、食材を定期的に送ることで、納得させた。
九條卿の護衛と実家への使者を兼ねて、黒田下野守と常備兵たちが伴わせ、都への土産を持たせる。
九條卿は「また戻ってくる」と不吉な言葉を残し、帰洛していった。
九條卿がいなくなったので、当家の屋敷も改築か、新たに建てようかと考えている。
建てた当初に比べ、妻も増え、子も順調に増えているので、手狭になってきているのだ。
今後、子が更に増えることを見越して、規模の大きな屋敷を構えても良いかもしれないな。
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