山科本願寺の戦い
享禄5年7月29日、十二代将軍である足利義晴は、戦乱などを理由に改元を申請し、朝廷もこれを受け入れ、天文と改元した。
法華一揆衆は、8月7日に京で柳本賢治の家臣であった山村正次が率いて軍事行動を開始し、10日までの間に東山、山科周辺を打廻りをする。
12日、細川・六角連合軍は、顕証寺蓮淳のいた大津の顕証寺を攻め落とし、顕証寺蓮淳の首級を挙げたと喧伝した。
大津の顕証寺が攻め落とされた際、本願寺の法主である証如は、大叔父・実従とともに山科本願寺へと逃れている。
15日、法華一揆衆は、清水寺周辺の東山に布陣し、16・17日に東山山麓で法華一揆衆一万と一向一揆衆数千が激突し、法華一揆衆が勝利した。
19日には、摂津一向一揆衆二千が山崎に布陣するも、法華一揆衆が出軍し、西岡周辺で激戦が行われた結果、法華一揆衆が勝利する。
こうして、京と山城国西岡一帯を押さえた法華一揆衆は、山科本願寺への総攻撃の準備を整え、山科へと出陣したのだった。
同月23日、細川・六角・法華一揆連合軍は、山科本願寺へ布陣し取り囲む。
主力の法華一揆衆は、山科本願寺の東側の粟田口に布陣し、山村正次率いる柳本勢は、山科本願寺の南側の汁谷口に布陣する。
六角定頼の軍勢は、山科本願寺の西側の大津への東口に布陣し、
残りの土民一揆勢は、山科本願寺の北側の東岩倉山に布陣した。
山科本願寺を取り囲む細川・六角・法華一揆連合軍は総勢約三万の大軍と言われている。
こうして、細川・六角・法華一揆連合軍は、山科本願寺の四方を取り込むようにして、完全に包囲したのであった。
同月24日早朝、山科本願寺の戦いは開始される。
山科本願寺の「水落」と呼ばれる場所から攻め手の軍勢が侵入し、山科本願寺内の家屋に火を点けた。
午前10時頃には、諸口からも各々の軍勢が乱入し、山科本願寺の寺町周辺を放火して回ったことで、勝敗の大勢が決する。
攻め手の軍勢が乱入してから短時間で、御坊堂等が炎上したらしい。
細川・六角・法華一揆連合軍は、攻め手の時間稼ぎに和睦を申し込んでいた最中で、山科本願寺は油断していたところ、隙を突かれて、短時間で落とされた様だ。
こうして、山科本願寺は社坊一つ残すことなく、灰燼に帰したのであった。
蓮如の末子である、法主の大叔父である実従は、親鸞聖人御影や寺宝を持ち、本願寺証如を山科本願寺から連れ出して、大坂御坊へ逃亡せんとしていた。
実従は、細川・六角・法華一揆連合軍の大軍に捕捉されないため、信頼出来る者たちだけを護衛に付け、大坂御坊へ向かう。
しかし、本願寺証如は頼りにしていた外祖父の顕証寺蓮淳が討ち取られたと聞き、山科本願寺で籠城していた時から、すっかり気落ちしている。
そのため、本願寺証如は、敵から逃げるにも、その足取りは重かった。
そんな本願寺証如の足が止まる。実従は、本願寺証如を励ますべく、証如の方を向くと、証如の喉には一本の矢が刺さっていた。
更に、胸に一本の矢が刺さる。実従は慌てて、本願寺証如を抱き抱えた。
すると、実従の脇腹に衝撃が加わる。実従の脇腹にも一本の矢が刺さっている。
痛みに堪えながら、矢が射かけられた方向を向くと、顔に衝撃を受ける。
実従の右目には矢が刺さっており、実従もまた意識を手放すこととなった。
本願寺証如と実従の護衛たちは、証如と実従が弓で射られたことに騒ぎ、その身体を持ち運ばんとするが、四方から弓矢を射かけられ、それも叶わない。
すると、細川・六角・法華一揆連合軍の者たちが、その騒ぎを聞きつけ、迫ってきていた。
護衛の者たちは逃げることも叶わず、討ち取られた、本願寺証如、実従、寺宝は細川・六角・法華一揆連合軍に手に渡ることとなったそうだ。
細川・六角・法華一揆連合軍は、本願寺証如と実従の首級を挙げ、親鸞聖人御影や寺宝は辱しめられることとなったらしい。
本願寺証如と顕証寺蓮淳と言った本願寺の指導者を討ち取ったことで、細川・六角・法華一揆連合軍は士気を上げ、大坂御坊へ向けて進軍したそうだ。
密命を成し遂げた鵜飼孫六と大島甚六が、細川・六角・法華一揆連合軍の大坂御坊進軍までの経過を報告してくれた。
本願寺は本願寺証如の死により、法主を失い、本願寺正統は絶たれた。
実質的指導者であった顕証寺蓮淳も討ち取られたことで、本願寺勢力は大いに混乱することだろう。
これからの本願寺勢力の動向には注意しなければならないだろうな。
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