南蛮交易品の流通や国内の交易について

 薩摩から伊作家の島津御南を第二夫人に迎え、半年の訓練を終えた山田式部少輔たち元薩摩武士を高砂国派遣軍として、高砂国へ送り出した。



 山田式部少輔たちを送り出した後、わしは鳥羽に来ている。

 事前に織田弾正忠と大橋清兵衛殿と日取りを決めて待ち合わせていた。

 今回、南蛮交易で手に入れた交易品は、現地で買い付けてきただけあり、琉球で購入するより安価であったため、いつもより大量に買い付けてきている。

 そんなに大量の交易品を一辺に蟹江の倉庫に入れる訳にはいかないので、いつもの量は蟹江に運んでいるが、それ以外の多くは鳥羽の倉庫に保管していた。


 織田弾正忠と大橋殿を倉庫に案内し、南蛮の交易品を見せると、あまりの量に驚いていた。

 いつも琉球で取引していない香辛料や生薬もあり、大橋殿は目を輝かせている。


 「庄五郎の船は、南蛮に行ってきたのか?」


 弾正忠は羨ましそうに、かつ恨めしげな目で、わしを見てくる。

 南蛮との交易に絡ませろと言っていたが、当家が買い付けてきた商品を融通しているではないか。

 弾正忠家から南蛮まで人を遣るのは難しいと思うぞ。

 二人と話をしていると、大橋殿も自分のところの商人を南蛮に連れていってもらいたいと言うが、南蛮について話せることを話すと、表情を曇らせていた。

 当家は自前の船や乗員で、高砂国からアチェまで行けるが、大橋殿は津島で有力な商人とは言え、堺や博多の商人に比べると身代は小さく、船や乗員を用意出来ないだろう。

 当家の船に乗せても良いが、琉球で手に入る交易品以外の目立つ南蛮の品々を買い込みすぎると、只でさえ余所の商人たちに目を付けられているのに、要らぬ妬みを買うのではと言うと、諦めていた。

 そりゃ、商人だから珍しい品や売れる品を見たら買わない訳にはいかないだろう。

 珍しい品々を買い付けるのは、弾正忠の勢力がもっと大きくなってからにしてもらいたい。

 なので、南蛮へは当家が買い付けにいき、津島は今まで通り畿内や伊勢湾で交易品を流通させることや利益の配分について改めて確認し合った。

 わしは、甲斐の武田家や越後の長尾家と交易するつもりであることを一応伝えておく。


 後は、ポルトガルやカトリックの脅威について話をしておくと、二人とも顔色が青ざめる。

 ポルトガルがマラッカを侵略したことや、最大の目的は明国を侵略することであり、失敗すると交易をしつつ、宗教を使って侵略をしようとしている話などに驚いていた。

 織田弾正忠も大橋殿も大切な家臣や使用人をそんなところに派遣出来ないと思ってくれた様だ。

 宗教だと、間近に一向衆がいるから、他人事では無い。


 と言う訳で、津島や蟹江で流通させる南蛮交易品は、少しずつ鳥羽から運び出し、南蛮で売れそうな物を津島でも調達してくれることで、話は落ち着いたのだった。



 その後、わしは馬路宮内を甲斐の武田家や越後の長尾家に派遣し、以前から書状のやり取りはしていたが、正式に交易をしたい旨を伝える。

 琉球から持ち込んだ明の交易品や南蛮の交易品には食指が動かされる様で、両家とも合意してくれた。

 甲斐の武田家からは金と水晶を手に入れ、越後の長尾家からは佐渡の金銀や翡翠を手に入れるつもりだ。


 南蛮の交易品に余裕がある様なら、北條にも少し流そうかな。

 当家も内政でやりたいことは多いが、領民が少ないため、汚れ仕事や重労働は買い付けた奴隷にやらせている。

 畿内も戦が多いし、美濃近郊でも奴隷は手に入るが、関東で安く手に入るなら検討しても良さそうだ。


 取り敢えず、南蛮交易を継続し、交易品で金銀を手に入れることにしよう。

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