日本初の火縄銃御披露目

 鳥羽城にて、馬路玄蕃たちの報告を受け、宴を終えた翌日に、わしは前日参加した家臣たちとともに、志摩の無人島へと向かった。

 志摩の無人島にて、日本初の火縄銃御披露目会をするのだ。

 これは、馬路玄蕃たちが持ち帰ってきた火縄銃の射撃を観てもらい、重臣たちに火縄銃について知ってもらうために行う。

 都から取り寄せた鳥銃を預けて、試作を依頼している坂倉正利にも来てもらっている。

 今回入手した火縄銃は二丁で、一丁はオスマン帝国製の軍用銃、もう一丁はポルトガル製の狩猟用銃だ。

 まずは、火縄銃についての説明と明の鳥銃との違いについて説明する。

 銃身の底を塞ぐ尾栓ネジについて説明すると、坂倉正利は自分が作らされていたタップやダイスに思い至り、鳥銃と合わせて作らされていた意味が分かった様だ。


 説明が終わった後は、射撃を観てもらう。

 本日、火縄銃を射撃するのは、川俣十郎と神代勝利の両名である。

 馬路玄蕃が火縄銃を買う際に、射撃方法を習い、試射をしたらしい。

 火縄銃の威力と有効性を見抜いた川俣十郎は、火縄銃を気に入った様だ。

 今回用意した的は、木の板で作った的と廃棄予定の鎧である。

 まずは、川俣十郎がオスマン帝国製の軍用銃を使い、木の板を撃つ。

 火縄銃の射撃音が鳴り響き、重臣たちは初めて聞く音に驚いていた。

 わしは、重臣たちを落ち着かせ、的に注目させると、的には穴が空いており、川俣十郎は見事に当てることが出来た。

 続いて、神代勝利がポルトガル製の狩猟用銃で射撃するが、こちらも的に当てる。

 重臣たちも、近くの者と火縄銃について語り始める。

 続いて、廃棄予定の鎧を射撃させたが、両名とも命中させた。

 鎧を貫通させた威力は、重臣たちを驚かせた様だ。


 射撃を終え、重臣たちと火縄銃について意見を交わす。

 実際に撃った川俣十郎や神代勝利たちの話を聞きつつ、肯定的な意見や否定的意見など様々な意見が出る。


肯定的な意見

・射撃の音によって、敵を驚かせることが出来る。

・鎧を貫通させる威力がある。

などなど


否定的な意見

・音が五月蝿いので、撃った後に居場所がバレる。

・次の弾を籠めるのに時間がかかりすぎる。

・射撃後の煙で視界が不良になる。

・命中精度に問題がある。

・雨天の場合、射撃が出来ない。

・玉薬が高価である。

・直線上にしか撃てない。

などなど


 重臣からは否定的な意見が多かったが、特に弓の名手である大島甚六は否定的であった。

 反対に、楠木十郎や神代勝利などは火縄銃の威力や射程を評価し、数が増えれば、弓より効果的だと言う意見だ。

 軍務総管の平井宮内卿も数が揃った場合の有効性を支持し、楠木十郎たちが短期間で射撃出来るになったことから、練習すれば誰でも射撃出来ることを言及する。

 弓の射手を訓練する期間を考えると、短期間で訓練を済ませられ、ある程度の攻撃能力を有することが出来ると評価した。

 平井宮内卿は、運用の前提として数を揃えなければならないことと、数さえ揃えれば戦の形が変わると言う意見である。


 わしが言いたいことは、平井宮内卿に殆ど言われてしまったが、練習すれば誰でも射撃可能で、攻撃能力に差が無い均一の攻撃力を有する兵を、短期間で訓練することが可能であり、数を揃えて運用すれば強大な戦力となり、今後の戦の形を変える武器であると結論付けた。

 大島甚六への援護として、大島甚六ほどの弓の名手などそうそうおらず、練習期間もかかるし、弓手の才能で差があるだろと言うと、大島甚六は弓の名手と言われたことに喜びつつ納得した。


 その後も、装填に時間がかかることや、雨天に撃てない場合など射撃時の問題について話し合われ、使う側が工夫して対処する必要があることで一致した。

 唐土では以前より火器があったが、本格的に運用されないのには、手入れが困難なためである。

 鳥銃にも該当するが、銃身の底が塞がっているため、火薬の滓など手入れしづらいのだ。

 ヨーロッパ人たちは、ネジの技術で尾栓を付けたことで、手入れを容易にしたことを告げると、重臣たちも納得していた。


 ヨーロッパでは、火縄銃が主流の兵器となりつつあることを告げ、当家でも更に保有する必要があるが、日本ではまだ広めてはいけないことを告げると、重臣たちも同意見の様だ。

 あまりにも強力な兵器であるため、目敏い者には目を付けられ、各種勢力から圧力を掛けられるだろう。

 土岐の陪々臣程度の国人領主に過ぎない、わしには堪えられるものでは無いだろう。

 しかし、重臣たちに何故見せたかと言うと、高砂国に進出することと、ポルトガル人たちの危険性を知ってもらうためである。

 ポルトガル人たちが現れる可能性のある高砂国では、火縄銃について知っておかなければならないし、配備する必要性がある。

 また、日本に火縄銃を普及させないためにも、ポルトガル人たちの船を攻撃しなければならないのだ。

 この意見については、重臣たちも同意し、高砂国奉行として派遣される山田式部少輔は、真剣な面持ちで火縄銃を眺めていた。

 御披露目会に参加した家臣たちに、火縄銃については、機密事項として扱うことを伝える。

 当分の間、もし火縄銃を射撃をする際は、志摩の無人島でやる必要があることで合意した。


 重臣たちと話し合いを終えた後、重臣たちにも射撃を体験させ、火縄銃について知ってもらう。

 その後、火縄銃を坂倉正利に預け、試作する様に依頼する。

 試作して、使える物が出来上がったら、高砂国へ送り、配備させる予定だ。

 将来的には、高砂国で生産出来る様になれば良いが、まだ高砂国の一部を拠点にしただけなので、まだまだ時間がかかるだろうな。

 取り敢えず、火縄銃生産の糸口を得たことで良しとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る