倭寇狩り再開と内政諸々

 野分の季節が終わり、志摩海軍の倭寇狩り部隊は、再び琉球へと向かい、出航していった。


 馬路正頼には、アチェへの交易の許可を出すとともに、行った際に買ってきて欲しい物について書状に書いておいた。欲しい物が多いことと、名前が伝わらない場合に備えて、その説明書きを書いたため、かなり分厚くなってしまったが。


 新たに奪う船に乗せる乗員要員として、志摩海軍の中で、商売に興味ある者などを選出して送っている。

 将来的に東天竺屋へ異動させ、武装商船の乗員にするつもりだ。


 今回から、倭寇狩りに雑賀の湊衆が参加しなくなったので、ポルトガル船の襲撃も許可している。

 ポルトガル船については、無差別に襲撃するとともに、注意事項などを伝えておいた。

 出来ることなら、台湾島に拠点を作り、ポルトガル船はそこに留めておかせるつもりだ。

 琉球に持ち帰ったことで、雑賀の湊衆に観られて、興味を持たれると不味いからな。

 楠木十郎たちには、簡易な台湾の地図を渡し、可能なら先島諸島に近い蘇澳鎮に拠点を築く様に伝えた。

 楠木十郎たちは、台湾の地図を観て、訝しんでいたので、明の書物から引用したと誤魔化しておいた。


 また、大林菅助と忍衆には、九州へ向かうため、この船団に薩摩まで同行させている。

 西国での情報収集や人材探しを頑張ってもらいたい。

 種無しの蜜柑については、島津に頼んであるが、この時代では不吉だと言われているので、農民たちはあることを素直に話さないかもしれない。なので、忍衆たちでも探してみる様に頼んだ。


 斯くして、海兵たちは再び、倭寇狩りに旅立ったのである。



 領内では、収穫を迎え、塩水選別を試した田は、塩水選別を行っていない田に比べて、収穫量が増していた。

 選別の際に、塩をかなり使うが、志摩で塩が取れているので、大分安上がりに実施出来ている。

 領民たちも収穫量が増えたことを実感したのか、次の田植えの際は、塩水選別をしたいと行っていた。



 美濃坂倉では、坂倉正利に取り仕切らせて作らせた大工工具や土工具が少しずつ出来上がっている。

 大工工具や土工具は、真似しようと思えば真似されてしまうので、当面の間は国内では島など限られた場所で使わせるつもりだ。

 答志島の海軍基地や造船所建設のために、優先的に送っている。

 造船所も、実物のジャンク船を観たため、規模を大幅に修正している。

 国内でのジャンク船建造のために、見本として余剰のジャンク船が送られるまでには、造船所が出来ていて欲しいものだ。


 倭寇狩り、収穫、工具など内政の段階も新たな段階に入っていると言えるだろう。

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