島津日新斎の決断
◇島津日新斎
我が義父である島津運久が伊作城にやってきた。
わしは、貴久と重臣を集め、義父の話を聞くこととした。
義父の話を聞くと、豊州家の島津忠朝、北郷忠相、新納忠勝、禰寝清年、肝付兼演、本田薫親、樺山善久、島津秀久、阿多忠雄たちとともに、勝久様の元へ我々と和解するよう進言しに行ったそうだが、勝久様からは拒否をされたそうだ。
集まった諸将たちも憤慨していたそうで、勝久様か我々のどちらに付くか悩んでいるとのことである。
「これは、長期戦になりそうだな・・・」
思わず呟いてしまったが、貴久を始め重臣たちも同じ意見なのか頷いている。
「長期戦には米や食料が必要だ。
勝久様方も食料が潤沢ではあるまい」
「食料が必要となると、先日訪れた西村殿の船が運んでくださりました。
琉球との交易で坊津に訪れるでしょうから、彼等に頼めば良いのでは?」
貴久が西村殿に頼めば良いのではないかと言っている。
「西村殿に頼めば手に入るやもしれぬな。しかし、借りが大きくなりすぎる。
関白様の紹介状が当家に来たことを、我等に与する地頭たちに話すことで、我等の正統性を主張し、結束を固めるのに利用しておる。
これからは、勝久様方の地頭や日和見している地頭たちを揺さぶるのにも活用出来よう。
その上、食料を持ってきてくれなどと頼めば、どれだけ借りを作ることになろうか」
西村殿への借りが大きくなることを考えると、簡単には頼めまい。
見返りに渡せるものなどあるだろうか?
「日新斎よ。背に腹は代えられまい。
敵方や日和見を決め込む地頭たちにも、食料をちらつかせれば、こちらに付く者もおるやもしれぬのだ。いくらあっても足らぬということはあるまい。
島津宗家の内紛を早く収めるにも食料は必要だ」
わしが悩んでいると、義父が内紛を早く収めるために食料が必要だと言う。
確かに、義父の言う通りだ。島津は宗家の内紛で疲弊している。
この機に乗じて、伊東は南下しておるしな。
口減らしをしながら戦うことも可能だが、時間がかかりすぎる。
内紛を収めた頃には、更に疲弊していることだろう。
ここは、西村殿に頼み、食料を持ってきてもらうか。
「同盟しかないか・・・」
「同盟にございますか?」
貴久が、わしの漏らした言葉に反応する。
「安定して食料を手に入れるには、同盟を結んだほうが良かろう。
それに同盟を結べば、こちらにも、あちらにも利がある。
我等は西村殿を介して関白様に働きかけをすることが出来るしな。
調略など行う際にも、関白様との繋がりがあるのは影響するだろう。
西村殿にとってみれば、安全かつ安定的に琉球と交易するには、我々の協力があった方が都合が良かろう。
同盟を結べば、交易の便宜も図ってやれるからな」
わしが同盟の利について話すと、一同はそれなりに納得してくれたようだ。
西村殿の使者がまた参ったなら、同盟の話をすることとしよう。
切り札に御南を切ることも考えてみるか・・・。
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